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シャワーヘッドから噴出した水が芹の鎖骨で弾け、肌を伝い、体のラインに沿って腹部へと落ちていく。垂直に。そう、垂直に。
その流れ方は、さきほどこじろの背中を洗うときにも見ていた。
やっぱり、小さいんだよね……。
芹は湯船に浸りながら、ため息をついてしまう。視線を下ろせば、波打つ水面を通して、起伏に乏しい自分の胸が一望できた。
「くぅ……」
思わず、歯噛み。
小さいのはやっぱり魅力がない……ん? でも、たけちゃんは幼女が出てくるゲームやってたよね? ていうことは、胸が小さいのはむしろアドバンテージ?
「なにを俯いているのじゃ?」
こじろは芹の隣で、肩まで湯に浸かっていた。
浴槽のサイズはそこそこ大きく、こうして二人で入っていても体を密着させなくてもよかった。
「ううん、なんでもないの」
湯船が波打ち、水音を浴室に響かせる。
「こじろちゃんは……たけちゃんとお風呂、よく入ってるんだね。どんなふうなの?」
「どんな?」
「その……たけちゃんの様子とか……」
芹は太ももをこすり合わせた。
「健はいつもと変わらんぞ? 健は健じゃ」
「体の一部に――ぼっ――目立った変化とかは、ない?」
「……芹はさっきから何を言っておるのじゃ?」
こじろは本当になにも見ていないようだった。
これ以上の追究は自爆するおそれが濃厚。
「な、なんでもないよ……」
笑いながら引き下がる。
こじろちゃんと一緒に入っているときに、たけちゃんはどんな気持ちなんだろう?
芹は頭がぐらぐらと揺れ始めるのを感じた。
幼女と入浴しているときの幼馴染みの姿を想像してしまう。
きっと、たけちゃんのことだから、いつものように冷静なんだろうなぁ。特に恥ずかしがることもなく、外でしているように、こじろちゃんの体に触れてるんだ。それで、ときどきこじろちゃんに洗ってもらったりして――それから――……
途端、芹はすさまじい眠気に襲われた。
「う……」
抗う間もなく、意識が遠のいていく。
眠りに入る間際、遠く、自分を呼ぶこじろの声がした。




