請負人- GUN OPERATOR -
梓は待っていた。
久しぶりに会う友達でも、恋人を待っているわけでもないが落ち着きがない。
「あっちぃ…」
遠目に見えるガラス張りの高層ビルがギラギラと日光を反射し、梓がいる雑居ビル屋上も照り返しがきつく、額から汗が落ちる。
「あぁ~もう!早く終わらせて、冷たい甘いものが食べたい!」
自ら引き受けたとはいえ、今回の依頼をこなせるか不安になる梓。
「はいはい、無駄口叩かない~。目標、距離450m。」
装着しているインカムからユリカの檄が飛ぶと、梓は伏射の体勢になり狙撃銃 【HK417】のグリップポッドを展開し、銃を構える。
―a few minutes ago―<数分前>
「くそ…」
マンションの3階から飛び降りた衝撃を受けたはずの足は何事も無かったかのように地面を蹴り返してくれている。
「おい!止まれ!」
男はどんどん警官2人を引き離し、警官達の視界から消え、雑居ビルが建ち並ぶ路地裏で息を潜める。
快調だった足を見ると大きく腫れているが痛みを感じない男。
…
「こっちにいるぞ!」
「っ!」
梓はHK417に取り付けているスコープを通して、狙撃ポイントである開けたT字路に視線と銃口を向ける。
「…….ふぅ…」
呼吸を整え、集中していく梓。
「…距離440」
小型の無人偵察機(UAV)に映る映像から男の位置を割り出すユリカ。
「…430、…420、…410、…400!」
背を向け走り去っていく男に、瞬時に照準を合わせトリガーを引く梓。
パァン!
発射された7.62mmの弾丸は男の背後から左脇腹を抉り掠めた。
男は弾丸を受けた衝撃で片膝を着く 。
パァン!
すかさず、梓が第2射を放つと、男の頭が飛び散るように転げ落ちた。
…
「はぁ…終わった…終わった…」
自分に言い聞かせるように呟いた梓は、立ち上がり周囲に落ちている2発の空薬莢を拾うと、ブラウスとスカートに着いている土埃をパン!パン!と払う。
男が倒れている方に振り返ると、警官達が近寄り情況を確認している。
「請負人でしょうか?」
「だろうな…守銭奴共が…」
後輩の新人に愚痴をこぼすように応え、哀憐と侮蔑を込めたような冷たい目線で、弾丸が放たれた方角を見つめる警官。
「お疲れ様!無事に終わったことだし、何か奢るよ♪」
「じゃあ…ランチとデザート奢って貰おうかな♪」