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熱い身体と柔らかいベッドに挟まれて思う。
「・・・・・・・・・・・重い。」
「あはは・・・・、ごめんねぇ。俺、もう・・・限界・・・・・・」
一弥は力尽きていた。私の上で。
昼間と熱は変わっていないのだ。意識がクリアになっただけで身体はフラフラだったらしい。
「とりあえず退いて。」
「無理・・・指一本動かせない・・・。
せっかく・・・・俺の下に唯ちゃんの・・・冷たくて柔らかい感触があるのにぃ・・・・。」
・・・・・・・・・馬鹿なことを言う気力はあるようだ。
「ちょっと手荒くなるけど文句言わないでね。」
前置きをしてから思いっきり肩と腰を捻って全身で一弥の身体を転がり落とす。
自分より大きなしかも力の抜けきった相手の身体を動かすのだ。
多少手荒くなっても仕方あるまい。
意識がある分、眠っている時と違って手加減不要だ。
仰向けに転がった一弥を見てから掛け布団の端を持つ。
ロールケーキを巻くように布団を巻きつけ一息つく。
・・・・・簀でもないし結んでもいないから簀巻きではないはずだ。
・・・・・・・たぶん。
さて、どうしよう。
一弥は布団に巻かれたまま、転がされたせいか『気持ち悪い』とぼやいている。
指一本も動かせないのに玄関の鍵を閉めるなんて無理だろう。
どうやらまた帰る機会を失ったようだ。
「一弥、眠気は?」
「さっきまで散々寝てたから・・・眠くはないねぇ。・・・動けないけど。」
眠くないけど動けない。
退屈な状況だ。
寝室にはテレビもコンポも何もなかった。
「携帯とってこようか?」
「いらない。」
「何かして欲しいことある?」
「じゃあ」
「あ、公序良俗に反する頼みは却下ね。」
「・・・・・・・・・・・。」
なぜ黙る。何を言おうと思っていた。
「最近の唯ちゃんについて教えてよ。
・・・・・・・・もう、御曹司のところにはいったの?」
「いった。
ちゃんと5日間しっかり仕事してきたよ。」
「・・・・・・・変なことされなかった?」
「・・・・・・・大丈夫。流様は私の思った通りしっかりしたご主人様だったし。」
うん、爆弾発言があったのは業務終了報告の時だから問題ないはずだ。うん。
「なんか・・・間が気になるんだけど。」
「ちょっといろいろ思い出してただけ。普段やらないことだからいろいろ新鮮で楽しかったし。」
「それはそれで・・・・ホッとしていいのか、妬いた方がいいのか・・・・・・。」
なにやらまたブツブツ言っている。
「唯ちゃんってさ・・・・普段プライベートはなにしてんの?」
「プライベートの時間なんてほぼないから・・・・」
そこからは次々に繰り出される質問に答える時間になった。
守秘義務に当たらない部分面白おかしく答えていると、楽しそうに細められていた目がだんだんとろんととけてきた。
「眠くなってきた?」
「うん・・・・。ねえ、唯ちゃん・・・・・手、握ってて・・・・。」
「手?」
「うん。」
・・・・・・・・・・・・・体調不良の時は心細いものだ。
それはわかるが、なんだか一弥らしくなさ過ぎてちょっと怖い。
普段の人を食ったような態度も腹が立つが、そちらの方がなんだかホッとする。
「はいはい。握っててあげるからぐっすり眠って早く良くなって。」
ロールケーキ巻きにしている布団を一度剥がして腕を出してやってから、手を握る。
握ってやると一弥はほっとしたようにため息をつき、目をつぶった。
「唯ちゃんがいてくれたら・・・・・すぐに元気になるよ。だから・・・そばにいて・・・。」
もう半分夢の中だ。
私は握った手を撫でてやる。
「そばにいるから。・・・・・・・眠るまでね。」
返事はなかったが、握った手が軽く握り返された。
その後、練習が終わった隼人から連絡があり、私は隼人に看病を代わってもらい帰宅した。
隼人は泊まり込みできるとのことだったので安心して任せられる。
翌朝、一弥から『そばにいるって言ったのに!』と抗議の電話がかかってくるのと、
翌週の週刊誌に『人気サッカー選手、熱愛発覚!!』という記事が載ってちょっとした騒ぎになるのはまた別の話。
・・・・・・・・・・・・・・・ごめん、隼人。君も有名人だってことすっかり忘れてたよ。
いつもの更新時間過ぎたので、『家に帰ってからゆっくり書くかー』と帰宅したらまさかの接続障害!!
2日連続更新なしすみませんorz
活動報告にも書きましたが、昨日の朝拍手御礼話交換しています。
よろしければお目通しください。




