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ちょっと短めです。

一弥は無表情だった。

先日程までの不機嫌さもいつもの軽薄さもなく、しかし昏く虚ろでもない。

真顔のままただじっとこちらを見つめてくる。



「・・・・・・前にも言った通り、俺の望みは綺麗なままの唯ちゃんを手に入れることだよ。」



「・・・・・・・あなたの言う “手に入れる” は何を指すの?


私の体が欲しい?

この体にそんな価値がないのは今まで遊んできたあなたなら見てわかるでしょう?


それとも永久就職したら満足?

心のない結婚なんて何の意味があるの?

私との結婚生活を描ける?私はあなたとの結婚生活を思い浮かべることが一切できない。

結婚なんて紙切れ一枚、法律で縛ったところで何の意味があるの。

心変わりすれば慰謝料払って離婚するかされるかするだけでしょう?


首輪でもつけて24時間拘束しておく?

ペットみたいに室内飼いしてくれるのかしら?

それとも昆虫採集みたいに動かない私を何処かにピンでとめておく?」



「俺は・・・・・・」



口を開いたものの続く言葉はなかった。



「私の勝手な勘違いだったらごめんなさい。


あなたが執着してる・・・・手に入れたいのは “執事の私” じゃないの?

体を手に入れても結婚しても満足なんてしないはず。

“執事の私” なんてものは主人の側にいる時しか存在しない。

主人から離れたらただの“平岡 唯”が残るだけ。

そんなものに興味ないでしょう?


あなたの望むものは幻と一緒。決して手に入らない。そんなものを追うのはやめなさい。」



相変わらず、一弥の表情は動かない。



「もし、どうしても “執事の私” が欲しいなら、私の “主人” になればいい。

華穂様に私が不要になったら、考えてあげる。

ただし、どんな状況になっても今のあなたを私が主人として選ぶことはない。

今のあなたは私の主人として認めるに足らない。


執事を・・・・違うな、女を馬鹿にしている人間に仕えたりしない。

自分でも言ってた通り、確かにあなたの顔も声も身体も文句のつけようがない。

だからって、そんなものに惑わされる女ばかりじゃない。

そして、私が選ぶ主人にそんなものは必要ない。

華穂様や裕一郎様がどんな外見をしていようが私は喜んでお仕えする。

流様にだって女としてではなく執事として仕事をするだけ。


中身を磨いて私を心酔させるくらいの主人になってみなさい。」



バッグを持って立ち上がる。



「いいお店を教えてくれたから、お礼に今回は私がおごる。じゃあ、またね。」



そう一方的に告げて、外に出た。








大通りに出てタクシーを止める。

後部座席に座った途端、ずるずるとシートにもたれかかった。


言ってしまった。


体の横に投げ出されている手がかすかに震えている。


間違ったことは言ってない・・・・・・と、思う。

ただ、『言ってよかったのか』という疑問は残る。


一弥はどう出るだろうか。

私が考えた一弥の執着は正解だっただろうか。

正解だったとして、それを指摘されて執着が切れるのか、それとも逆上するのか。

・・・・・・逆上した場合、その行動の行く先は私だろうか。

それとも以前のように周りを巻き込んだものになるのか。


変わってくれれば・・・・と願う。

馬鹿にされた、侮られたと私に対して怒り奮起して、心の闇を払拭して欲しい。

・・・・私ごときにそんな力はないだろうけど、それでもちょっとだけでも努力をしてくれれば。



“またね”



一弥は次の連絡を受け取ってくれるだろうか。

突き離す形になってしまったが、今はまだ一弥から離れるわけにはいかない。


付かず離れず見守り続ける。


次はどう動くべきか。私は今後に頭を悩ませた。



ここで残された一弥の心情を書きたいんですが、拍手交換したばっかりなんで交換はもう少し後になると思います。

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