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華穂視点。

「お待たせ。」


「おー、唯さん無事準備できたか?」


「うん。ばっちり可愛く仕上げてきた!」



部屋に戻って待っていた空太に向けてVサインする。



「唯さんあんなに完璧なのに服のセンスないのか。

こりゃまた意外・・・・・。」


「いやいや、センスがないわけじゃないよ。

ただ唯さんに選ばせると職業柄というか身についた習慣なのか、地味で控えめな服装になっちゃうだけで。

せっかくのデートなんだから流好みに可愛くしたいし。」


「そんなもんか?」


「女の子にとってデート服はとーっても大事なの!!」



わたしだって今日の格好を昨日どれだけ悩んだことか。

これだから男の子って・・・・・・・・。



「俺はお前が何着てても可愛いと思うけどな。」



・・・・・・・・男の子って、女の子の努力を飛び越えて嬉しくなることを言うから困る。


照れもなく意識せず普通の様子でいわれた言葉に、余計に動揺する。

これって普段からそう思ってくれてるってことだよね?

ドキドキする胸を押さえる。

ダメダメ。

これからさっきの返事するって決めたんだから、落ち着かなきゃ。

今からこんなんじゃまた何も言えなくなっちゃう。


自分で淹れなおしたのか、向かい側のソファーに座ったわたしに空太は湯気の立つ紅茶を淹れてくれる。

それを一口飲んでホッと息をつく。


「美味しい。」


「唯さんほどじゃないけどなかなかだろ?」


「うん。」



さっき、わたしが唯さんのところに行く前に空太のために淹れた紅茶よりはるかにいい香りがする。

同じ茶葉のはずなのに。



「料理だけじゃなくてお茶まで入れられるなんて・・・・・・・・。」



結婚して空太にやってあげられることがない気がする。

なんだか全部空太がやっちゃってむしろわたしがお世話されそう。



「お前、こっちで暮らすようになってから紅茶好きになっただろ?

だから、さすがに唯さんレベルは無理だけど、少しくらいは近づこうと思って教えてもらってるんだよ。」



いつの間に・・・・。



“全部わたしのため”



昔は『本当に面倒見がいいなぁ』と思ってた。

困ってたら助けてくれて慰めてくれて、いつもそばにいてくれて。

でも、きっとそうなったのはずっとわたしのこと

見ててくれたから。

わたしが何を好きで何に悩んで何に怒ってるのか知って、それを受け止めるために準備してくれたから。

想い出から感じる空太の心に、また胸が熱くなってくる。



「チョコ、準備してくるね。ちょっと待ってて。」



いっぱいいっぱい、わたしは空太に返さなきゃいけないものがある。

まだできることは少ないし、空太の方が上手にやっちゃうことも多いけど、少しでもわたしができることから。

まずは精一杯の愛をチョコに込めて。





そーっとそーっとベリーソーソースで描いたハートの中にフォンダンショコラを置く。

ホワイトチョコソースをベリーのソースの上に乗せて爪楊枝でハートにする。

生クリームとイチゴのスライス、ミントを盛り付けて最後にバニラアイス、仕上げに粉砂糖をお皿全体に振りかける。



「よしっ、完璧!!」



何度も練習した甲斐があってそんなに時間もかからず綺麗にできた。

あとはチョコが固まらないうちにはやく空太に食べてもらわなくちゃ。





「お待たせ。」



デコレーションが崩れないように慎重に空太の前に置く。



「すげぇな。なんか食べるのが勿体無いくらい綺麗に出来てるな。」



空太が驚くのを見てちょっと満足する。

空太はポケットからスマホを取り出すと、フォンダンショコラの写真を撮り始めた。



「そ、空太・・・・。

さすがに写真を撮ってもらうほどのものじゃないから。」



いっぱい写真撮られて恥ずかしいやら照れくさいやら。



「だってこれ、俺の彼女として初めて作ってくれたチョコだろ。

やっぱ記念に残しておかないと。」



・・・・今日一日、浮かれてるのはわたしだけかと思ってたけど、空太もけっこう浮かれてるみたい。

なんだか最近自分じゃ全然届かないと思ってた空太がちょっとだけ子供っぽく見えて嬉しい。



「いーから!熱々が美味しいからはやく食べて!!」


「わかったわかった。」



スマホをお皿の横に置いて空太がフォークを手に取る。

フォークがフォンダンショコラを切る様子を固唾をのんで見守る。



とろりと中からとろけ出てきたチョコレートにホッとする。

よかった。見た目だけじゃなくて中身もうまくいったみたい。

とろけ出たチョコレートを絡めた生地が空太の口に運ばれていく。

モグモグと口を動かすと、空太はニコッと笑った。


「すげぇ美味い。

華穂の家まで食べにきた甲斐があった。」


「ほんと!?」



自分でも成功だとは思ってたけど、やっぱりそれを空太の口から聞くとすごく嬉しい。



「施設の奴らが知ったら羨ましがるだろうなー。」


「どんなに羨ましがられてもみんなにはあげないよ。

それは空太だけの特別なチョコだから。」




そのチョコはわたしと永遠を誓ってくれる大好きな人へのわたしの精一杯の心のかたち。

家族がインフルエンザで倒れました。

感染ったら一弥気分が味わえるのになーと瞬時に思った私は色々重症(手遅れ

倒れた時は活動報告で報告します。


昨日拍手御礼話交換してます。

同時に過去の拍手御礼も小話にUP。

よろしければお楽しみください。

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