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翌日の15時、隼人の寮の近くのカフェで待ち合わせをした。



「すいませんっ、唯さん!お待たせしましたっ。」



慌ててカフェに入ってきた隼人に軽く首を振る。



「時間ぴったりですので気になさらないでください。」



簡単な挨拶をしてから2人ともコーヒーを頼む。



「あの・・・・本当に急にすいません・・・・。」


「大丈夫です。頼っていただけて嬉しいです。

隼人様のお役に立てるといいのですが。」


「このこと、一弥さんにはその・・・・。」


「言いません。私、口の固さには自信がありますから。」



そもそも一弥にいちいち言う必要もない。


そこまで言うと隼人はホッとした顔を見せた。

・・・・そこまで深刻な悩みなのだろうか?


コーヒーを飲みつつ隼人が口を開くのを待つ。

隼人は何度か躊躇うような仕草をした後、ゆっくりと口を開いた。



「すいません、唯さんに全然関係ないことだっていうのはわかってるんスけど、唯さん以外相談する相手が思いつかなくて・・・・・。」



???

なんの相談だろう?全く見当がつかない。



「海外移籍の話が来てるんです。」



その一言で今の状況とゲームの知識が繋がった。


華穂様は空太を選んだので隼人の攻略はストップしたが、もし隼人とのルートを進めた場合『隼人の移籍』というイベントが発生するはずだった。

本来ならば優勝を逃したことで腐りそうになっていた隼人を支えた華穂様がその相談にも乗り、ハッピーエンドで華穂様を連れて海外に行くというストーリーだった。


たとえ華穂様との恋が実らなくても現実は進んでいく。

華穂様が務めるはずだったポジションが私に来たのだろう。

・・・・・・・・なぜそれが私なのかはわからないが。



「その深刻そうなお顔を見るに、“おめでとうございます”という状況ではないのでしょうか?」



隼人は思い詰めたような顔をしていた。

やや俯いて眉間にしわを寄せ膝の上で強く拳を握りしめているのがわかる。



「わからないんです・・・・どうしたらいいのか。」



ただ黙って頭の中を整理しようとしている隼人を待つ。



「俺・・・・サッカーが好きです。

プレーするのも大好きだし、そのプレーで裕一郎さんやサポーターのみんなに喜んでもらえるのが嬉しいです。

チームみんなで一丸となって戦って勝つと最高に気持ちいいんです。

本当にサッカーやっててよかった・・って。


サッカー選手としてもっともっと上手くなりたい気持ちはあります。

それには海外に行くのが一番早いっていうのもわかってます。

日本代表の試合の時には向こうにいる選手から『早く海外にこい』っていわれることもあるから・・・・。


でも、自分の成長のために海外に行くのって、裕一郎さんやサポーターのみんなや、チームを裏切ることなんじゃないかって思うと・・・・。」



苦しそうな声が胸に痛い。



「俺は裕一郎さんに拾ってもらって、監督やコーチやスタッフのみんなに育ててもらって、ここまで来れたのは俺の力なんかじゃないって思ってます。

大事に育ててくれたのはチームの力になるから。

優勝もできてないのに育ててもらった恩を返さずに他のところに行くなんてやっぱり良くないですよね・・・・。」



隼人の本心は海外に行きたいのだろう。

けれどもそれと同じくらいチームや応援してくれる人々が大事なのだ。

だから悩む。誠実な隼人らしい。


ここで私はなぜ隼人が私に相談しようと思ったのか気がついた。

裕一郎様に近いからだ。

たくさん応援してくれる人々の中でも先ほどから何度も名前が出てくる裕一郎様のことが一番気がかりなのだろう。

裕一郎様に近く、それでいてチームとは無関係な相手が必要だったのだ。

だとすると、返答は・・・・。



「隼人様、ご存知ですか?裕一郎様はウィンズの試合が大好きですが、日本代表の試合も同じくらいお好きなんですよ。」


「え?」


何の話かわからないとポカンとする隼人の姿に笑みをこぼし、コーヒーを一口飲んだ。

ブクマたくさんありがとうございます。


次回は拍手御礼話の続きを交換しようと思います。

交換完了は活動報告でお知らせします。

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