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「大変お待たせいたしました。」


「いや、美味しいお茶とお菓子いただいてたから大丈夫。

さすが本家。いい茶葉使ってるね。」


「ありがとうございます。

その味をおわかりになる進一様も、普段から良いものをお飲みのようですね。」


「嗜みのひとつとしてね。」



そういってティーカップに口をつける様子は確かに様になっていた。



「申し訳ございません。

源一郎様様のお見舞いの件ですが、確認しましたところ最近は体調が優れないようでしてまたの機会にお願いしますとのことでした。」


「それは源一郎様ご本人が?」


「いえ、源一郎様はお休みでしたので、医療の心得のある源一郎様のお世話をしている者に確認いたしました。」



ただでさえ確執がありそうな分家筆頭の跡継ぎに裕一郎様の指示だと知られるわけにはいかない。



「そうか・・・・。お休み中ならどうしようもないね。

そうだ。会えないなら最近のご様子を話してもらっていい?

お祖父様に土産話のひとつでも持っていかないと。」



え"??



ゲームで得た知識はある。

ただそれを言うわけにはいかない。

今生で私は源一郎様にお会いしたことがない。

適当に話をでっち上げるか、正直に話すのか。

でっちあげれば後からまた進一様が来られた時に話が噛み合わなくなる可能性がある。

かといって見たことがないと正直にいうのも進一様の不信を深める結果になる。



・・・・・・・・進一様は目的はわからないが、源一郎様のことを探りにきている。

だからわざわざ裕一郎様のいらっしゃらない平日に来られたのだ。



正月の対面で、おそらく華穂様が何も知らされていないのはバレている。

華穂様と源一郎様を会わせて、一体進一様に何の得が・・・・・・・・。

ゲームのキャラでない進一様は何を考えているのかまったくわからない。



「重ね重ねお役に立てず申し訳ございません。

私、普段は華穂様のお側に控えておりまして、源一郎様のご様子についてお話しできるようなことを存じておりません。」



これで引き下がってくれればいいが・・・・・・・・。



「おや、お正月の様子から本邸のことは全てあなたが取り仕切ってるのかと思ってたな。

知らないんなら仕方ないけど・・・・、でもお祖父様も心配していたし・・・・。」



引く気は無い・・・・か。



「私にはわかりませんが、他に詳しい者がおりますのでつれてまいりますね。」


「ありがとう。

わがまま言って悪いね。」


「いいえ。ご兄弟の身を案じるのは当然のことです。

少々、お待ちください。」



一礼して退室する。

・・・・・・・・心苦しいが演技をするしかない。

上手くいけばいいが・・・・。







「平岡さん!進一様、大丈夫だった?」



こちらは声をかける前に、お手伝いさんから声をかけてくれた。



「それが・・・・」



意識して困ったような顔をする。



「実は進一様が源一郎様について聞いて来られるのですが、私には何のことだかさっぱり・・・・・・・・。

最初は『お見舞いがしたい』ということで、やはりよくわからなかったので裕一郎様にご相談したのですが、裕一郎様からは源一郎様の体調不良で面会不可と

言われましたのでそれをお伝えしたんですが、それならば『最近の源一郎様についてのお話が聞きたい』とおっしゃってまして・・・・。

どなたか源一郎様について進一様にお話しできる方を知りませんか?」



明らかに顔がこわばってしまったお手伝いさんにむかって、それに気がつかないふりをして首をかしげる。



「・・・・・・・・わかったわ。

平岡さんはまだこちらで働いて一年も経ってないんだから、源一郎様については古株の私の方が詳しいわね。

進一様には私からお話ししてもいいかしら?」


「すみません、お願いします。」


「じゃあ、話が終わったら声をかけるから・・・・そうね、食堂ででも待っててちょうだい。」



とても助かったという顔をしてお手伝いさんを送り出す。

高良田邸の使用人は優秀だ。

先ほどの会話で裕一郎様の意向は伝わったはずだ。







こっそりと壁に隠れて気配を消して応接室の扉を見張る。

そこへ2人の人間がやってくる。

ひとりはお手伝いさん。もうひとりは・・・・・・・・使用人新年会見かけた里見さんだ。

応接室に入るのを確認してから、私は食堂に向かった。

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