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2度目に呼ばれた名前で、これが現実だということを突きつけられる。

一気に顔が赤くなるのを感じる。のぼせて倒れないのが不思議なくらいだ。

むしろいっそ倒れたい・・・・・・・!!



「お前が執事の仕事を続けたいならそれでも構わない。

俺が仕事終わりに迎えに行こう。朝も送って行ってやる。」



もう流の中では結婚することになっている!!



「待ってください、流様っ!私は結婚するとは一言も・・・・っ!」



目に見えてわかるほどに流がしゅんとする。

なんだか流の体に犬の耳と尻尾が生えて、それが思いっきり垂れている幻想が見える。



「・・・・・俺の何処が不満だ?気になることがあるなら遠慮なく言え。」



うっ・・・捨てられた子犬のような目をしている。

なんだか私がいじめているような気になってきた。



「流様に不満があるとかではなく、突然結婚と言われましても・・・・・。」


「では、突然でなければいいのか?

お前が望むなら父親に殴られに行ってやってもいい。」



絶対やめてくださいっ!!



・・・・・・ゲームの記憶なんてなければよかった。

わかってしまう。流の本気が。嘘もお世辞も言わない性格が。

知らなければ冗談だと、からかわれてるだけだと思えたのに。


言葉が出てこない。

何故だか元彼に言った『今は執事を頑張りたいから誰とも付き合わない』という言葉が言えない。

あの頃と気持ちは変わっていないはずなのに。



流が珍しく困ったような顔で笑っている。



「そんな顔をするな。・・・・・帰したくなくなる。」



・・・・・私はどんな顔をしているんだろう。恥ずかしさで顔が赤くなる。



「赤くなった顔もいいな。

執事をしている時のお前も好きだが、感情のままに振る舞う方がずっといい。

俺の前ではそのままでいろ。」



ちらりと一弥の顔が頭をかすめる。

同じように私を求めているのに一弥と流が見ている私は全然違う。


一弥は執事を。

流は平岡唯を。


頑張って作り上げてきた自分と本来の自分。

どちらを認められる方が私が嬉しいのだろう。



「そろそろ出るぞ。

あまり遅くなると華穂がうるさい。」



私は黙って部屋に荷物を取りに行った。










車が高良田邸の玄関の前に止まると、中から華穂様が飛び出してきた。



「おかえりなさい!唯さん!!」



慌てて車をおりて華穂様の方に向う。



「ただいま戻りました。わざわざ出迎えていただき申し訳ございません。」


「え、何!?唯さんかわいー♡」



今日はもう流のところから戻ったらそのまま休んでいいということだったので、昼間流に買ってもらったままの姿で帰ってきていた。



「なぁに、これ流が選んだの?センスいいね。」


「だろう。」


遅れて車から降りてきた流が私の後ろで自慢げに笑う。

いや、コーディネートしたのは流じゃないし。


「5日間お疲れ様。流に意地悪されたり我が儘言われたりしなかった?」


「はい。とてもよくしていただきました。」


「5日前と言いお前は俺のことをなんだと思っている。大事な女にそんなことをするわけがないだろう。」



流の言葉に華穂様の目が丸くなる。私の目も。

りゅ、流・・・・・・いったい何を・・・・・・・・・。



「華穂、お前との婚約は解消する。


俺はこいつと結婚することにした。悪いな。」



なんでここで言うっ!?

華穂様は鳩が豆鉄砲を食らった顔ですっかり固まってしまっている。



「流様!私はまだ了承していません!!」



「流だ。婚約者なのだから敬称はいらん。」



あぁ、相変わらず人の話を聞かない!!!



「私は婚約したつもりはっ」



「はい、ストーップ。」



噛み合わない会話にストップを掛けたのは華穂様だった。



「流は相変わらず人の話聞かないよね。

唯さんもそれはわかってるでしょ?

婚約した覚えがないのにわたしに婚約破棄の宣言するくらいなんだから。


流、唯さん送ってくれてありがと。

今日はもう遅いし、婚約云々の話はまた今度ね。」


「わかった。」



・・・・・・確かに華穂様の言う通りだ。

思い込みの激しい流がこの場で納得するとは思えない。

流も返事をしているし、ここは引くしかない。



「では、俺はこれで帰る。

5日間ご苦労だった。今日はゆっくり休め。」


「こちらこそありがとうございました。気をつけてお帰りくださいませ。」



なんだかモヤモヤしたものが残るが、礼儀として頭を下げる。



「うわっ!!」



その瞬間、急に引き寄せられて体が傾ぐ。

そのまま抱き寄せられて、気づけば手首に口付けられていた。



「俺の家の鍵はそのまま預けておく。

いつでも来い。待っている。」


「い、行きませんっ!」



預けておくって、それはもともと私の体だ!


私の言葉に流がクスリと笑う。



「同じ人物の前で違う相手に同じことを言うことになるとは、人生とはおかしなものだな。



すぐにお前から結婚したいと言い出すようにしてやろう。


楽しみにしていろ。



唯。」






ブックマーク、評価、拍手コメント、たくさん頂きましてありがとうございます!

とっても嬉しいです。


昨日の予告通り、拍手御礼話の交換と小話のUP完了しております。

今回の御礼話も掲載期間短めの予定(あくまで予定)ですので、

よろしければお早めにお目通しくださいませ。

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