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華穂視点。

「「「「「「いっただっきまーす!!!!!」」」」」」



子供達の元気な声が響く。



「おいしー!!!」


「やっぱ華穂先生のお菓子は美味いよなー。」



笑顔で褒めてくれる言葉が嬉しい。



「前みたいにもっと食べたい!華穂先生、いつ戻ってくるの?」


「ええっと・・・・・」



以前に比べてマナーもダンスもできるようになったけど、まだまだ完璧とは言えない。

そもそもどこまで出来れば終わりになるんだろう。

勉強すればするほどどの内容も深く終わりがない気がする。



「空太兄ちゃんの昼ごはんも美味しかったよな。

ふたりとも戻ってきて一緒に暮らせばいいのに。」



言葉の意味が“施設のみんなといっしょに暮らせば”という意味なのはわかってる。

でも、頭の中では勝手に“空太とふたりきり”の生活が広がっていって頬が熱を持ち始める。



「・・・・・バカ言うなよ。

俺戻ってきたらお前らの部屋なくなるだろ。」



ぶっきらぼうな言葉が、自分の願望からなのか照れ隠しに見えて心の中でクスッと笑った。





おやつのお皿を洗いながらぼんやりと考える。



・・・・・・いつ言おう。


今日言おうって思ってはいたけど、タイミングとか場所とか何にも考えてなかった。

よく考えたらこんなに人がまわりにいるのに、ふたりっきり・・・って無理だよね。

でも、あれはともかくお菓子はそんなに日持ちしないから今日渡さないと・・・・・・。



「華穂様、かわります。」



お茶が入っていたカップをお盆に乗せて唯さんが戻ってきた。



「大丈夫だよ。わたしが洗うから唯さんは拭いてくれる?」


そういって断ろうとすると、すっと唯さんの顔がわたしに近づいた。

唯さんがいつもつけてる新緑の香りがふわっと漂ってドキッとする。


「早くしないと渡せないままになってしまいますよ。」


わたしにだけ聞こえる声で唯さんが囁く。

唯さんの言葉に甘えて、わたしは空太を探しにいった。





空太は先生たちと大掃除の進み具合を確認していた。

子供達は休憩時間でそこかしこで笑い声が響いてる。


わたしは先生たちの輪の中に入っていった。



「あとは各自の部屋と外だけだね。

男の子の部屋は相田先生で。女の子の部屋は三丸先生、小さい子の部屋は神崎先生にお願いできるかな。」


「「「はい。」」」


「私はその間に掃除が終わったところのチェックをしよう。

空太と華穂は外を頼むよ。

45分後に開始でそれまでは私たちも休憩しましょう。」



みんなで返事をして先生たちがばらけていく。



「華穂。」



空太の声に顔を向ける。



「休憩前に一度、外の様子確認して必要な道具準備しよう。

外に行くから上着きて来い。」


「うん。」



空太と山中先生からもたらされた思わぬチャンスに緊張気味に返事をする。

・・・・・・・大丈夫。わたしの緊張なんて空太が重ねた10年に比べればなんてことない。





コートを着て渡すものを入れたバッグをしっかり持って外に出る。

外に出ると空太は花壇・・・・・という名の家庭菜園の前に立っていた。

この時期は白菜と大根が元気に育っている。



「お待たせっ。」



小走りで空太に近寄る。



「おー・・・今年も良く育ったなぁ。」



丸々と大きくなった白菜を見ながら空太がいう。



「そうだね。そろそろ食べごろかな。

掃除の前にみんなで収穫しちゃってもいいかもね。」


「今年のもお前が植えたのか?」


「ううん・・・・山中先生か神崎先生じゃないかな。」



職員になってから家庭菜園の担当はわたしだった。

世話は子供達もするけど、どの時期に何をするかは全部わたしが決めていた。


わたしなしでもいつもと変わらない様子を見ると、わたしじゃなくても大丈夫なんだな・・・・と少し寂しい気持ちになる。


何も言わない空太の隣に立ってじっと野菜を眺める。




「掃除の前に渡したいもんがある。」



空太は沈黙を破ると、持っていたバッグの中から小さな箱をくれた。

白い箱は赤いリボンで可愛くラッピングされている。



「ちょっと遅くなったけど、メリークリスマス。」



驚きと嬉しさで息が止まる。箱を乗せた手が少し震えた。



「・・・・・・・開けてもいい?」


「あぁ。」



そっとそっと慎重にリボンを解いて箱を開ける。

箱の中には可愛い桜の花のイヤリングが入っていた。



「すごく・・・可愛い・・・。」



嬉しすぎて涙が滲むのをこらえる。

プレゼント自体ももちろん嬉しいんだけど、なにより同じ気持ちでいてくれたことが嬉しい。



「ありがとう。大切にするね。」



ぎゅっと抱きしめるように箱を握りこんだら、空太が嬉しそうに笑ってくれた。



「実はさ・・・・まだあるんだ。」



そういうと空太は持っていたバッグの口をパックリと開けて中を見せてくれる。

中には大小様々な箱や袋が入っていた。



「・・・・・・・これ、全部?」




「あぁ。・・・・・・やっと渡せる。

毎年買うだけでずっと渡せなかったクリスマスプレゼントを。」

ベタっていいですよね!(と発想力がないのを言い訳してみる

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