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今ごろ、華穂様は楽しんでいらっしゃるかなぁ。
そんなことを考えながら野菜を刻む。
今は華穂様が育った施設で、空太の代わりに昼食の準備中だ。
「唯お姉ちゃん、これ持ってっていい?」
「はい。熱いから気をつけてくださいね。」
子供たちができた料理をテーブルに運んでいく。
楽しそうな声を聞きながら、こんな休暇も悪くないな、と思った。
“1月2、3日は必要最低限の警備を残して使用人は全員休暇”
それを裕一郎様から聞いた時、私はもちろん華穂様のお側に残るつもりだった。
私の仕事の中には華穂様の護衛も含まれるからだ。
しかし、それを伝えると裕一郎様に却下された。
ゲームの終盤を目前に、お側を離れる不安が顔に出ていたのか裕一郎様はひとつ提案をしてくださった。
『使用人として仕事をするのはダメだが、休暇の間 “家” で過ごすのは構わない』と。
私は住み込みで働いているので、家というのはこの邸ということになる。
つまり、仕事はダメだが華穂様のそばにいるくらいならいいよ。
ということだ。
その言葉に甘えて邸で過ごすつもりだったのだが、元日の出来事で考えを変えた。
何もできない私が邸にいても、華穂様は楽しいお正月を過ごせない。
それに元日に発生した疑問を解消すべく調べたいこともあった。
なので、昨日1日調べ物をし、今日1日は空太の代わりとして過ごすことにしたのだ。
昨日、高良田邸を出てから私はすぐに流に連絡を取った。
元日の高良田の親族たちの動き理由を探るためだ。
日本に戻ってきて1年にも満たない私の情報網は少ない。
ただでさえ少ない上にその中の最大のコネは裕一郎様だ。
裕一郎様の周りを探るのに裕一郎様のコネは使えない。
必然的に頼る相手は限られてくる。
ビジネス面で高良田グループとの提携を狙っていた流ならば、私よりも詳しい内情を入手していてもおかしくない。
そう思ってのことだった。
連絡すると流は二つ返事で了承してくれた。
電話では誰に聞かれるかわからないということで、流の家に行くことになった。
まさかまたしてもこれを使うことになるとは・・・・・。
直通エレベーターの前で手首を翳しながら思う。
おもいっきり『行きません』と宣言したのに、自分の都合でまた流の家に来ることがあるなんて思ってもみなかった。
認証は問題なく済んでエレベーターの扉が開く。
自分の手首と目が、未だに鍵としての機能を果たすことに複雑な気分になる。
“合鍵”をくれるほどに信頼を・・・・好意を持ってくれている相手を利用する。
そのことに罪悪感はあるが躊躇いはない。
今の私の最優先は華穂様で、手段は選ばない。
それを嫌悪されて愛想をつかされてしまっても仕方ない。
「失礼します。」
中に入ると流はグレーのセーターに紺のパンツというラフな格好でリビングのソファーで寛いでいた。
「よくきたな。」
「急な連絡で申し訳ございません。
どうしても急ぎで知りたかったので。」
「気にするな。
理由がなんであれ、俺はお前に会えるだけで嬉しい。」
ざ、罪悪感・・・・・・・・。
「突っ立ってないで座れ。
今日は時間はあるのだろう?」
「はい。」
私がソファーに座ると、流は逆に立ってどこかへ行ってしまった。
しばらく待っていると流はワインボトルとグラスを持って戻ってきた。
「付き合え。
今は仕事中ではないからいいだろう?」
「昼間から・・・・ですか?」
「正月だから気にするな。」
確かに正月だから昼間から飲んでる人間もたくさんいるにはいるのだが、問題点はそこではなく・・・・・。
何も言えないまま目の前に置かれたグラスに赤いワインが注がれていく。
テーブルの上という離れた距離からでもわかる芳醇な香りは、それがいかに素晴らしいワインかを物語っている。
「乾杯するぞ。」
「は、はい。」
言われるがままにグラスを手に取る。
頼みごとをしにきたのはこちらだ。
ここで断るのはこんなに素晴らしいワインを出してもてなしてくれようとしている流に申し訳ない。
そんな思いもあり、私は乾杯の声に合わせてワイングラスを掲げた後、こくりと一口それを口に含んだ。
口内から鼻に抜ける香りにうっとりする。
赤ワイン特有の渋味はあまりなくスッキリした味わいで、色もルビーのように透き通って美しい。
口当たりが優しく、女性受けしやすいワインだ。
おそらく流が私のために大切なコレクションの中から選んでくれたのだろう。
そう思うと、ますます味わって呑まなければならないと決意した。
アクセス、ブクマありがとうございます。
一昨日のアクセスが過去最高になっててびっくり(@@
な、何かありましたっけ??
全く心当たりがないんですが・・・・・。
どうしようかなと悩んだんですが、始めてしまいましたお正月唯ver。
しばらくおつきあいくださいませ。




