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「ということでぇ、恩人の娘さんであり、息子の想い人である華穂さんにはたぁっぷり恩返ししないといけないと思って、今日はお呼びしたのぉ。」


ポンっと隼人母が手を叩いたのと同時に、ガラガラ ピシャッという戸が開いて閉まる音と、廊下をドタドタと走る音が聞こえてきた。


「すすすすすいません!遅くなりましたっ」


すごい勢いで襖を開けた隼人が飛び込んできた。


「おかえりなさぁい。」


「隼人くん、お邪魔してます。」


よほど急いできたのか、座ると同時に母が出してくれたお茶を一気に飲み干した。


「はぁ〜、生き返る・・・・・。

みんなこの部屋にいるってことはもう選んでもらったの?」


「まだよぉ。これから。」


「え、じゃあ俺がいない間何して・・・・・」


そこで机の上に置かれたものに気がつき、ぎょっと目を見開いた。


「ななななななななんで、そっそれがこんなところに!!」


「そりゃあ、可愛い我が子自慢のため?」


「いいから!そんなことしなくって!!!」


「相変わらず、隼人くんは照れ屋さんだね。とっても可愛かったよ?」


華穂様の言葉に隼人がどんどん赤くなっていく。


「特にこの写真とか♡」


華穂様が選んだページにはフリフリのピンクのニットを着て白いスカートをはいた5歳くらいの隼人が写っていた。


赤くなっていた隼人が今度は白くなってうな垂れる。

・・・・・・・華穂様は実はSなのだろうか。


「こうなるのが嫌だったから家に帰ってきたのにぃ。」


哀れ隼人。ゲームの強制力を恨め。


「わたしどぉしても女の子が欲しくってぇ。

隼人、わたしにそっくりだから女装しても似合うかもって思って着せてみたらぴったりだったのよねぇ。そこからハマっちゃって。」


女装写真は一枚ではなく小学校低学年くらいまであった。

幼い頃はノリノリで女の子っぽいポーズで写真に収まっていた隼人が、大きくなるにつれて恥ずかしがっていくのが面白い。

そして可愛い!どこからどう見ても美少女がモジモジしているようにしか見えない。

・・・・・・・・こっそり写真撮って帰れないかな。



「ねぇねぇ、これとかすっごく可愛いでしょぉ♡」


レモンイエローのニットワンピースを着た隼人が同じ色のヘアバンドをつけて女の子座りをしたまま泣いている。やばい!きゅんきゅんする!!リアル男の娘!!


「すごーい!可愛い!!」


華穂様の歓声に項垂れていた隼人がガバリと動き、机の上からアルバムを奪い去った。


「もぉ、お終いです!!そもそも今日はこんなの見せるために来てもらったんじゃないだろ!?」


「いいじゃなぁい。時間はたっぷりあるんだしぃ。」


「隼人くん、わたしも見たい!!」


「かっかかかか華穂さんのお願いでもダメです!

ほら、母さん!!早く本題!!!」


「しょうがないわねぇ。」


耳まで真っ赤になっている息子を楽しそうに見てから、隼人母が立ち上がる。


「みんな、こっちの部屋にいらっしゃぁい。」





「わぁ!!」


部屋の中を見て華穂様が驚きの声を上げた。

部屋の中には色とりどりの毛糸とそれを用いて作られたセーターやマフラー、編みぐるみなどが所狭しと並べられている。


「ごめんなさいねぇ。こぉんなに沢山あるから、持っていくよりも来てもらったほうがいいとおもってぇ。」


「これ、全部隼人くんのお母さんが?」


「そうよぉ。わたし、お家でもできる仕事をって思って、ニット作家をしているのぉ。

今日は好きなだけ持って帰ってちょうだいね。」


「えぇぇぇえぇ!?いや、さすがにそれはちょっと・・・・・」


「いいのよぉ〜。

この辺りのものは趣味で作ったものだしぃ、家に入り切れなくなっちゃうからぁ。

リクエストがあればお好みのもの作るわよぉ。」


「華穂さん、唯さんも好きなの持っていってください。

母さん、作るのばっかり好きで売るの苦手だから作品ばっかりどんどん増えちゃって。

勇人が販売の手伝いしてるんスけど、捌ききれないってボヤいてたんで。」


え?

私も頂いていいんですか??


隼人母の作品のクオリティかなり高い。

しかも可愛い。

セーター類は長身の私には似合わないが、小さくて華奢な華穂様が着れば、それはそれは愛らしくなるだろう。

自分用を選ぶという名目で堂々と物色して、華穂様に似合うものを探せるかもしれない。


「華穂おねーちゃん、これ雛とお揃いなの。」


雛ちゃんが赤いノルディック柄の手袋を持ってくる。


「あらぁ、お揃いでいいわねぇ、雛。

そぉだ!みんなで華穂さんに似合うものを選びましょう!

唯さんも手伝ってねぇ。

華穂さんは待っててくれてもいいし、唯さんに似合うの選んでくれてもいいわよぉ〜。」


「「はーい!」」


雛ちゃんとふたり、元気な返事をして母公認の下、華穂様にあうアイテムを探していく。


華穂様は突然、隼人母の味方に回った私に驚いてポカンとその様子を口を開けて見ていた。


「華穂さんも早く探さないと、唯さんの分いいのなくなっちゃいますよ?」


自然に話しかける隼人の姿に嬉しくなる。

初めて会った時と比べると成長したなぁと感じる。


「隼人も早く探しなさぁい。好きな子の服を選ぶチャンスなんて滅多にないんだからぁ。」


「かかかかか母さん!!」


成長したけど、隼人らしさも失われてなくていい感じだ。

子供の成長を見るようで嬉しい。


最近は華穂様の成長を喜ぶことも多いが、攻略対象者たちの変化に嬉しくなることも増えた。

流は丸くなったし、宗純も自分の悩みに向き合っている、空太は華穂様にしっかりアピールする度胸がついたみたいだ。

秀介はまだだけど、ストーリー通りに行けば大丈夫なはずだ。

・・・・・・・・・マイナス成長を続ける一弥以外は。


昏い瞳で嗤う一弥の顔を、頭を振って思考から追い出す。

一弥への対応方針は決めたはずだ。迷ってはいけない。


それに華穂様の洋服を選ぶなんて楽しい時間を、そんな昏い思考に占拠されたくない!

私は再び手にとったセーターを華穂様が着ていることを想像して、頭の中を楽しい状態に切り替えた。

華穂に関しては唯は変態かもしれないとおもう今日この頃。


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