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アカトキヴァンシュ-GUN OPERATOR GIRL-  作者: 久マサル
二章.45ACPと少年
7/30

5話

「くそ、あちぃ〜 虫除けスプレーふったのに蚊に刺されるってどういわけだよ。まったく… 早く交代の時間にならねぇかな… 」

文句を垂れている男は山の中に拠点を構えるPSCロンギヌスの請負人の1人である。

男は敷地の最奥に設置されている監視塔から周囲を見渡せる位置にいる。

「だな、まったく暑すぎだろ。ってか、あのガキ戻ってこねぇーぞ… 」

監視塔から直線にして300m程先にある会社の入口を警備している男がインカムを通して応える。

会社全体の間取りは入口から見て右側に平屋の事務所があり、左側には駐車スペースに止められた数台の車が止まっている。そして、その車達の真後ろには銃や弾薬といった武器が保管されているガレージがある。

見張りの2人を除いた請負人の大半は、仕事が無いのか、アップテンポな曲とクーラーがガンガン掛かっている事務所内でビリヤードに興じている。

「おい、配送車が来たぞ… 」

監視塔の請負人が入口の請負人に伝える。

「分かった、受け取ってさっさと追い返すさ。」

入口前の請負人が返事を返していると白いバンが停車して配送業者の女性が荷物を持って近寄ってくる。

「ったく… 誰の荷物だよ。」

入口でのやり取りに気を取られている監視塔の請負人は背後から忍び寄る配送業者の男性に全く気がつかない。

「?!… んウッ!」

男性は請負人の首をダガーナイフで掻きッ斬る。

「お届け物です… 」

「それどころじゃね!おいどうした!返事しろ!?」

目の前にいる女性を無視して、監視塔の請負人に問いかける入口の請負人。

「… ?!」

パパパシュ… ドサッ!

女性が取り出した消音装置(サプレッサー)付のマシンピストル

【ベレッタM93R】に撃たれ請負人は倒れる。

「おい… どうした?」

インカム越しに異変を感じ取った、事務所内に居る請負人の1人が気の抜けた問いかけをする。

パリーン!コロン、コロン…

「あぁん?!」

バン!キィーン!!

爆発した閃光弾によって、事務所内は鋭い光と甲高い音に包まれる。

「くそ…目が!目が…」

「襲撃?!…敵はどこだ」

頭の思考に、身体の動きが全く伴ってなくふらついている請負人達。

パリーン!

配送業者のもう1人の男性が事務所の屋根から懸垂降下し、なかに突入する。

パァパァン!パパァン!

突入した男性は手にしているサブマシンガン

【HK MP5K】でふらついている頭を次から次へと撃ち抜いていく。

「なんの騒ぎだ!」

ガレージからアサルトライフルやらサブマシンガンを持った請負人達がぞろぞろと出てくるが…

パシュン!パシュ!パシュン!

「ッ?! 狙撃か!」

監視塔の男性が消音装置付のアサルトカービン

【M4カービン】で車に隠れる請負人達を狙い打つ。

パァン!パパァン!パラララ!

入口前の女性は配送車から取り出したライトマシンガン【ミニミ軽機関銃】をブッ放している。

ミニミに備え付けている二脚をボンネットの上で展開し、ガレージに向けて5.56mmNATO弾を更にバラ撒く。

「おい!どうすんだよ!」

請負人達は、狙撃に、制圧射撃と八方塞がりの状態にたじろぐ。

「オラァ!」

パシュン!

「?!… 」

コト、コロン…コロン。

請負人の1人が監視塔に向けて、手榴弾を投げこもうとしたが、持っていた右腕を撃たれ手榴弾は請負人達の足元に落ちる。

…ドォン!!… ボッ!ドン!ボッ… ドカーン!

手榴弾の爆発によって車達が連鎖的に炎上し、爆発していく。

爆発の爆風に大きく揺さぶられた1台の車がガレージに激突する。

ドォォーン!!

一段と大きな轟音が空間を揺らすのと同時にガソリンと火薬が混ざった焦げ臭いが周囲に広がる。

「ご苦労様です。あとは金目当ての強盗犯による犯行に見えるように捏造しといて下さい。」

ユリカは装着しているインカムを通して配送業者達を労う。

梓とユリカを乗せたオスプレイは、東京湾に浮かぶオカサトミヤ所有のメガフロートを目指している。

オスプレイ内部のキャビネット前方にユリカと梓が座っており、後方にはクラウンが鎮座している。

「ユリカさん、今回の標的はどんなやつらだったの?」

少年を送り込んできた相手についてユリカに聞く梓。

「ん… 多分だけど、今回の標的はクシャトリヤのメンバーだったと思うよ。」

一先ず、応えたユリカはさらに考え込む様子を見せている。

「… クシャトリヤって何?」

「あれ?言ってなかったっけ… クシャトリヤっていうのは世界的な規模の過激武力集団というか、ある特定の概念を持って行動している人達の総称っていう表現が正しいかな。」

「ある特定の概念?」

「彼らは、人の歴史は大なり小なり争いを積み重ねて出来たものだから強い力こそ正しいって考えを持っているみたい。」

「具体的にどう危険なの?」

「ほら、お金って力の象徴じゃない。だから彼らはお金が貰えるなら何でもしちゃうわけ… テロ組織と違って明確な動機がない分、尚更、厄介な存在で世界の大きな問題の1つ。」

ユリカはさらに続ける。

「… で、今回の標的は、普段はお金さえ払えば殺しから人身売買までする国からの認可を受けていない違法PSCで、今回はテロ組織からでも依頼を受けたとか… 」

相手のことを淡々と分析するユリカ。

「ユリカさんって世界中のテロ組織から憎まれてそうだもんね…」

命を狙われることに慣れ、危機感が薄れているユリカに対して含みのある返事をする梓。

「そうそう、憎まれ過ぎてるからそろそろ売りたいんだけど、誰も買ってくれないんだよ。これが…」

自虐ネタを言い、悲壮感を垂れ流すユリカ。

オスプレイが降り立ったメガフロートにはオカサトミヤが所有している複数の軍用機を整備する為のハンガーが建ち並んでいる。

「ユリカさん、今日は本当にごめんなさい。次の仕事で挽回するから… 」

「うん、ありがとう。梓の次の仕事は… 残りの夏休みを梓自身の時間として有意義に使うことです♪」

「え?」

「請負人にもたまには休息が必要だから休んで。っか、休め!これは命令。ふふっ… 」

梓は今日のミスを取り戻そうと躍起になるが、それを宥め、諭すユリカ。

「ありがとう…じゃあ、帰るね。」

メガフロートと都内を結ぶバスに乗った梓はユリカに手を振る。

「今日の私迷惑かけてばっかりだったな… 」

バスに揺られて眠くなった梓はいつの間にか寝てしまう。

「今日は私の誕生日…

共働きで普段は一緒に過ごせる時間があまり無いお母さんとお父さんと買い物して…御飯を食べて…笑って。

私の心が楽しい!嬉しい!って踊っているのがよく分かる。」

ドォォーン!

「え、何?爆発!?

そう… あの爆発がお母さんとお父さんを…

空からキラキラしたモノが降ってきてる… …

キラキラした物?…

それはガラスの雨…

暗い、苦しい…

先ず、お母さんが私の上に覆い被さって…

その上にお父さんが覆い被さってたから息苦しかった時の感覚は今でも覚えてる…

そのあとは、多くの人の泣き叫ぶ声が暗闇の中でずっと聞こえてたのを覚えてる… そう… 私は覚えてる!」

「っは?!」

夢から覚めた梓は冷や汗を大量にかいている。

梓がふと、窓の外の景色を見るとライトアップされた東京スカイツリーが目にはいる。

「私は絶対に犯罪者達(あいつら)を許さない」

スカイツリーに鋭い視線を向けながら、自分自身に言い聞かせるように呟く梓。



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