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「裕一郎様からは何も聞いておりません。」



嘘はついていない。

知っていることはあるが、裕一郎様から何も聞いていない。



「そう・・・だよね。

わたしもお父さんから何も聞いてないから、急にお祖父様なんていわれてびっくりしちゃった。」



力なく笑う華穂様が痛々しい。



「お祖父様って生きてたんだね。

お屋敷にはお父さんしかいないから、てっきりもう亡くなってるのかと思ってた。」



華穂様は今日、辰次郎様に言われるまで、裕一郎様が夏美様と結婚できなかった理由を知らなかったはずだ。

ゲーム内では夏美様は『理由があって結婚できなかった』としか語っていなかった。


両親が引き裂かれたのは祖父のせいだと知ったその日に、祖父がいることを知るのはどんなに強い衝撃だろう。



「華穂様、裕一郎様にはお考えがあって華穂様にも私にもお話をしていなかったはずです。

時がくればお話ししてくださると思いますので、それまで待ちましましょう。」


「うん・・・・。

お祖父ちゃんかぁ。

それともここは家に相応しくお祖父様・・・かな。

お父さんもいないのが普通だから居るなんて考えたことなかった。

なんか色々あったみたいだし、正直どう考えたらいいのかわかんないかも。」


「裕一郎様がいつ話してくださるかもわかりませんし、無理せずゆっくり御考え下さい。」


「うん・・・ありがとう。

さぁ、会場に戻ってお客様をおもてなししなきゃ!」



複雑な胸中を拭うようににっこりと笑顔を浮かべる華穂様の健気さに胸を打たれる。

これ以上華穂様が心を傷めることのないよう、進一様をあまり近寄らせないようにしておこう。

そんなことを考えながら会場に戻った。



大広間に戻り新年会はつつがなく進んだ。

つつがなく・・・・といっても、大問題が発生しなかった、というだけだが。


今回初参加である華穂様は注目の的だった。


創立記念パーティーの時に参加していたのは子会社の社長や副社長などの重役を務める親族だけで、それ以外の親族が華穂様を見るのは初めてだった。

男性の親族からは裕一郎様同じような扱い・・・つまり近い親族はよそよそしく、遠い親族は親しげな接し方だったが、女性は男性よりも強かだった。


『女性だけでおしゃべりしましょう』


と、裕一郎様の隣に立っていた華穂様をあっという間に女性の輪の中に引っ張りこんでしまった。

皆様上品に微笑んでおられるが、輪の外から見ても圧を感じる。

輪の中心で華穂様は質問ぜめにあっていたが、漏れ聞こえてきた質問は特に聞かれて困るような内容でもなかったためそのまま華穂様にお任せした。

質問から華穂様を値踏みするような雰囲気もあったが、それもまた経験だ。

女性同士うまく付き合っていくのも大切なことである。



そこから進一様が華穂様に近づいてくることもなく、無事に新年会は終了した。

何度か進一様が華穂様を見つめているのが気になったが、その理由も後から調べればわかるだろう。

今回の新年会でいくつか気になった点がある。

この後のゲームでの展開を考えると早めに調べておいた方がいいだろう。



「う〜〜〜〜〜〜〜はぁ、ふぅ・・・・・」


「力加減はいかがですか?」


「うん、ちょうど良くて気持ちいい・・・・・。」



今は今日1日で神経をすり減らしたであろう華穂様をマッサージ中だ。



「本日はお疲れ様でした。このまま眠ってしまわれても大丈夫ですよ。」


「ありがとう・・・・・・。

お正月ってこんなに大変なんだね・・・・。

ちょっと施設に帰りたくなっちゃった・・・・・・。」


ちょっと眠そうな声で華穂様がつぶやく。


「施設でのお正月は楽しいですか?」


「・・・・・・んー、どっちかっていうと嫌い

だった。

施設のお正月って寂しいんだぁ。

先生たちも家庭があるからお正月は最低限の人数しか施設にはいないし、お年玉っていう袋に入ったお菓子もらって、正月特番見て・・・・・・。

普通の家庭と違うのはもともとわかってるんだけど、それがよりはっきりする日で、みんな楽しいっていうより沈んでたなぁ。

学校の友達とかがお年玉もらったらおもちゃを買うっていう話を聞いて、羨ましがってる子も多かったかな。」


「華穂様も羨ましかったですか?」


「んー・・・・わたしは大きかったから・・・・お母さんとのお正月思い出してた・・・・・」



言葉が途切れ途切れになっていく。

もう意識は半分夢の中だろう。



「お母様とのお正月はとても楽しかった んでしょうね。」


「うん・・・やっぱりお正月は家族で・・・・だから今日・・・・とっても楽しみにしてたんだ・・・けど・・・」



そこまでいうとそのまま華穂様は眠りの世界へ旅立ってしまった。


マッサージを終えて布団をかける。

お正月に向けて浮き足立っているのは感じていたが、『家族で過ごすお正月』に憧れているとは気がつかなかった。

一般的な家族団らんをイメージしていたのであれば、今日のビジネスパーティのような新年会の空気はとても辛かっただろう。



「華穂様。

高良田邸のお正月は1月4日までですから。楽しいお正月をお約束します。

ですから、今日はゆっくりとお休みください。」



聞こえていないであろうことは重々承知で声をかけて退出する。

主人の願いを叶える。それが私の仕事だ。

二日連続更新とか久しぶり!

なんか休みが頻繁になるとちょっと時間がないだけで『今日の更新はしなくていいかなー』という気分になってくるから恐ろしい・・・・。

こうやってエタってしまうんですね!気をつけます・・・・。

明日も更新予定です!

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