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唯、偉そうに語る。

「日本代表戦の時はいつもレプリカユニフォームを着てテレビの前で立ち上がって応援なさっています。華穂様もご一緒に、こちらが見ていても熱くなるくらい一生懸命に。

もちろん、ユニフォームの背番号は隼人様のものです。」



そこで一旦区切って呼吸を整える。



「・・・・・・・・育ててもらったチームを離れて海外に行くことが裏切りになるのか、私にはわかりません。

隼人様がチームを離れることを残念に思う方は多いでしょう。

けれど、海外で経験を積んでもっともっと成長した隼人様の姿を見たいと思う方も多くいるのではないでしょうか?」



真剣に聞いてくれている隼人の心に届くようにゆっくりと自分の考えを伝える。



「私は、隼人様が海外で成長され、その成長を日本代表戦で見せてくださったらとても嬉しいと思います。

それに日本人が海外で活躍しているというニュースを聞くというのも嬉しいです。

特に、それが親しい隼人様であるのならば尚更。


隼人様、子供の成長を喜ばない親はいません。

裕一郎様は息子同然の隼人様の成長を願わないわけがありません。

確かに監督やコーチがチームのために隼人様を育てていたという面もあるでしょう。

しかし、それだけではないと思います。

隼人様から見た裕一郎様や監督やコーチは隼人様が海外に行くと裏切った怒るような方々ですか?

監督やコーチ皆様にはお会いしたことがありませんのでわかりませんが、少なくとも裕一郎様と一ノ瀬社長は裕一郎様が成長することを喜んでくださると思います。」



おそらくあの週刊誌の報道の頃には隼人までは伝わっていなくても、一ノ瀬社長には海外移籍の話が来ていたのだろう。

だから敢えて荒療治をおこなった。

理由を聞いた時にも日本代表の話など、隼人の成長を思い描く話は出ていた。

社長がああいう人柄のチームであればきっと監督やコーチもそれに近い人柄なのだろう。

だからきっと、みんな隼人の決断を責めたりしない。

そういう優しい人たちだから隼人も彼らが好きで、出て行く決断が出来ないでいる。



「成長したいという気持ちは植物と同じではないでしょうか?

無理に上から押さえつけたら曲がったり枯れてしまったりするかもしれません。

隼人様が無理をすることを裕一郎様は望まないでしょう。」



間を置くようにもう一口コーヒーを口のする。



「隼人様、隼人様の言葉を受けて華穂様は一歩踏み出されました。」


「え?」


「隼人様が華穂様に想いを告げられたように、華穂様も勇気を出して想いを伝えられました。

裕一郎様のもとを巣立つ日も遠くないでしょう。」


「そうですか・・・・。よかった。」



隼人は少し寂しそうに、それでも嬉しそうに笑った。



「隼人様も裕一郎様から巣立って、立派な姿を裕一郎様だけでなく世界中の人々に見せてください。

世界がそんなに甘くないというのはわかっています。

けれど、一歩を踏み出さなければ何も変わりません。

勇気を出して荒波に飛び込んで行く隼人様を裏切り者扱いする人間は隼人様の側にはいません。

もしいるとしたら、それは距離的には近くても、心は隼人様と遠い縁のなかった人だと思っていればいいんです。

サッカー選手の選手人生は短いんですから、迷ってたらあっという間に終わってしまいますよ。」



隼人は優しい。

どこかの誰かさん達みたいにもっとわがままになってもいいくらいだ。



「あくまで私の願望ですが、一言。

もし隼人様がウィンズを家のように思っていらしゃるのでしたら、成長が終わったと感じた時に帰って来てください。

スター選手の凱旋を隼人様のファンとして喜んでお迎えしますから。」



ちょっとウィンクしながらおどけたように言ってみる。

それに隼人は笑ってくれた。



「やっぱり唯さんに相談してよかったです。

この間も思ったけど、俺、ほんと人を信じられてないんですね。

裕一郎さんが俺を批難するはずないのに。」



この間ってなんだろう?



「信じていないというより隼人様は優しすぎるんだと思います。

相手が傷つかないか心配するから、悪い想像ばかりしてしまう。

隼人様の周りの人々も皆様優しいです。

それは隼人様の人徳なんですよ。

自分の人徳にもっと自信を持ってください。


あ、でも海外は怖いので簡単に人を信じちゃダメですよ??」



重くなりすぎないようにちょっと砕けた口調で話してみる。

隼人もそれに気づいたらしく話に乗ってくれた。



「唯さんは海外経験豊富そうですね。

色々教えてください。」


「そうですね。こわーい話をたくさんお教えしましょう!」



ここから“本当にあった怖い話(海外事件編)”が始まった。

昨日、拍手御礼話交換しております。

よろしければお目通しくださいませ。


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