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アカトキヴァンシュ-GUN OPERATOR GIRL-  作者: 久マサル
七章.玲香とベレッタ
27/30

24話

バタン…

「ただいま。」

自宅のマンションに帰ってきた玲香は玄関で脱いだローファーをきちっと揃えると、玄関付近の両サイドにある洋室を通り過ぎ、奥にあるダイニングルームに足を進める。

「… !?」

玲香がダイニングルームのドアノブに手を掛けようとした瞬間、キッチンの方から金属特有のけたたましい音がする。

玲香はドアノブに掛けようとしていた右手を制服のスカートの下に隠れるレッグホルスターへと動かす。

「玲香ちゃん!? っていうか、なんで銃を向けてるの?!!」

勢い良く開いたドアに驚いた梓はラフな部屋着の上にエプロンを着けたまま硬直している。

「はぁ… それはこっちの台詞よ。なんで、梓がここに居るのよ?」

音の正体が判明し、一安心した玲香は【HK USP】を下ろす。

「茅花ちゃんが暫くは、玲香ちゃんの家に居ると良いよって言ってくれたから… というか、玄関に私の靴無かった?」

梓は応えながら床に落ちているお玉を手にする。

「無かったわよ… 茅花が隠して帰って行ったのね。」

玲香はやれやれといった表情を見せる。

「話は変わるけど、玲香ちゃん、お腹空いてない?」

「そうね、今はあまり空いてないわ… この匂いは煮物かしら?」

玲香が目を向けた腕時計の秒針は6時30分頃を指している。

「肉じゃがだよ。そっか、じゃあ晩ごはんはもう少しあとにしよう。ふ〜」

梓は一呼吸、置く。

「じゃあ、お風呂にする? それとも… わ・た・し?」

梓は上目遣いで玲香に詰め寄る。

「?!! そうね… じゃあ…」

玲香は梓との距離を更に詰めていく。

「えっ、玲香ちゃん?」

玲香の行動にたじろく梓は壁側に追い詰められていく。

ドン…

「一緒にお風呂に入るっていうのはどう?」

玲香は梓の目をじっと見つめる。

「うぇ!?… えっ?」

梓は玲香の予想外なリアクションに目が泳いでいる。

「ふふ、梓が振ってきたのに、あなた自身がどぎまぎしてどうするのよ。」

玲香は体勢を戻し、いつもの距離感を保つ。

「だって… まさか、玲香ちゃんが乗ってくるとは思わなかったから。」

梓の顔はまだ赤い。

「梓、茅花にかなり毒されてきたわね。」

玲香が冗談交じりに微笑む。

「玲香ちゃんの髪って本当に長いよね。手入れ大変じゃない?」

浴槽に浸かり、半身浴をしている梓の声がほのかに響く。

「慣れればそうでもないわよ。」

玲香は肩甲骨の辺りまで伸びる黒髪にシャンプーを丁寧に馴染ませていく。

「そっか、でも短いと洗う時間も乾かす時間も短くて楽チンだよ。」

梓は浴槽の縁に左頬を乗せた体勢で応える。

「私の大事な一部だし、そう簡単には切れないわよ…」

「そうだよね、髪の短い玲香ちゃんとか想像出来ないし、それに、私に長髪は似合わないよね。」

梓は玲香の長髪に再度、視線を向ける。

「そうね… 梓、答えにくい事なら答えなくて良いんだけど、その傷跡って…」

玲香の視線がナチュラルメイクが落ちた梓の右頬に向かう。

「これね、玲香ちゃんも知っていると思うけどあの事件の時に出来た傷なの… 治すことも出来るみたいだけど、お父さんとお母さんのことを忘れようとしているみたいになっちゃうから敢えて残しているの…」

梓は傷跡に右手を当てて、悲しげな表情を見せる。

「ごめんなさい、聞くべきじゃなかったわね。」

玲香は、シャワーに頭を突っ込んでシャンプーを洗い落としていく。

「そんなことないよ、友達になったうえで私のことを聞いてくれて嬉しいよ。」

「ありがとう。その… 私も… 梓に聞いてもらいたいことがあるのだけれど良いかしら?」

玲香は真っ直ぐと梓の目を見る。

「実は私、着痩せするタイプなの。」

浴室のドアを開け、2人の前に現れた茅花が玲香の口調を真似る。

「茅花!?」

「… うんうん、茅花ちゃんの言う通りで私も思った。」

茅花の登場に驚く玲香をよそに、梓は茅花の言い分に迎合している。

「ですよね〜」

「そうだ、茅花ちゃんも肉じゃが食べる?」

「は〜い、食べま〜す♪」

茅花は右手を挙げて快く返事をする。

「頂きます。」

黒い眼鏡を掛けたネグリジェ姿の玲香はダイニングルームの机の前に座り、肉じゃがを頬張る。

「梓さん、美味しいよ。」

茅花の箸が進む。

「久しぶりに作ったから心配だったけど、良かった。」

パステル調のキャミソールとショートパンツに着替えた梓は笑みを浮かべる。

「美味しいわね… 梓、少し話があるのだけれど。」

「玲香ちゃん、ありがとう。話って?」

梓は肉じゃがと一緒に炊きたてのご飯を頬張る。

「梓には、私と茅花が通っている桜華女子の通信教育科に転入してもらうわ。」

「えっ、なんで?」

梓の箸が止まる。

「梓には、暫く私の家に居てほしいのよ。10月の中旬とはいえ、私が学校側に話せば理解を得られるから。」

寝耳に水な梓の様子を見ながらも、玲香は続ける。

「現状、オカサトミヤが不慮の事故を装ったりして、あなたの殺害を企てている可能性が高いからよ。」

「玲香ちゃんや私と違って、梓さんは一請負人だから、そのリスクが高くなるんだよ。」

茅花が玲香の言葉に付け加える。

「… うん。」

梓は玲香と茅花の慎重な口調にただ、返事をする。

「ありがとう、私の方でオカサトミヤと京橋ナギ達の調査を進めていくわ。そのことで早速、明日、京都に向かうわ。」

玲香は梅田から受け取ったメモを梓と茅花の目の前に出す。

「… 玲香ちゃんも気を付けてね。」

梓は呟く。


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