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 毎週月曜日の全校集会で、健は御千髪菊華の姿を再確認することになった。

 体育館に集まった全校生徒たちの視線が、舞台に設けられた演壇に一斉に向けられる。演壇には、菊華が立っていた。

 今の彼女は、この学校の生徒会長としてそこにいる。

 演壇のマイクを通じて、菊華の澄んだ声が体育館の左右のスピーカーから聞こえてくる。スピーチの内容は、学校内外での生徒の生活態度に関する注意だ。

 菊華は笑みを見せず、厳しい表情だ。

 彼女がこの全校集会で彼女がほほ笑んでいるのを、健は見たことがない

 菊華の凛々しい姿に、健の周囲の男子たちも声を潜めて喋り合っている。

「御千髪会長、いつもキレイだよなぁー」

「気品があって、旧家のお嬢様ってのも頷けるな」

「うーん、たしかに美人なんだけど……近づきがたいんだよなぁ」

「それがいいんじゃねぇか。オレはあの人になら踏まれてもいいねっ」

 周りから聞こえてくる男子たちの言葉の一部には、健も同意できた。

 御千髪菊華は間違いなく美人ではあるが、近寄りがたい。全校集会などでの厳しい口調が印象的なせいだ。ただ、生徒会長としては非常に優秀。成績も三年生の中では常にトップと聞いている。

 そんな女子生徒だから、なおさら、昨日の出来事は解せない。健にはどうしても、御千髪菊華と触手の両者を結びつけることができない。

「――わたしからは以上です」

 スピーカーから響いてきた声に、健は顔をあげる。スピーチを終えた菊華が、長い黒髪をひるがえし、壇上から降りようとしていた。

 そのとき、彼女の視線が体育館に集まった生徒たちに向けられた。視線は誰か一人を探すようにさまよい、やがてその誰かへと定められた。

 健は菊華と目が合った気がした。

(会長……僕を見てる?)

 声をかけることもできない距離にいながら、全校生徒の集まった場で、一人を見つけることは可能なのだろうか?

(それに、あの夜の工事現場で居合わせたのが僕だって、御千髪会長は知ってるのか?)

 生徒会長は学校の全員に顔を知られている。しかし、大した役職にも就いていない北川健という一生徒の顔なんて、生徒会長はいちいち把握していないはずだ。

 だが、菊華の高圧的な瞳から、健はあるメッセージを想像した。

 ――昨夜のことは、誰にも吹聴してないでしょうね?

 そう想像したものの、すぐに菊華は視線を外した。そのまま壇上をあとにする。

 どこか解放感を覚えて、健は息を吐いた。

(僕の考えすぎだったかな)

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