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隼人をはじめとしたお客様の見送りをして会場の片付けの指示を出す。

華穂様と裕一郎様もお疲れだろうから入浴の準備をして・・・・。



「唯ちゃん。」


「あら、隼人様達と一緒に帰らなかったの?」



振り返ると一弥が壁際に立っていた。

そういえば見送った客の中にいなかったな。



「ひどいねぇ。

せっかく唯ちゃんの要望に応えようと思って手が空くの待ってたのに。」


「・・・・・・・・こっちきて。」



人に聞かれてはまずいので、空き部屋に連れて行く。

お茶も準備せずにすぐに本題に入る。



「秀介様と話してみてどんな人物だと感じた?

率直な印象を聞かせて欲しいの。」


「胡散臭い。」



ずいぶんばっさり言ったな。

そういえば一弥は最初から秀介に対して攻撃的だった。



「なんとなぁく俺とおんなじ匂いがするんだよねぇ。

本心が顔に出ないさらりと嘘がつけるタイプ。

隼人とは正反対の人間だね。」



・・・・・・・・やはり私が感じた印象と大体同じか。



「あの先生がどうしたの?」


「私の勘違いかもしれないけど、もしかしたら秀介様は華穂様のことを好きなんじゃないかと思って。」


「あー、それはまずいねぇ。

俺が見た印象が正しけりゃ、このタイプは目的のためなら手段を選ばない。

俺がそうだしねぇ。」



そうですね。そのせいで私は大変な目にあいました。



「もし一弥が秀介様になったとしたらこの後どう出る?」


「そうだねぇ・・・・。

華穂ちゃんにバレないようにこっそりふたりが別れる工作をするかなぁ。

ちょーっと自分と華穂ちゃんの仲を匂わせて誤解させたりすれ違わせたり?

それで上手くいかないなら、空太くんの方に圧力かなぁ。

空太くん、一般人でしょ?

三条ほどの力があればいくらでもやりようはある。

で、唯ちゃんは空太くんを守るために俺たちに引き合わせてんの?」



お見通しか。



「まあね。そんなに露骨だった?」


「いいや?

露骨じゃないけど唯ちゃんらしくないなーと思って。

普段の唯ちゃんだったらわざわざ隼人の心情考えてに振られた女の恋人を会わせたりしないでしょ。

隼人から自分が負けた相手に会いたいなんて積極的な言葉が出てくるとも思えないし。

それに会場がここっていうのもねぇ。

普通ならこういうのやんのはホテルでしょ。

ホテルならどんなに酔いつぶれても寝ていけるし、そのための部屋を取っておくのなんて高良田にとっては痛くも痒くも無いんだろうし。

この会場への送り迎えに一人一人にハイヤー手配するくらいなんだから、そういう気配りが思いつかないとも思えない。

大勢の人間を入れることへの邸のセキュリティの心配もあるし。

そんな不都合を全て含めてもここを会場にしたのは全部、俺や隼人、あと会場内にいた有力者に空太くんの顔を売っておくためだよねぇ。」


「歌手辞めて探偵にでもなったら?」



まったくもってその通りだ。

ホテルではコックとして空太が参加することができない。

華穂様のツレとして参加させることもできたが、空太への説明が必要だし、断られる可能性もある。

『仕事』としてきてもらったほうが状況によって厨房、会場と空太の居場所の指定ができて都合が良かったのだ。



「それ、高良田社長は知ってんの?」


「主人に知られる前に心配の種を取り除くのも執事の仕事。」


「ふーん・・・・。

俺らがコソコソするより、高良田社長が動いた方が物事丸く収まると思うけどねぇ。」



そうであればどんなにいいか。

強制力の関係上、絶対に丸く収まらないのだ。



「どうにもならなくなったら裕一郎様に相談する。

できる限り負担は減らさないと。

それに一弥も手伝ってくれるんでしょう?」


「手伝うって言ったからねぇ。

少しでも早く唯ちゃんには華穂ちゃんから離れてもらわないと、空太くんが可哀想だし?」


「・・・・・・・ふたりの邪魔なんてしてないわよ。」



こちらとしては精一杯ふたりのサポートをしているつもりなのに心外である。


とりあえず今日で全ての攻略対象者との繋がりは作った。

あとは空太次第だ。


ほっと息をつく。



「一弥・・・・ありがとう。」



正直、一弥の協力の申し出はありがたい。

1人で抱えていたものを気づいてくれて、肩が少しだが軽くなった気がする。



「秀介様のこと、一弥に話せて良かった。

これからも協力のよろしくお願いします。」



心からの感謝を込めてお辞儀をする。

あと少し、まだ私は頑張れる。



「不意打ち・・・・。」



ポツリと聞こえてきた声に顔をあげる。


そこには片手で口を覆ってそっぽを向いている一弥がいた。

なぜか耳まで真っ赤だ。



「ほんっと、天然小悪魔って・・・・タチ悪い・・・・」



なんだかぶつぶつ言っているが、聞き返してはいけない気がしたので、そのまま聞かなかったことにした。

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