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後半は華穂視点。

最近、華華様はとても可愛くなった。

もともと世界一、いや宇宙一可愛らしいお嬢様だったが、もはや私の目には輝いて見えるくらいに眩しい。



【恋をすると女は綺麗になる】



その言葉を体現しているかのように内側から生き生きしているのがわかった。




「華穂様は、本日はどうお過ごしになられますか?」



日々はあっという間に過ぎ、世間は今日から年末年始の休みに入る。

華穂様も年内のレッスンは終了して次は年明けだ。

しばらくはゆっくり過ごすことができる。



「今日はお菓子作ろうかな。

明日は園に行きたいから、持っていったらみんな喜んでくれるし。」


「園ですか?」



華穂様が育った児童養護施設には3日前にクリスマスプレゼントやケーキを持っていったばかりだ。



「うん、やっぱりこの時期は交代制だけど先生の休みも多くて人手不足になりがちだから手伝いに行こうかなって。

空太も行くって・・・・あ。」



うっかり出てしまった言葉を止めるように華穂様が口に手を当てる。


なるほど。

手伝いに行くのも嘘ではないだろうが、空太に会うことの方がメインのようだ。

お菓子も空太用なのだろう。


わかりやすい華穂様の態度に苦笑する。



空太とはここ最近会えていない。


やはり飲食店はクリスマスシーズンは忙しいらしい。

特に空太の勤める銀鱗軒は、建物もレトロで可愛く雰囲気もいい。さらに美味しいのでクリスマスデートのカップルで大賑わいだろう。

空太はここしばらく休み無しで働いているようだった。


そんな状態なので、両思いにもかかわらずいまだに華穂様の気持ちを伝えられていない空太は、華穂様が返事を伝えやすそうなクリスマスという絶好のイベントを朝から晩まで仕事で終えていた。


もっとも空太がこの時期忙殺されるのは毎年のことのようで、華穂様に落胆した様子はなかったが。

ただちょっとテレビに映る恋人たちを羨ましそうに見ているのが印象的だった。



「明日が楽しみですね。今日はなにを作りますか?」


私が何を指していっているのかわかって、華穂様が顔を赤らめる。


「・・・・・・時期的にスノーボールと生チョコなんかいいんじゃないかな?」


「あぁ、持って行きやすいですし。食べやすいですね。

では、材料はお昼までには準備しておきます。」



こうして今日の華穂様はお菓子作りに明け暮れた。







※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



生地に粘りが出ないようにさっくりと混ぜる。

まだ混ぜているだけなのに砂糖の甘い香りとアーモンドプードルの香ばしい香りによだれが垂れそうになっちゃう。



空太、喜んでくれるかな。



そう考えるだけで顔が勝手ににやけちゃう。


空太に会うのは3週間ぶり。

なんだかすっごく長く感じた。

施設にいた頃は、1ヶ月会えないこともしょっちゅうだったのに。


あ、明日。明日こそ空太にへ、返事を・・・・


そう考えるだけで心臓がバクバク音を立てる。

今からそんなことで明日どうするの!


・・・・・・・・・・思わず力が入って、まとめていた生地が変な風に潰れた。ダメダメ。深呼吸深呼吸。

ああ、でもやっぱり緊張する!!



!?



「な、なに!?唯さん!!??」



なんか唯さんがこっちをじーっと見てた。

なんだか見守られてるような気がするんだけど・・・・・。


「いえ、洗い物などお手伝いすることはございませんか?」


「ううん、だいじょー・・・あっ!」


「どうなさいました?」


「せっかくだから手伝いじゃなくて、唯さんも一緒に作ろうよ。」


「それは構いませんが、理由をお聞きしても?」


「唯さんもお菓子をあげたい人がいるんじゃないかなぁと思って♡」



おぉ、唯さんの頬が面白いくらい引きつってる!



「そういうことでしたら、特にそういう相手はいませんので・・・・・。」


「クリスマスプレゼント素敵だったね!!」



あ、唯さんが口を噤んだ。勝った!!


最近の唯さんは可愛い。

初めて会った時はなんでもできて理想・・・というか同じ人間かどうかすら疑ったけど、最近は素敵な女の子に見える。

もちろん仕事はいつも通り完璧だし、優しくて頼りになるんだけど、難しい顔してたり困った顔してたり、変な表現だけど人間っぽくなった。


特に流と一弥の話を出す、顔がへにゃっと困った顔になるのが可愛くてたまらない。

だってあの冷静沈着な唯さんがどうしていいかわからないような困った顔してるんだよ!

なんか普段守ってもらってるけど、逆に守ってあげたくなるっていうか、とにかく可愛い!!!


唯さんとお喋りしてて、言い負かせる(?)日が来るなんて思ってもみなかった。


私もたくましくなったなって変なところで実感しちゃった。



唯さんが無言でエプロンを身につけている。

やる気になってくれたみたい。



「一弥も流もきっと喜ぶよ。」


「・・・・・・・あくまでお礼ですから。」



ちょっとむくれたような声に笑っちゃう。

ほんとに唯さんは可愛くなった。

流でも一弥でもどっちでもいいからもっと可愛い唯さんを引き出してほしいな。

両思いのバカップル主従。


小話に以前拍手御礼話で掲載していた一弥の話をUPしています。

105の後ですね。

よろしければお目通しください。

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