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アカトキヴァンシュ-GUN OPERATOR GIRL-  作者: 久マサル
三章.グロック17と朝宮ついり
9/30

7話

レースのカットソーにミニスカートという涼しげな装いをしている梓は朝宮との待ち合わせ場所である駅前に立っている。

9月に入ったとはいえ、駅前の通りを歩く人達の服装も薄着が多い。

「伊賀さん、お待たせ。」

梓が声が聞こえた方に振り向くと、シフォンプリーツのチュニックに秋を意識した暖色系のキュロットスカートを着た朝宮がいる。

「ううん、待ってないよ朝宮さん。おはよう♪」

「おはよう、伊賀さん♪それで、どこに連れていってくれるの?」

「そんなに遠くないよ。ほら、目の前に大きな白い建物があるじゃん… あそこ。」

梓が指を指している建物は駅近のショッピングモール。

「… ここに、来たことあるような気がする。」

「まぁ、こんなショッピングモールなんてどこにでもあるから、デジャブだよ。それより、早く行こう。」

白い建物に向かって歩く2人。

「えっ、うん。どんなお店があるの?」

「いろいろあるよ、雑貨屋さんに、服屋さん、映画館とか… 」

「映画館って… 映像を見る施設で合ってるよね?」

「えっ、そうだよ。映画館に行ったことないの?」

当たり前過ぎることを聞かれ、意表を突かれる梓。

「ううん、映画自体あんまり見る機会がなくて… 」

「じゃあ、最初は映画見よっか♪」

照明が暗く、できたてのポップコーン独特の香ばしい匂いが漂う劇場前で上映スケジュールを確認する梓と朝宮。

「朝宮さん、何か見たいやつある?」

「う〜ん… タイトルだけで選んだんだけど

『やはり、彼氏彼女のラブコメ事情は間違っている』が面白そう。」

「私、この予告見たことあるけど良さげだったよ。 これにする?」

「うん。」

映画本編の前に流れる、ハンディカメラを被った男とハトランプを被った男の逮捕劇をまじまじと見る朝宮の姿を見て、一緒に遊ぼうと誘ったことに満足感を得る梓。

「朝宮さん、面白かった?」

「うん、友達が居ない同志だからこその掛け合いが良かった♪」

2人はショッピングモール内のフードコートで昼食のハンバーガーを食べながら談笑している。

「あれ? 朝宮さんあんまりハンバーガー好きじゃなかった?」

朝宮の食が進まないことを気にする梓。

「ううん、これはこれで美味しいけどなんって言えばいいのかな?… なんか、作られた味がする。」

「?… まぁ、作りたてだしね…」

自分自身でも合点のいかない返事をしてしまった梓が続ける。

「まだ、日本の味に慣れてないから変に感じるとか?」

「きっと、そうだよね。私、好き嫌い少ないから直ぐに慣れると思う。」

「そういえば、聞きたかったんだけど、どこの国に住んでいたの?」

「えっ、アジアの小さな国だから名前を聞いても分からないと思うよ。一年中、雨が降っていてムシムシしてたところ… 」

「そうなんだ、朝宮さんから見て日本の印象はどんな感じ?」

「比較的治安が良くて、ちゃんと社会のルールを守っている人達が多いってイメージかな。あと、人が大勢いるなって思った。」


ーーーーーー


ショッピングモール内のバックヤードにある会議室で黒いセーラー服を纏った1人の少女が、少女自身の父親と同じくらいの年齢のモールマネージャー2人を相手に警備のプランニングをしている。

「当施設の警備状況に関する報告書を拝見させて頂きましたが、施設の規模に対して警備員の数が明らかに少ない印象を持ちました。更に、防犯用に常備されている備品についても意見があります。」

モールマネージャー達に淡々と説明している

宮之城(みやのぎ)玲香(れいか)はまるで3Dプリンターで印刷されたような端正な顔立ちと長い黒髪から硬質な雰囲気を放っている。

「はぁ… と言いますと?」

自分の娘と同い年くらいの玲香に押され気味のモールマネージャーが問う。

「現在、常備されている物は暴徒鎮圧用のゴム弾を装填しているショットガンですよね、もし犯人が人質を盾にした場合はどうされるのでしょうか?」

「え〜と… 」

玲香に痛いところを突かれたモールマネージャーは言葉に詰まる。

「ですから、銃の扱いに長けた請負人を私服警備員として雇って頂ければ問題は解決しますよね?」

「しかし、銃を持った請負人がモール内をうろついていてはお客様達の気分を損ねてしまう可能性もあるでしょうし、それにニュースでも請負人絡みの事件をよく目にしますし… 」

「その点に関しては、弊社の方から信頼に値する請負人を派遣させて頂きます。」

「ですが、お高いんでしょう?」

「はい、多少高い報酬を払って頂きますが、お客様達がより安全にお買い物を楽しまれ、モール全体の売上の向上に繋がる為の投資だと思われるのはいかがでしょうか?」

「しかし、私達に請負人を継続的に雇うだけの経済的な余裕は無くてですね。」

「では、従業員達の給与を削減されてその費用を捻出されてはいかがでしょうか?」

「?! 何を言い出すんだ!なんで、金で動く請負人達(あんなやつら)の為に我が身を削らないといけないんだ!」

玲香の鎌にかかったモールマネージャーが本音を漏らしてしまう。

「私は、請負人達(あんなやつら)の為にではなくお客様達の為に出資出来るか?とお聞きしたつもりなのですが、残念です。それに貴方方のほうが守銭奴なのでは?」

さっきの本音に皮肉を返す玲香 。

「冗談です。今日はこれ以上話し合っても時間の無駄でしょう。これにて失礼します」

玲香は軽く一礼し会議室を後にする。

「そういえば、新学期用のノートを買っていなかった… 」

モール内の文具店を目指し歩く玲香。

1階で行うイベントを各階からでも見れるように吹き抜けになっている空間の近くを玲香が通り過ぎようとした瞬間。

パパァン!パァン!

数発の発砲音が響く。




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