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昨日は失敗したなぁ・・・・・・



昼食で使った皿を洗いながらはぁっとため息をつく。

子供達と話している時など頭を使っている時はいいが、こういう単調な作業になるとついつい昨日のことを思い出してしまう。



昨日の昼間の記憶は、流が華穂様と結婚しようとした理由を聞いたところでぷっつりと途切れていた。


嫌な予感はあったのだ。

なんせ年単位でアルコールは口にしていない。

アルコールは好きなのだが壊滅的に弱く、すぐに記憶をなくす。

その上、酒癖が悪いのか友人や元彼から『俺がいる時以外、危ないから絶対に呑むな』と厳命されていた。

酒乱でしかも記憶がないとは最悪である。

他所様に迷惑をかけてはいけないと、彼と別れてからはワインの味の違いを勉強をする以外では一切口にすることはなかった。

勉強をするときも大量の水を飲み、かつ味わってから飲み込まずに捨てるという罰当たりなことをしていたため正確に呑んだといえる状況ではなかった。

幸い、執事というのは酒を強要される立場ではない。

すすめられることもあったが『仕事中です』一言で断ってきた。

それを今回は初っ端から封じられ、頼みごとをするという立場上断りもできず、かつとても豊かな香りに負けて呑んでしまった。

出来る限りゆっくり口にして記憶がなくなる前に帰るつもりだったのだが、つまみもなく空きっ腹に入りこんだワインはあっという間に全身を侵食し、記憶はどこかに飛んでいった。



目が覚めて目の前に流の顔があることに死ぬほど驚いた。


『やっと起きたか。よく寝ていたな。』


目を開けた瞬間、意地悪そうな笑みを浮かべてこちらを見ていた流の姿を思い出す。




・・・・・・自分が恋愛に関して干物に分類される人間なのはよくわかっている。

よくわかっているが、これは自分でもどうなのかと思うレベルだ。

1か月もしない間に2回も、しかも別々の男の家で寝こけて一緒のベッドで目がさめるなんて警戒心はどこへいった。

何をされても文句は言えないくらいの大失態だ。

流の紳士さと一弥の体調不良に感謝するしかない。



気が緩んでるのなぁ。



脳内でどんなに理屈をこねて拒絶しても、本心では流にも、そして一弥にも気を許してしまっているのかもしれない。

そんな場合ではないのに、つくづく自分が情けない。



出来るだけ接触を避けよう。



明日からまた仕事の日々が始まる。

頭で考えてもダメなら物理的に距離を取るしかない。

今は自分のことにかまけてる時間はないのだ。

あの人の他にも不穏な不確定要素がある以上、ますます気を抜けない状態になったのだから。










「おかえりなさーい!!!!」



玄関の扉を開けると華穂様が飛びついてきた。

突然のことに目を白黒させる。



「唯さん、ありがとう!!

唯さんのおかげですっごく楽しいお正月だったよ!!

お鍋も美味しかったし、コタツもあったかかった。

ほんとに・・・・・お母さんが元気だったころのお正月みたいですっごくすっごく・・・・・嬉しかったよ。」



私が帰宅の挨拶をする間も無く、まくしたてるように話す華穂様の声が感極まったのかだんだん涙声になっていく。

そんな華穂様の背中を落ち着くように軽く叩く。



「ただいま戻りました。

お喜びいただけたようでなによりです。

空太様や裕一郎様に協力していただいた甲斐がありました。」


「サプライズ、すっごくびっくりしたよ。

だってスーツ姿の空太が扉開けたら立ってるんだもん。

今日はもう遅いから明日、今日のこといっぱい話すから聞いてね。

唯さんもお休みの間のこと教えてね!」



もう一度ぎゅっと抱き締められると『おやすみなさい』と挨拶をして華穂様は部屋に戻っていく。



『おかえりなさい』『おやすみなさい』



その言葉にあたたかいものが胸の内に広がる。

ここは帰ってきて、私がいてもいい場所なのだと思える。

それと同時に明日のことを考えると若干気持ちが沈む。


休みの間のこと。


流の家で酔っ払って記憶をなくしてお泊まりしましたって?

言えるわけがない。


流の家で目が覚めたのは夕方だった。

平謝りする私に流が出した謝罪の条件が、夕食をつくって一緒に食べることと、ホテルではなく流の家のゲストルームに泊まること。


ホテルのことなんてかけらも話した記憶がない。

まさか他にもゲームのアレコレなど話していないかと真っ青になった。


そんな私に、


『男との約束を反故にすることがそんなに心配か?

どんな男か知らんがやめておけ。

寂しいなら今から俺が愉しませてやる。』


と意味のわからないことをのたまった。


なにがどうしてそんな話になったのかさっぱりわからない。

酔っ払いの私、いったい流に何を言った!?


寝室で抱き寄せられ、慌てて誤解を解かなければならないことになったのは苦い思い出だ。


その後なんとか誤解も解けて、結局流の家のゲストルームに泊まって施設にいくことになった。



・・・・・・・だめだ。絶対に話せない。



うん、明日は裕一郎様と華穂様、それに全使用人だけの内輪の新年会だ。

それを盛り上げて、私のことは忘れてもらおう。


そんなことを考えながら、自分の部屋に帰っていった。








これにてお正月編は終わりです。

そろそろ一弥さんに活躍の場を与えないと暴走しそうな気がするんですが、どうしようかなぁ

・・・・


明日は所用のため更新ありません。

次のエピソードも決まってないし、次の更新は本編か小話か拍手か未定です。


【10/27追記】

小話を更新することにしました!

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