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流と別れて邸内に入る。

華穂様の部屋へ行こうとして携帯にメッセージが来ていることに気がついた。



『お仕事お疲れ様。

もう遅いから先に寝るね。

唯さんもそのまま休んで大丈夫だよ。

一弥への電話、忘れないようにね。

おやすみなさい。 ー華穂ー 』



電話の件を謝ろうと思っていたのだが仕方ない。

明日朝一で謝ることにして、大人しく部屋に戻った。



ベッドに腰掛けて、一弥へ電話をかける。

なんの電話か大方予想がつくので、『もう寝てるから電話でれない』という状態にならないかなぁと期待する。

・・・・・・・・・まぁ、普通にとられてしまうわけだが。



『あけましておめでとう。唯ちゃん。』


「あけましておめでとう。・・・・・・で、あんな時間に何の用?」


『相変わらずつれないねぇ。

新年の挨拶を特別な相手にしたいと思うのは普通でしょ?

本当は0時丁度にかけたかったんだけど、仕事中だったからさぁ。

終わってすぐかけたらあの時間になっちゃったわけ。』


「あのねぇ。最初に電話でなかった時点で寝てるとは思わなかったの?」


『思わないね。

いつ何があっても動けるようにしてる唯ちゃんが、着信音で目を覚まさないなんてありえない。

だから、なんかあったのかなぁと思って華穂ちゃんにかけちゃった。

・・・・・・・・・・・・・・誰かと一緒にいて電話に出られなかった・・・とかね?』



低いトーンで問われた言葉にぞくりとする。

・・・・・・・第六感怖い。



「華穂様と一緒にいるときは仕事中だからプライベートの電話には出ない。

電話に出ないからって華穂様にかけたりしないで。ご迷惑になるでしょう。」


『ふーん、仕事中・・・ねぇ。

まあ、そういうことにしておいてあげる。

ところで、今日の番組見てくれた?』


「見てない。」


あれは見なかったことにしたから見てない。


『えぇー、せっかくの俺の一年の締めくくり見てくれなかったの?』


「こっちも新年の準備で忙しいの。

そんなにゆっくりテレビなんて見てる暇ない。」


『じゃあ、華穂ちゃんから何か聞いてない?』


「何かって何が?」



ここでボロを出すわけにはいかない。

たとえ問題を三ヶ日後に先送りするだけであろうとも。



『俺がテレビで何か言ってた・・・・・とか。』


「んー・・・特に何もおっしゃっていなかったけど。何か言ったの?」


『言ったには言ったんだけど・・・・・・。

・・・・・・・・まあいいや。

新聞やテレビがいつも通りになればわかることだし。』


「なにそれ。

教えたいことがあるなら今言えば?」



言わないであろうことを見越して、促してみる。

なにを考えているのかわからないが、直接いう気がないから回りくどく確認してくるのだろう。



『いや、今言えるのは3日後のスポーツ紙か芸能ニュース見てってことかな。

あと、俺本気だから。

絶対に実現させるってだけ覚えといて。』


「はぁ・・・・全米デビューでもするの?」


『全米デビューなんかよりも大事なことだよ。

俺にとってはね。』


「はぁ。よくわかんないけど、頑張ってね。

明日も早いからもう寝るわ。

おやすみなさい。」


『うん。おやすみ。』



通話を切った携帯を眺める。

なにが“頑張ってね”だ。自分で言ってて白々しい。



本気・・・・・か。



流は本当に、一弥は勘違いかもしれないが『本気』だ。

その視線が、触れられる手が、彼らの想いを伝えてくる。



でも、今の私にはそれが苦しい。

ふたりとも嫌いではない。

流と一緒にいれば楽しいし、一弥のことは見守っていかなければと思う。

本当ならば私は彼らにしっかり向き合っていくべきなのだ。

一弥には執事ではない私を見せて、流の言葉を真剣に考える。そうでないと失礼だ。

けれど、今の私にそれを正面から受け止める余裕はない。

もうすぐ来るであろうゲームの山場。

私はそれに対処するだけで精一杯だ。

自分の恋愛なんてしている場合ではない。

何よりも華穂様の幸せが優先される。

だってそれが、私がここにいる意味だから。

もう少しで終わってしまう華穂様との時間に執事として全力で尽くしたい。

だからあと少し・・・ゲームが終わるまではその想いを見ないふりをしたい。


そんなわがままな自分が嫌で、なんだか卑屈な気分になった。


作中年明けからがっつりゲームイベントを進めようと思ってるんですが、まだ内容思案中。

忙しさはだいぶ落ち着きました。

しばらくは更新はこのペースで、じっくりラストに向けて話を考えていこうと思っています。


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