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アカトキヴァンシュ-GUN OPERATOR GIRL-  作者: 久マサル
五章.デザートイーグルと梟
19/30

17話

バン!

玲香が持つアサルトライフル【SCAR-H】のエジェクション・ポートから空薬莢が飛び出す。

「あらかた無力化出来たみたいね… 伊賀さんは無事? 」

玲香は倉庫の壁に身を隠しながら周囲を警戒する。

ガチャン!

「なんとか… 玲香ちゃんは大丈夫そうだね。」

銃撃戦で憔悴した梓は倉庫の壁にもたれるように座り込んで、 アサルトライフル【TAR-21】の弾倉を交換している。

「良かった。茅花の援護に向かうから乗って! 」

玲香は車体に複数の弾痕が残るセルシオを運転し、梓の横に寄せる。

玲香は梓が乗るとアクセルを思いっきり踏み込み、急発進する。

「伊賀さん、グレネード! 」

「うぇ?! 」

梓はビスマルクの拠点を囲う4mの壁に猪突猛進する玲香に驚愕したあと、壁に銃の照準を合わせる。

ポォン… ドォォン!

梓が放ったグレネードをくらった壁は大きく欠損した。

「行くわよ! 」

玲香は自分に言い聞かせるように言い放った後、欠損した箇所に突っ込む。

「あの青いコンテナの山を右に曲がったところだよ。」

梓はPCで茅花の現在地を確認し、玲香をナビゲートする。

「分かったわ。」

玲香は遠心力に耐えつつハンドルをきった。

バタン!

「茅花! 」

アスファルトの上に横たわる茅花を見た、玲香は感情的になり駆け寄る。

「う、ウソ… 茅花ちゃん… 」

梓は玲香の呼び掛けにも応えず、ピクリとも動かない茅花の様子を見てその場で立ち尽くしてしまう。

「… 伊賀さん、気絶しているだけみたいだから大丈夫よ。」

冷静さを取り戻した玲香は茅花の怪我の具合を診ていく。

「足はかすり傷だけみたいね… 」

茅花の足は複数の箇所から出血している。

「左腕は骨折しているかもしれないわ… 茅花、ごめんね。」

玲香は茅花のプレートキャリアを外した後、ナイフを取り出すと下から上へとシャツを切る。

「酷い… 」

梓は茅花の腹部にあるいくつもの青アザに目がいく。

「胸の辺りも赤くなっているから、あばら骨を痛めている可能性もあるわね。」

玲香が触診する。

「う… うう、玲香… ちゃん? 」

痛みで茅花の意識が戻る。

「良かった… 意識がはっきりしてないようだし動かないで。伊賀さん、トランクルームから担架持ってきてくれるかしら。」

「うん… 良かった。」

梓は涙を堪えて、トランクルームを開ける。

「よし。増援が来ないうちに撤退するわ!」

梓と協力し茅花を担架ごと後部座席に乗せた玲香は言葉を強める。

朝日によってほのかに照らされた首都高速湾岸線を傷だらけのセルシオが走っている。

「いてて、玲香ちゃんも梓さんも大変だったみたいだね。」

痛みに耐えながら茅花が呟く。

「ええ、茅花程ではないけれどね。伊賀さん…梓が居なかったら私もただじゃすまなかったわ。ありがとう。」

「えっ、私は何も力になってなかったよ。」

玲香は助手席に座り照れている梓に微笑む。

「何々、私が居ない間に、なに仲良くなっているのよ?」

茅花は梓と玲香の仲が深まっていることに笑みを浮かべる。

「別にいいじゃない。それより、証拠を入手出来なかったわけだし、今後について考えましょう。」

玲香の表情がいつものキリッとした顔つきに戻る。


ーーーーーー


「こ、これだ…頼むから命だけは…」

命乞いをしているビスマルクの請負人は腰を抜かして座り込んでいる。

「そう、ありがとう。」

カ、チッ…

薬物を受け取った京橋はリボルバーのトリガーを引き、シングルアクションの状態を保つ。

「頼む! 見逃してくれ… 」

「ごめんなさい。」

バン!

「18人ね… 」

京橋は自分に言い聞かせるように呟く。

硝煙の臭いが立ち込めるビスマルクの拠点内に京橋がポツンと佇んでいる。

「ナギちゃん、まだその習慣続けてるんだ♪ 」

「カリン…」

黒いロングワンピースを纏っているカリンが音も無く現れる。

「そうよ。他人の死を、人生の重みを忘れない大切なことよ。」

京橋は敵意を込めた視線をカリンに向けながら応える。

「背負いすぎると流石のナギちゃんでも潰れちゃうわよ。」

「貴方の心配には及ばないわ。」

風が吹いていないのに、京橋の長髪の毛先が一瞬、なびく。

「おぉ、怖い♪ でも、ナギちゃん1人じゃあ私に勝てないのは分かってるでしょ。」

カリンは不敵な笑みを浮かべている。

「今回の電気機器の障害は貴方の仕業でしょ? 」

「まぁね。でも、そのおかげで監視カメラに映らなかったでしょ。それに、榛原とか言う請負人の記憶も少しばかり改竄しといたから感謝してよ。」

「物は言いようね… ? 」

遠くからパトカーのサイレンが近付いてくる。

「水入りね… じゃあ、また。」

カリンは言い放つと、空中を舞う砂のように姿を消す。


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