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「華穂様、2月14日のご予定は?」
今は1月末。空太のシフトは月末区切りだから、もう2月のシフトはわかっているはずだ。
「え?」
華穂様は私の質問に固まった後、徐々に顔を赤くしていく。
「う、うん・・・14日ね。まだなにも決めてないけど、その日空太休みなんだって。
だから・・・・・・・・。」
「かしこまりました。その日は1日お休みにいたしましょう。」
「え!?いいのっ!??」
「いつも頑張っていらっしゃいますので、1日くらい大丈夫です。」
普通の社会人であればデートのために会社を休むなどありえないが、華穂様の予定は基本的に全て家庭教師。なんとでもなる。
せっかく付き合い始めて最初のバレンタインだ。
満喫していただいて欲しい。
「ありがとう!唯さん!!!」
飛び跳ねんばかりに喜ぶ華穂様にこちらも嬉しくなってくる。
最終局面直前の最後のデートイベント。
ゲームの中の2人は思わずプレイヤーがニヤケてしまうくらい幸せそうだったが、実際のお二人はどう過ごすのだろう。
・・・・・・・・こっそり覗いてみたいなぁ。
「唯さんもデートするんなら1日お休みでいいからね!!」
・・・・・・・・華穂様を尾行することはデート・・・ではないな。
あっという間にバレンタインデ-3日前。
私と華穂様はせっせとお菓子を作っていた。
施設の子供たちにあげる分のお菓子だ。
ブラウニーとひとくちスイートポテトパイ。
どちらも簡単だがやはり大量に作るのには時間がかかる。
「唯さんは結局、バレンタインデーどうするの?」
パイ生地を麺棒で伸ばしながら華穂様が私に問う。
「邸の仕事をする予定です。」
本当は華穂様たちのデートを尾行したい所だったが、さすがにバレそうなので諦めた。
素人に1日尾行は難しい。
それに私もそろそろ華穂様のストーカーを卒業しなければならない。
これもいい機会だ。
「わかった。お土産買ってくるね!」
「ありがとうございます。」
お喋りしながらも手はどんどん作業を進めていく。
型にブラウニーの生地を流し入れてオーブンへ。
前回お菓子を作った時に子供たちが喜んでくれたのはとても嬉しかった。
だから今回は『手伝い』という形ではなく、自ら進んで華穂様と一緒に作りたいと申し出た。
そこでふっと流のことが頭をよぎった。
料理もお菓子もとても喜んでくれていた。
・・・・喜んでくれるのは嬉しいが、ものには限度がある。
褒められた時は嬉しかったが、後々まで絶賛されるのは居心地が悪い。
あの喜びようも、子供ならば可愛らしいのだが。
出来上がったお菓子は翌日施設に持って行った。
施設の子供たちは思った通り大喜びで食べてくれて華穂様と頑張って作った甲斐があった。
施設から帰って、華穂様は今度は明日の本命用のお菓子に取り掛かる。
やはり大切な本命にはみんなと同じお菓子だけでは乙女失格。
特別なものを準備しなければ。
「今度は何を作られるのですか?」
「フォンダンショコラと塩バニラサブレ。」
塩バニラサブレはともかく、フォンダンショコラ??
「フォンダンショコラもラッピングして持っていかれるのですか?」
フォンダンショコラは熱々で中がトロけるのが美味しい。
外で貰ってその場で食べられるようなものではない。
持って行って空太の家で食べるという手もあるが、崩れないだろうか?
「持ってかないよー。
外で遊んだ後、家に帰ってきて食べさせるつもり。
パイやサブレはお土産かな。
だから、明日は空太連れて9時ごろ帰ってくるね。」
・・・・・・・・そうなのか。
別に泊まってきてもいいんだけどな。
と、不埒なことを考えるがもちろん口には出さない。
追加コンテンツ以外は全年齢のゲームらしく、ドキドキするけど一線は越えないという仕様だったが、空太もそれを強いられるらしい。
・・・・・・・・頑張れ、空太。
----------バレンタイン当日。
華穂様を迎えにきた空太に挨拶してお見送りをするためにエントランスに出る。
2人は最寄り駅まで車で送って貰って、そこから電車で移動といういたって普通なデートをする予定らしい。
「空太様、本日は華穂様をよろしくお願いします。」
「はい、いってきます。」
空太に頭を下げてから送り出すために外へと続くドアを開ける。
・・・・・・・・・・・・・・・・。
パタンッ
そこのいるはずのない人物の姿を見た私は、思わず見間違いかと扉を閉めた。
明日もしくは明後日はクリスマス話を小話に投稿予定です。
詳しくは活動報告で。




