18.5話
「それじゃあ、また着替えとか持ってくるわね。」
「うん、またね。」
茅花は病室を後にする玲香に手を振る。
ガチャン…
「梓にはこの話、秘密にしといてね。か… 」
…
…
コンコン♪
「茅花ちゃん、元気? 」
「梓さん、元気だよ♪ 」
制服姿の梓が病室に訪れる。
「はい、これ。」
「うん? ケーキと紅茶♪ ありがとうございます。」
茅花は梓から朱色の手提げ袋を受け取り開ける。
「いえいえ♪ 紅茶入れるね。」
梓は個室に備え付けられているキッチンにあるやかんでお湯を沸かす。
…
「それでね、朝宮さんの口から綾っていう人と沙也夏っていう人の名前が聞けたの。」
2人はラズベリーやブルーベリーが載ったフルーツタルトを食べながら雑談をしている。
「これは重要な情報だと思うし、玲香ちゃんにも伝えといたほうが良いよね。」
「うん。そういえば、玲香ちゃんは今日来たの? 」
梓はダージリンを一口飲み、茅花に聞く。
「来たよ、梓さんが来る少し前に帰っちゃったけど。」
「そっか、玲香ちゃん忙しいもんね。」
1個のフルーツタルトが残っている白い箱を見つめる。
「… 梓さん、玲香ちゃんが独りでビスマルクの件を片付けようとしているの。」
「えっ? 」
「玲香ちゃんには黙っているように言われたんだけど… このチャンスを逃したくないと思ったから言ってみたんです。」
「チャンス? 」
梓はさらに首を傾げる。
「うん。玲香ちゃんって何でも1人で出来て、直ぐに抱え込んでしまうから梓さんに支えてもらえたらなって思ったから… ダメですか? 」
「えっと、私で良かったら… ううん、力になりたい。」
茅花の誠意に戸惑いながらも梓は応える。
「梓さん、ありがとう… 玲香ちゃんの分は2人で食べちゃえ♪ 居ないのが悪いんだし! 」
普段の調子に戻った茅花の表情はより明るく見える。




