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前半華穂視点。 後半唯視点。
「お腹いっぱい!!」
最初の緊張はどこへやら。
わたしはすっかりお料理に魅了された。
やっぱり期待を裏切らずすっごく美味しい。
「お前よく食べたなぁ。」
「だってすっごく美味しかったんだもん!」
どの料理もすごく美味しくて、種類も多い。
食べてみたいけどお腹いっぱいで食べられなかったものもたくさんある。
それにとても寛げるお店で、何時間でも座っていたくなる。
「本当にこのお店いいね。また来たいな。」
「あぁ、また来ような。」
そう言って店内を見回す空太の視線は優しい。
本当にお気に入りのお店に連れて来てくれたんだ。
それが嬉しい。
「このお店にはよく来るの?」
「あぁ、3ヶ月前に連れて来てもらって、今日で5回目だな。」
「そんなに!?」
今日で5回目ってことは月1回以上・・・・。
うちにもよく来るし、勉強のためにいろんなお店を回る忙しい空太が短期間に何度も同じお店に通うのは珍しい。
「・・・・・・・・この店はさ、憧れなんだ。」
また空太の目が優しくなる。
「料理が美味いのはもちろん、こう・・・あったかくていつまでも何度でも来たくなる雰囲気とかさ。
いつか俺もこんな店を持ちてぇなって・・・・・。」
未来を語る空太は少し照れていて、それがまた愛おしく思える。
「だからさ、華穂。」
テーブルの下に置いていた手を握られる。
「いつになるかわかんねぇけど、俺と一緒にこんな店をやろう。
きっと今みたいなお嬢様の生活はさせてやれねぇけど、こんなくつろげる空間をふたりで作っていきたいんだ。
・・・・・・・・いいか?」
いつのまにか涙が溢れていた。
わたしの頬に流れる涙を空太優しく拭ってくれる。
2度目のプロポーズに胸がいっぱいになって何も言えない。
わたしは、ただ何度も何度も頷く。
この嬉しさが空太にしっかり届くように。
今は胸がいっぱいで何も言えないけど、フォンダンショコラを渡す時にしっかり言葉にして伝えよう。
わたしも空太が大好きなことを。
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食堂で待機していると15分ほどでお手伝いさんは戻ってきた。
「お待たせ。進一様へのお話は終わったわ。」
「ありがとうございます。」
「一度平岡さんの確認を取ったほうがいいかと思って、進一様はそのまま応接室でお待ちいただいてるんだけど、それでよかったかしら?」
「はい。では戻りますね。」
どんな話をしたか気になるところだがそれは聞かない。
裕一郎様が話してくださるのを待つのみだ。
「お待たせいたしました。お話はいかがでしたか?」
新しいお茶を持って入室すると進一様は微笑んで迎えてくれた。
「うん。源一郎様の詳しい様子が知れてよかったよ。
お祖父様にいい土産話ができた。」
「ご満足いただけたようでなによりです。」
「今回はダメだったけど、次はぜひ華穂さんと一緒にお見舞いしたいな。」
「かしこまりました。
華穂様のスケジュールと源一郎様の体調を確認いたしますので、ご都合のよろしい時にご連絡ください。」
「じゃあ、よろしく。
あぁ、これ源一郎様にお渡ししておいて。」
バサリと花束を渡して進一様は帰っていった。
つ・・・・疲れた・・・・・・・・っっ。
攻略者もそうだが知っていることを知らぬ存ぜぬで通すのは辛い。
おまけに今回は相手が『知っているはず』というスタンスできていて、大っぴらに『知らない』と宣言しづらい状況・・・・。
大きくため息をつく。
何が狙いか知らないが、進一様は言葉通りまた来るだろう。
裕一郎様が戻り次第、対策を相談しなければならない。
その時に話してくださるのか一方的に指示が来るのかはわからないが、何を言われても対応できるようにしておこう。
気が重くなるのを誤魔化すように、私は一弥と進一様の訪問で遅れていた分の仕事を片付け始めた。
次の更新は拍手御礼の交換になります。




