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唯→華穂→唯 視点。

わかりづらくてすみません。

もしかしたらしばらくこんな感じかも・・・・・

「いらっしゃい。」



昼過ぎに到着した華穂様と私を山中先生はあたたかく迎えてくれた。



「ほら、浩也あっちの窓拭いてきて!」


「あ!まきちゃんがバケツの水零したー!!」



穏やかな山中先生の表情とは反対に施設内は大変賑やかな状態で、子供達があちらこちらに走り回っている。


玄関口からキョロキョロと中を見る華穂様に山中先生が微笑みながら言う。



「空太なら照明器具の掃除をしているよ。今は奥の部屋にいるんじゃないかなぁ。」



ぼんっと華穂様が赤くなる。

・・・・・たまにしか会わないのに華穂様が恋をしていることも中山先生にバレているらしい。

やっぱり親というものは偉大である。



「あ、そ、そーなんですね!

私たちも着替えてすぐに掃除始めますっ!

行こう、唯さん!!」



照れた華穂様にグイグイ押されて着替えに行く。

今日は1日、施設の大掃除だ。







※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





作業着に着替えてから廊下に出る。



「あ!」


「お、来たか。遅かったな。」



出てきたところにちょうど空太がいた。

姿を見るだけで心臓がトクトクと速い音を奏で始める。


「う、うん。ご飯食べてから来たから・・・。

えっと、久しぶり・・・だね。」


「おぉ、元気してたか?」



言いながらくしゃりと前髪をごと撫でてくれるのが嬉しい。



「ちょっと!髪ぐしゃぐしゃにしないでよっ!」



頬が赤くなるのを誤魔化したくて、つい言葉が強くなっちゃう。



「そんなに怒んなよ。まあ、元気はありそうだな。」


「・・・・・うん、元気にしてたよ。

空太こそ、忙しかったでしょう?

掃除じゃなくてゆっくり休んだほうがよかったんじゃない?」


「まー、確かにきついけどなー。いい加減慣れた。

昨日ゆっくり休んだし大丈夫だ。

それにお前の顔も見たかったしな。」



不意打ちの言葉にただでさえ速かった鼓動が強くなる。

い、言わなきゃ。私も会いたかったって。会えなくて寂しかったって・・・・・。



「あ、あのねっ、わ、わたしも・・・・・・あい、あ、あ、ああああ」



大事な一言が出てこない。



「あああああ、あっち掃除してくるねっ!」


「ん?ああ、気をつけて丁寧にな。

唯さんも手伝ってもらってすいません。」



はっ!?後ろに唯さんいるのすっかり忘れてた!!!



「いえ、こちらに関しては空太様や華穂様のほうがお詳しいですから、指示よろしくお願いします。」


「大丈夫!唯さんはわたしと一緒に作業するから!じゃあ、また後でね。」



唯さんの手を取って歩き出す。


うぅ、恥ずかしい。

さっきのやり取り全部唯さんにも聞こえてたんだろうなぁ。

後ろにいる唯さんのこと忘れるなんてわたしどんだけテンパってたの!?


今まで空太の傍が一番安心できて自分らしくいられる場所だったのに、自分の気持ちを自覚してから一番落ち着かない場所になった。

心臓はうるさいし、頭は真っ白だし・・・・でも不思議とそれが嫌じゃない。

そりゃあ、『なんで言えないんだろう』とか『もうちょっと可愛いこと出来ればいいのに』とか思ったりするけど、でもそれも楽しい。



空太のことを考えるだけで幸せ



自分がこんな風になるなんて思ってもみなかった。


空太は10年前からわたしのことが好きだったっていってくれた。

空太もこんな風にわたしのこと考えて幸せになってくれてるのかな。

それとも辛かったり苦しかったりしたのかな。


恋が楽しいだけのものじゃないって知ってる。・・・・・漫画やテレビでだけど。

10年間、空太はどんな想いでいてくれたんだろう。

自分の気持ちに気づいてまだ2ヶ月も経ってないのに、すっごく長く感じる。

10年なんて想像もつかない。

・・・・・・・・今日こそ伝えなくちゃ。

これ以上、空太を待たせちゃだめだ。



とりあえず、まずは調理室の掃除から!




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





食器を棚から全部出して掃除していく。

施設の大掃除は子供達と職員全員で行うが、調理室は包丁やコンロ等危ないものも多いため大人のみで掃除を行う。

今、ここで作業をしているのは私と華穂様だけだ。

もくもくと作業していると、突然華穂様が口を開いた。



「唯さん、お菓子はいつ渡すの?」


ガチャンッ


思わず手に持っていたグラスを落としてしまった。

幸い作業台の上に落ちたので、大した高さもなく割れずに済んだ。

慌てて並べ直す。



「ご、ごめん。驚かす気はなかったんだけど・・・・」


「いえ、・・・・・・・・・・宅急便・・・ではいけませんよね。」



自分で言いながらもダメなことはわかっている。



「うーん、理由があるなら仕方ないけど、直接渡してあげたほうが喜ぶと思うよ。」



ですよね・・・。



「お礼をするのが礼儀だとは思っているのですが、渡すだけのために呼び出すのも家にいくのも違う気がして・・・・・。」


「気持ちが大事っていうし、大丈夫じゃないかな。」


「その気持ちが一番問題なんですが・・・・。」



一応作ったものはいわゆる【好きな子の手作りお菓子】というカテゴリーに入るとは思う。

・・・・・・自分で考えてて恥ずかしくなってきた。

ただし、それが貴重になるのは心が入ってからだと思う。

気持ちがこもっていないものを渡すのに呼び出すのは気がひける。

かといって家まで持って行くほど大層なものじゃない。

言われるままに作ったもののどうしていいか持て余していた。


感謝・・・・じゃ、納得してくれないよなぁ・・・・・。

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