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忙しいのでちょっと短め・・・・

昼食の準備をしているとエレベーターが稼働する音が聞こえてきた。

流が帰ってきたようだ。

汚れていた手を洗い、出迎える準備をしようとする。



「唯っ!!!」



勢いよく開いたリビングのドアから流が飛び込んでくる。

あまりの勢いに気圧されて動けないでいると、流はそのまま突進するような勢いで近づいてきた。



「何があった!?」



痛いくらいに肩を掴まれ至近距離で問われる。

いつもおしゃれに跳ねさせている髪は乱れ、息は荒く頬は紅潮している。

どれだけ慌てて帰ってきてくれたのかがわかって、なんだか胸がむず痒いような苦しいような感覚になる。



「あらまあ、坊っちゃん。

なんですか、そんな外出着のまま行儀の悪い。

そんなに勢い込んでは唯さんも話そうにも話せませんよ。

コートくらいお脱ぎなさいませ。」



紫乃様の言葉に我に返った流は手を離して私から一歩離れた。



「・・・・・・・・その格好はどうした?」



離れたことで私の姿をしっかり見ることができるようになった流は顔を顰める。

私が着ているのは着た時と同じよれよれの燕尾服だ。

何かあったのだろうと察して優しい紫乃様は何も聞かないでくれたが、やはり誰がみても気になるのだろう。



「ちょっといろいろありまして・・・・。」



流の真剣な目に思わず視線を逸らしてしまう。

そのいろいろを話しに来たのだが、さすがに紫乃様がいるところで高良田のお家事情を話すのは憚られる。



「坊っちゃん、女性にそんな顔をしてはいけません。

お食事ができております。

お話は食事をしながらゆっくりお聞きなさいませ。

若いおふたりを邪魔するのも申し訳ないので、私は本日はこれで失礼します。

かわりに明日、まいります。

なにか変更がありましたら、ご連絡ください。」



うふふっと笑って頭を下げる紫乃様に私も頭を下げ返す。



「お仕事の邪魔をして申し訳ありません。」


「いえいえ、また唯さんに会えて嬉しかったわ。

坊っちゃん、唯さんに迷惑をかけてはいけませんよ。」


「・・・・・・・・迷惑をかけるのは俺なのか。」


「ふふふふ。

今の坊ちゃんは子供の時のような顔をされていますよ。

久々にそのような顔が見られてばあやはとても嬉しゅうございますが、子供のように必死で周りが見えなくなりませんようお気をつけくださいませ。」



渋い顔をする流に、私までくすりと笑ってしまう。

それを見てさらに渋い顔になる流に、ますます笑いが堪えられなくなってくる。


渋い顔と笑いを堪えた顔。

対照的な顔で紫乃様を送り出してから、流と向き合う。



「・・・・・・・・そんなにおかしいか?」


「申し訳ありません。あの流様でも紫乃様には敵わないんだと思ったら・・・・。」



今のぶすくれた顔は本当に子供のようだ。

紫乃様にとって流が孫のように可愛いのと同じように、流にとっても紫乃様は家族のような存在なのだろう。



「紫乃のことはもういい。

それよりもお前は俺に話があるのだろう?」


「はい。お忙しいところをわざわざお戻りいただき申し訳ありません。

コートをお預かりします。

昼食の準備が出来ておりますので、話は食事をしながらさせていただきます。」



紫乃様に言われたことを繰り返すと、ますますぶすくれた流が憮然とコートを差し出す。

そのことでますます笑いを深めた私は、預かったコートで笑いを隠しながらコートを片付けに行った。

先日、拍手御礼話を交換しています。

相変わらず根暗な一弥さんですが、よろしければお楽しみください。

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