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車がついたのは都内でも有数の神社だった。

明らかに【関係者以外進入禁止】というエリアに車を止める。

・・・・・・・・うん、これに関しては何も言うまい。コネというのは繋がっているところは繋がっているのである。


『本当にここでいいの??』


と言いたげな元庶民と庶民を尻目に流はさっさと車を降りて、助手席のドアを開け私をエスコートしてくれる。



なんというか・・・・・育ちが違うなぁ。



まん丸に目を見開いてその光景を見ている空太を見て心の中で苦笑いする。


流のエスコートは完璧で、それは生まれてから今まで育ってきて習得してきたものだ。

もはや息をするのと同じくらい自然に出来ることだろう。

華穂様は邸に来てからそれについて学んだし、私も見慣れた光景だから特に何も思わない。


空太にだけ馴染みのない光景。


別にどっちがいいというわけではない。

流にはそれが必要であり、空太にはそれが必要なかった。それだけの話。



ただ“違う”のだ。住んでいる世界が。



それをまざまざと見せつけられて空太は何を思うのだろう。


・・・・・・やっぱり流の姿を見せるのは空太に悪影響だろうか。隼人や一弥等のもともと庶民ならともかく、生粋の上流階級である流や宗純なんかは空太のバッドエンドに影響を与えそうで怖い。

別行動にすべきかとも思うが、それだと警護が・・・・・。


と、モヤモヤと考えながら流の後について、人気のない場所を歩いていく。

少し離れたところからは大勢の人々が蠢いている気配がするのに、私たちの周りには人っ子ひとりいない。


ある扉の前にくると流はピタッっと止まった。



「さて、これからどうする?」



流の言葉に他の3人の頭に?マークが浮かぶ。

どうってなにが?



「このまま裏口を通って本殿に行き祈祷を受けるか、この扉から出て他の参拝客に混ざって社殿の外から参拝するか。」



あー、そういうことか。

祈祷なんて思いついてもいなかった。

初詣のイメージといえば人混みに揉まれてゆっくり進み鈴を鳴らして柏手を打つというイメージだ。


どちらにするか。


自然と華穂様に視線が集まる。



「え!?わ、わたしっ!?

うーんっと、えーっと・・・・・・・」


しばらく悩んだ後華穂様が出した結論は、


「やっぱりせっかく神社に来たんだし、鈴鳴らしたい・・・かな。」


だった。



華穂様の希望に私と空太が否やを言うはずもなく、それを受けて流はゆっくりと扉を開いた。



扉の向こうは別世界とでもいうべきくらい雰囲気が違った。

人、人、人、人、人、人。

賑やかな話し声。

冬だから寒いはずなのに、そこは熱気に溢れていた。



空太が華穂様の手を握ったのが見えた。

華穂様が驚いたように少し赤い顔で空太を見返している。


「はぐれると危ねぇから。」


華穂様と視線を合わさずぶっきらぼうに言われた言葉。

それでも華穂様は花のような笑顔で頷き返した。



ふたりの幸せそうな様子に見惚れていると、右手が突然温もりに包まれた。

驚いて右を見るといつの間にか流が隣の立って、こちらを見ていた。

もちろん右手の温もりの正体は流の手だ。



「お前もはぐれないように捕まえといてやる。」


その顔は真顔で、口説いてるとかからかってるとかそんな雰囲気ではなく、至極当然といった風だった。

そんな空気のせいか、なんだか無理に手を離すのも憚られてそのまま繋いだままになる。


握られた手にホッとするのは外が寒いせいだと思った。





人混みに流されるように本殿への道を私と華穂様を中心に四人で並んで歩いていく。



「なんというか・・・すごいな。」



延々と続く人の波を流は少し呆れたような表情で眺めている。



「そうだねー。久しぶりに来たけどなんかこうやって並んでると“初詣にきたな”って感じがするね。

3年ぶりだけどなんかワクワクする。」


「確かになー。なんかこうやって喋りながらだと順番待ちも苦にならないよな。」


「そんなものか?」


「俺は少なくともそうだけど、槙嶋さんは退屈?」


「いや、退屈ではないが、そもそもこんな行列に並んだことがないからな。」


「あれ?流って初詣にきたことないの?」


「ないな。神などという不確実なものに願をかける時間があるくらいなら、その目標のために行動する方が遥かに有益だ。」


「なんというか・・・・・流様らしいですね。」



神社内で言うには不敬すぎる発言に苦笑してしまう。



「え?じゃあなんで初詣に行こうなんてお父さんにいったの?」



確かに華穂様の言う通りだ。

今日初詣に行こうと思った理由がわからない。



「こいつと出掛けたいからに決まっているだろう。」



臆面もなくさらりと言い放つ流に言われた方が赤くなる。



「ニューイヤーパーティでも良かったが、パーティーでは何度かあったことがあるからな。

日本的なことをしてもいいかと思った。」


「そ、そうなんだ・・・・・。」


赤い顔でどう反応していいかわからないといったように華穂様はモジモジしてその返事を聞いていた。



私は私で握られている手を熱く感じて、赤くなっているであろうその手を引っ込めたくなった。



特に決めたわけじゃないけど、なんとなーく小話と交互に更新中。

昨日小話の二話目公開してます。


先日拍手がとっても増えていたので、もしかしたら御礼話と間違ってる方もいるのかも?

と思い、確認したらなんと小話をシリーズに追加していなかったという失態orz


皆様、作者ページから飛んでくださってたんですね・・・・。

お手数おかけしてすみません。

しっかり追加しましたので、行き方がわからなかった方は目次のタイトル上のシリーズ名から飛んでください。

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