表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
155/252

152

『皇 一弥』



そう表示されたディスプレイをじっと見た後・・・・


私はそれをなかったことにして、巾着に戻した。



「出なくてよかったのか?」


「はい。私用の電話ですので、後ほど折り返します。」



・・・・・・・嘘は言っていない嘘は。


なんだろうこの後めたい感覚は。

すごく悪いことをしている感じがするのだが、そもそも私はフリーなのだから誰と出かけても電話をしても問題ない。

というか、そもそも私は誰に対して後ろめたく感じているのだろうか?


流??一弥???


膝の上では諦めが悪くバイブ音が鳴っている。

時刻は午前2時半。

常識的の考えて電話をかけていいような時間ではない。

先ほどの楽しい雰囲気はどこへやら。

車内全員がバイブ音に注目していて居心地が悪い。




やっと振動が止まってホッとする。

あとで留守番電話を設定しておこう。


そう思った時だった。後部座席から可愛らしい着信メロディーが流れてきたのは。


このタイミングでの着信など、誰がどう考えても私と同じ電話の相手しかありえない。

不自然な動きで後ろを振り返ると困った顔で華穂様がスマホを見つめていた。

私と目があい、こくりと頷いた後電話に出る。



「もしもし?・・・・・・あけましておめでとうございます。

・・・・・・・・・・唯さんですか?

唯さんなら一緒にいますよ。

着信には気づいてましたけど、仕事中だから後で折り返すって言ってました。

・・・・・・・・・・はい!もちろん!!

とってもカッコよかったです。

・・・・・・・・・はい。ではまた。楽しみにしてます。」



ありがとうございます、華穂様!

とりあえず個人が特定できそうな単語が出てこなかったことにホッとする。

別に悪いことはしていないが、ここで一弥からの電話だとバレれば流の機嫌が急降下するのは間違いない。



「なあ、誰からの電話だったんだ?」



・・・・・・ん?

空太の声がわずかに低い。



「友達。」


「ふーん。」


・・・・・・・・・明らかに機嫌を損ねている。

ごめんなさい。空太。華穂様は私をかばってくれただけなんです。好きで隠してるわけじゃないんです。


声を大にして謝りたいが、それもできない。



「申し訳ございません、空太様。

私が電話を取らなかったばかりに華穂様にご迷惑をおかけして・・・・・・。」



とりあえず『先に私に電話がかかってきた』という事実を強調してみる。



「あ、いえ。唯さんに謝られることなんて何もありません。

ただこんな時間に電話かけてくるなんて、どんな相手か気になっただけなんで。」



そこはつっこまないで!!



「裕一郎様の会社関係の方なんですけど、確かに非常識な時間ですね。

折り返した際に注意しておきますのでご容赦ください。」


「いえ、ほんとに気にしないでください。」


私に謝られるのは心苦しいらしく、剣呑な雰囲気を収めてくれた空太にホッとする。

ちらりと運転席に座る流に目をやる。

何も言わずにまっすぐ前を見て運転する流にホッとすると同時に、何も言われないことがどこか不気味でもあった。







空太を降ろした後で邸まで送ってくれた流に華穂様とふたりで頭をさげる。



「流、今日は車出してくれてありがとう。」


「本当にありがとうございました。」


「俺も楽しかったから気にするな。

来年もまた行くぞ。」


「そうだね。また行けたらいいね!

じゃあ、ふたりで話すこともあると思うから、わたしは先に戻ってるね。

おやすみなさい。」



え!?ちょっ、華穂様!?



そういうと華穂様はさっさとひとりで中に入ってしまった。



「おい。」



唖然とした顔で華穂様が消えた扉を見ていた私に、流が後ろから声をかける。



「はい。」



恐る恐る振り返る。



「さっきから何をビクビクしている。」



挙動不審はモロバレだった。



「いえ、ビクビクなどは・・・・」



流の顔がまっすぐ見れない。


そんな私に流は大きくため息をついた。



「俺はお前に『かっこよく』て『楽しみ』な電話がかかってきても気にしない。」



挙動不審の原因までバレている。

・・・・・・・でも気にしない?



「お前ほどの女を男が放っておくはずがない。

むしろお前を求める男が多ければ多いほど、俺の女は極上だという証になる。」



流は私にずいっと近づくと、腰に腕を回し顎に手をかけた。



「たとえどんな男が現れてもお前に見合う俺以上の男はいない。

俺に合う女がお前以外いないようにな。」



どんだけ自信家・・・・。

本当はここから抜け出さなくてはいけないのに、あまりの自信っぷりに呆れて動く気が起きない。



「だから隠すな。

どんな男がお前に言い寄ろうと、俺には勝てないと証明してやる。

お前もその方がいい男を選んだと納得できるだろう?」



・・・・・・・・・・もうめちゃくちゃである。

・・・・・・・・・・・・でも、流らしい。

思わずクスリと笑ってしまった。



「そうだ。その顔だ。

何度も言っているだろう。笑っていろと。

くだらんことで顔を曇らせるくらいならなんでも話せ。

お前の憂いは俺が払ってやる。」


「・・・・・・ありがとうございます。」



流の気持ちに応えたわけではないから『はい』とはいえない。

けれど、その心がとても嬉しかった。

自分で書いてるとよくわからなくなるんですが、読者さま的には流と一弥、どっちがよく見えるんでしょうか・・・・・?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ