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「やっぱり欲しいな。」


ポツリと耳元で囁かれる言葉。

待っていたように回された腕は首と腰をしっかりとホールドしていた。



「ちょっと一弥!!」


「ねえ唯ちゃん、面白い話してあげる。」



さっき邪魔をするなといったばかりなのにちっとも話を聞く気がない。



「話なんていらない。腕どけて。」


「俺ねぇ・・・・、隼人になりたかったんだ。」


「は?」



話を聞くつもりなどさらさらなかったが、予想外すぎる言葉に思わず固まった。



「バカでしょ?俺みたいなのが隼人になろうだなんて。

でもねぇ、唯ちゃんは素直で優しい隼人が好きだったから、俺も隼人みたいになれば好きになってくれるかなぁと思ったんだよねぇ。」


「はぁっ!?」



なんだそれ。

確かに私は素直で優しい隼人が好きだが、一弥が望む『好き』という気持ちを隼人に感じたことは一度としてない。



「唯ちゃんさえ手に入るんなら、別に俺のことなんてどうでもいいと思ってたんだよねぇ。

自分を消して一生隼人っぽい人間演じて、唯ちゃん捕まえとこうと思ってた。

まあ、隼人みたいにもともとが純粋培養じゃないから、上手く我慢できなかったけど。」



・・・・もしかして新年会からの挙動不審の原因はそれ?



「我慢して我慢して隼人になろうとしてたのに、本物の隼人でさえ唯ちゃんの心に入れないなんてね。

ほーんとバカな努力してた自分に笑っちゃうね。」



自虐的に笑う一弥になんと声をかけていいのかわからない。



「ねぇ・・・・・・・・華穂ちゃんのこと殺していい?」



思わずあげそうになった声をすんでのところで飲み込む。

落ち着け。

ヤンデレモードになった一弥を不要に刺激するな。



「・・・・ダメって言ってもるんでしょう?

結果だけ教えといてあげる。

華穂様には指一本触れさせない。

もしも、ありえないけどもしも、華穂様に何かあったなら、たとえ相手が一弥じゃなくても私は気に病んで死ぬでしょうね。」


「それは困るなぁ。

唯ちゃんを手に入れることが、俺の唯一の望みなのに。」



今の一弥にムキになって反対してもますます事態が悪化するだけ。

ここは淡々と事実だけを伝えて、その手段では望みのものが手に入らないことを伝えるしかない。



「唯ちゃんの望みの邪魔をするなっていうなら、俺の望みを叶えるのも邪魔しないでくれる?

唯ちゃんの望みに俺の望みは邪魔みたいだから無理だろうけど。」


「私は一弥の邪魔をしているつもりはない。

ただ、私が『一弥に邪魔されてる』と感じれば感じるほど一弥の望みは叶わないでしょうね。」


「・・・・・・・・じゃあ、どうしたら俺の望みは叶うの?」


「・・・・・・・・華穂様が幸せになったら、私の心にも余裕ができるかもね。」


「俺には華穂ちゃんは優しいお父さんと恋人に囲まれて十分幸せに見えるけど。」


「まだ足りない。

華穂様と空太様がみんなに祝福されて、確固たる関係を築くまでが私の仕事。」


「・・・・・・・・そこまで終わったら俺のものになってくれる?」


「・・・・・どうかな。

今よりは状況が良くなるかもしれないとだけ伝えておく。」



一弥の望まない真実は言わない。

でも、嘘もつきたくない。


全てに片がついたら、いったい私はどうするのだろう。

一弥や流の執事をしてもいいかと思うこともあった。

今ではどちらもありえないことだけれど。


結論を出さなければいけない。

いつまでも先延ばしにしてはいられない。

華穂様が幸せになったら、空っぽになった私の中に誰か残るのだろうか。

誰か残るのならばその人と共にあるために断ればいい。

もし、私の中に誰も残らなかったらどうしよう。

どうやってこの執着を終わらせればいいのか。


・・・・・・・・いや、そもそも私に好きな相手ができたとして、納得するのだろうか?

・・・・・・・・・・・・怖い想像しか出てこない。


力強い腕。

この腕の中で安らいでくれる存在を一弥は見つけることはないのだろうか。



「っっっ!!!!」



突然首筋に当たった柔らかさと直後に来たチクリとした痛みに身体を震わせる。



「じゃあ約束。

唯ちゃんに早く余裕ができるように、華穂ちゃんが幸せになるのを手伝ってあげる。

だからなんでも言って。

俺にできることならなんでもしてあげる。」


「あ、ありがとう・・・・。」



なんとか口を動かし言葉を絞り出してみるが、正直それどころではない。

首に当たったまま動かされる唇が気になって仕方ない。


一弥の唇が離れ、そこをスッと撫でられる。



「これは約束の証。

華穂ちゃんが幸せになるまで大概のことは大目に見るけど、心も体も他の男に許したりしちゃダメだからね。」


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!

だから私を肉食女子扱いするなっ!!!」



首についたであろう跡のお返しに、とりあえず鳩尾に一発入れることにした。

ヤンデレてる一弥も描きやすい・・・・。

もはやこのふたりは漫才ですね(ぇ


次の更新は拍手御礼話の変更です。

拍手御礼の一弥はヤンデレてない・・・・はず。

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