1
R15・残酷描写は念のため。タグは随時追加します。
その人が視界に入った瞬間、胸がドキドキと高鳴った。
これが運命だと思った。
※※※※※※※※※
目の前のテーブルに甘い香りのする紅茶を置く。
「ありがとう・・・ございます。」
緊張しているのだろう。少しぎこちなくお礼を言いカップを口に運ばれる。
一口のみ、『ほぅっ』と微かに微笑みながら吐息をつく姿をみて私の口にも笑みが浮かんだ。
2時間前--------------------
「失礼いたします。」
扉を開けて中に入る。
ソファーに小さくなって不安そうに腰掛ける姿を見た瞬間、私は思い出した。
・・・・・・・・・・・・彼女は恋愛ゲーム『マイスウィートレディ』の主人公・宮野華穂であると。
『マイスウィートレディ』
おそらく某有名映画からイメージしてタイトルをつけたであろうその作品は、一般人として育った主人公が立派なレディになるべく教養を積み、成長していく中で素敵な男性たちと出会い恋に落ちるというものだ。
中学生でたった一人の肉親である母を亡くし、養護施設で育った主人公。
彼女が23歳の時に巨大財閥グループの社長が父だと名乗り出る。
そこから彼女の生活は一転。財閥令嬢として淑女教育を始めることになる。
・・・・・・・・・今、自分が見ている光景はその冒頭シーンである。
ゲーム内に転生。
そういえば『マイスウィートレディ』でどハマりして遊んでいた頃、その手のネット小説をいくつも読んだ気がする。
自分が前世でどんな人物だったか、どんな死に方をしたのかはさっぱり思い出せないが、何故だか私には『ここはゲームの世界だ』という確信があった。
固まっている私を不審に思ったのか、彼女の正面に座る人物が口を開く。
「どうした?早く入ってきなさい。」
「失礼いたしました。」
私は一度礼をして室内に入り、彼女の父であり私の雇い主でもある高良田 裕一郎様の腰掛けるソファーの後ろに立つ。
「彼女は平岡 唯さん。これから華穂の執事としてそばにいてもらう。何かわからないことがあれば、彼女に聞きなさい。」
裕一郎様の紹介に合わせて、私は深く礼をする。
「はじめまして。華穂お嬢様。これからお嬢様の執事として、誠心誠意務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願い致します。」
「・・・・・・・執事?」
ただでさえ大きな目をさらに丸くして驚くお嬢様に、私はにこりと微笑みかける。
これが私とお嬢様のはじめての出会いだった。
はじめまして。
初投稿になりますので目に余るところがあるかと思いますが、生暖かく見守っていただけると嬉しいです。
誤字脱字報告歓迎です!!