009話 『謎の転校生』
転校生登場です。
4/21(水)
ソレイユ(ガリウス)が聖梁学園に赴任してきてから3日が経った。
そんな朝のホームルームで琴美がみんなに嬉しい報告があるという。
それはというと、
「それでは朝のホームルームを始める前に転校生を一人紹介するわね。君、入ってきてちょうだい?」
「はい…」
そしてその転校生は教室に入ってきた。
少年は黒色の腰まで届く長い髪で後ろの首元でゴムで縛っていた。
その中性的な顔は女性と間違われるような感じである。
「それじゃ紹介するわね。彼の名前は『美薙海斗』君よ」
「美薙海斗といいます」
海斗という少年は一度お辞儀をして自己紹介をした。
「海斗くんは大阪の高校から実家の都合で一人だけで転校してきたのよ」
「そういうわけです。これからよろしくお願いします」
「それで席は…あ、辰宮さんの席の隣が開いてるけどいい?」
「はい、構いませんよ」
海斗は真紅をすぐに見た。自己紹介をしていないというのに。
「それじゃ真紅、いいわね?」
「あ、はい」
そして海斗が真紅の隣の席にやってきた。
「僕は海斗といいます。これからよろしく、真紅さん」
「あ…うん。よろしくね美薙くん」
「海斗でいいですよ、真紅さん」
「そう? それじゃ海斗くん」
「はい、よろしくお願いしますね」
「………」
真紅と海斗が仲良く握手を交わしている中、クリスは海斗を見て変な気分になって無言になっていた。
「それじゃホームルームを再開するわね?」
だが、琴美の言葉でクリスは心のモヤが晴れないままホームルームが終了してしまった。
◆◇―――――――――◇◆
それからお昼休みの中庭で真紅、鈴架、クリスの三人は話し合っていた。
「ね、クリス。なんか今日転校してきた海斗くんて優しくてどこか神秘的なものを感じなかったかな?」
真紅が珍しく興味を持ち出してクリス達に話をしていた。
だがクリスは少し考え込むような表情になり、
「…海斗さんですか? わたくしは正直彼を見た時になにかの力を感じましたが…?」
「その転校してきた海斗さんて見た感じはどういう人なの?」
「呼びましたか?」
するといきなり海斗が真紅達の後ろに現れた。
「あ、海斗くん! どうしてここに?」
「いえ、まだ転校してきたばかりですからよくわからないので真紅さんに色々と聞こうと思いまして…」
「そうなの! わかったわ。私が色々案内してあげるわ」
「助かります」
真紅はその普段のお人好しを遺憾なく発揮し海斗のお願いを聞いていた。
「それじゃ二人ともまた後でね!」
そして真紅と海斗は校舎の中へと歩いて行ってしまった。
「あ、うん。お姉ちゃん…なんか海斗さんて不思議な人ですね、クリスさん。…クリスさん?」
「…鈴架ちゃんもそう思いましたか。それがどうもあの方からは不穏な空気を感じるんです。それにわたくし達が気づくまで気配がまったく読めませんでしたし…」
「…まさかガリウスさんがいってた闇の王の手先、なのかな…?」
「いえ…たぶんそれはないと思いますが正体がわからない以上いずれにしても警戒はしといたほうがいいでしょうね…」
「そうですね…でも、だとするとお姉ちゃんは大丈夫かな?」
…鈴架とクリスが心配しているその頃、真紅は海斗と別校舎にいた。
「でもさぁ…海斗くんてなんか関西人って感じしないよね。口調も普通だし…」
「よく言われます。親が二人とも関東の出ですから関西の地に馴染まなかったのでしょうね…」
「そうなんだ…あ、でもなんで海斗くんは一人で引っ越してきたの?」
「親が事故で…」
ドキッ!
「あ! ご…ごめんなさい…」
真紅はそれを聞いた途端、とある過去の事を思い出して胸が少し苦しくなりすぐに海斗に謝った。
「いいですよ。今はよくしてもらっている人もいますから真紅さんは今いったことを気になさらないでください」
「うん。海斗くんて優しいね…」
「そんなことはない…僕なんて…」
それで海斗は俯き少し表情に影ができる。
「…え…なに?」
「あ…。いえ、なんでもありませんよ」
海斗は表情をすぐに直して真紅になんでもないという意思表示をした。
だがその時、突然として地面から何体もの影の魔物が姿を現した。
「ガウゥゥ…」
「影!?(まずいわ!海斗くんがいるから力を使えない…!)とりあえず来た道を戻りましょう…!
あ、後ろにもいるわ! どうしよう…ここは廊下たがら逃げ場かないわ…」
「ガアァッ!」
「キャッ!」
「………」
影は真紅と海斗に襲いかかり真紅は目を瞑ってしまったが海斗は無言。
その時、なにかが飛ぶ音と刺さる音が聞こえてきた。
「ガ…ガ…!?」
ドシャ…、と影の魔物の群れはなにが起きたのかもわからず崩れてしまった。
「え…? なにが起きたの…?」
「わ、わかりません! 彼らは襲ってきたと思ったらすぐに消えてしまいましたから…」
真紅は不思議がり海斗もなにか起こったのか分からないといった感じに答えていた。
「こんなことができるなんて…何者なの?」
「わかりません…だけどまた彼らが出てくるかもしれませんから案内は後でいいですから早く教室に戻りましょう」
「そうね…」
それで真紅と海斗は急いでそのまま教室の方へと戻っていった。
するとクリスが闇の気配を感じたのか真紅達に駆け寄ってきた。
「あ、真紅さん! 大丈夫でしたか? 先程別の校舎から闇の力を感じたのですが…!」
「そのことなんだけれど…さっき影達に襲われたのよ」
「え、本当なのですか?」
「でも海斗くんが一緒にいたから力が使えなかったわ…でもいきなり影達は前触れもなく崩れてしまったの…」
「もしかして…海斗さんが?」
「違うと思うわ。私の後ろにずっといたから…」
「そうですか…。ですがどちらにしても海斗さんには警戒しておいた方がいいですわ! あの方からは不穏な空気を感じますから…」
「不穏な空気…?」
「はい。わたくし達の仲間かも知れませんし敵かもしれません。ですから注意してくださいね?」
「うん、わかったわ。クリス…」
真紅は内心で海斗は敵ではないという確信を持ちながらもクリスの言葉にそう答えていた。
そして今日の授業が終わり部活も終えた真紅と鈴架は帰り道を話をしながら帰っている途中であった…。
帰り途中、鈴架が声を張り上げながら、
「やっぱりなにかおかしいよね、海斗さんて! 影達と出会っても逃げだそうともしなかったなんて…」
「…考えすぎだと思うけどな。クリスも鈴架も。海斗くんは私には悪い人には見えないのよね…」
「甘いわ、お姉ちゃん! もし海斗さんが敵だったとしたらどうするの!?」
「そ…その時は…」
真紅は口を閉ざしてしまった…。だが鈴架が突然声を上げた。
「あぁっ!」
「え、どうしたの鈴架?」
「あそこの神社をみて!」
「“柳神社”のこと…?」
「うん! それでいいからあそこにいる人を見て!」
「…あれって…海斗くん?」
そこには神社の正装を着て庭のお掃除をしている海斗の姿があった。
その姿からは神聖なものが見て取れて真紅はやっぱり敵じゃないと確信を持ち始めた。
「…海斗くんてもしかして住職の息子さんかなんかなのかしら?」
「わからない…でも私達の敵ではないみたいだね、お姉ちゃん」
「うん、闇の力を使ってくる敵が神社にいるわけないものね」
二人がそう話しているが、いきなり空が暗くなり海斗の周りに影の魔物が何体も姿を現した。
「え!」
「うそっ!」
その突然の出来事に二人は驚きの声を上げる。
「もしかして襲われるかもしれない! 助けないと!」
「まって、お姉ちゃん! もしかしたらあいつのところに集まったのかもしれないよ! もう少し様子を見てみよう!」
「う、うん…わかったわ」
真紅はすぐにでも海斗を助けに行きたかったが鈴架にそう言われて渋々見ていることにした。
影の魔物達は無言で海斗を睨んでいる。
それに海斗はやれやれとため息をついて、
「…ふぅ、またあなた達ですか。いいかげんしつこいと嫌われてしまいますよ?」
「黙レ…同胞ノ恨ミ、今日コソ晴ラサシテヤルワ! ウガアァァーーッ!」
「やれやれ…」
海斗は目を一瞬瞑るとその場から一瞬にして姿を消してしまった。
それに影の魔物は右往左往している。
真紅達も海斗が消えたことに驚いていた。
「か、海斗さんが姿を消した?」
「いえ、上よ!」
真紅はすぐに海斗が影の魔物の群れの頭上にいるのを見た。
海斗はその手にいつの間にかいくつもの水状の針を指の間に何本も挟み込んで構えている。
「…美薙流! 落水針!!」
海斗から降り注がれた針の雨はすべての影の魔物を貫き、「グアァ…」と呻き声を上げながら一瞬にして葬り去られた。
「す…すごい……。影の魔物を一瞬で…!」
「!…、そこにいるのは誰ですか!?」
海斗は鈴架達の気配に気づき、真紅達の手前の地面に針を放った。
「わっ!?」
「ちょっと鈴架、大丈夫…?」
そして海斗が近寄ってきて、
「あ、あれ…? 真紅さんとその妹の鈴架さん…? どうしてここに?」
「どうしてって…ただ海斗くんがたまたま神社でお掃除をしているのを見かけたから…」
「それよりいきなり何するんですか!?」
鈴架は怒り気味に叫んでいた。
「なにって…もしかしてあなた達…僕が今なにをしていたのか見たんですか?」
「う…うん……すごいね。影達を一瞬で倒しちゃうなんて…」
「ふぅ…もう少しあなた達には気づかれないようにしようと思っていたんですが…見られたからにはしかたがないですね」
「…どーいう意味?」
「これを見ればあなた達も分かると思いますが…?」
すると海斗はポケットから水色の玉を取り出した。
それを見て真紅と鈴架は揃って声を上げる。
「わかっていただけましたか…? 改めて自己紹介します。僕は過去の十二支の一人、“水滸さん”の生まれ変わりの美薙海斗です」
「そうなんだ! よかったぁ…みんな海斗くんからはあまりいい感じがしないっていうから…」
「…あながちそうなのかもしれませんね。僕はみなさんとは少し違いますから…」
それで海斗は伏し目がちになる。
「違うって…なにが違うの?」
「なんでもありませんよ。気にしないでください」
「そう?…あ、じゃもしかしてあの時廊下で助けてくれたのは海斗くんなの?」
「えぇ、まぁ…」
「どうして言ってくれなかったの…?」
「それは…」
「それは私が彼に警護を頼んだからよ」
海斗が困りがちになる。
するとそこに知った声が聞こえてくる。
真紅達の背後にはいつのまにかガリウスが立っていた。
「あ、ガリウスさん。すみません…もうばれてしまいました…」
「いいわよ、いずれは知られる事になったんだから…」
「ガリウスさん、警護って一体…?」
鈴架が警護という言葉に疑問を持つ。
「それはまだあなた達が力に目覚めたばかりで心配だったからよ…だから彼に密かに警護を任せておいたのよ。ゴメンね、隠しておいて…」
「そうだったんですか…でもなら海斗くんもそうなんじゃないんですか?」
「そのことなんだけど…彼には初めて会った時からなにかしら力があったのよ。なにかの流派の末裔らしいけど詳しいことは聞いてなくて…」
「…すみません、みなさん。僕のことはいずれ時がくれば話しますから」
海斗は少し暗い面持ちでみんなに言った。
「気にしないからいいわよ! 今日から海斗くんも私達の仲間なんだから!」
そうして真紅は海斗の手を持って、海斗は顔を赤くする。
「あっ…」
「これから仲良くやっていこうね」
「あ、はい!」
「疑ってごめんなさい…こんな私でもこれから仲良くしていいかな?」
「はい。鈴架さん、構いませんよ!」
「あ…うん!」
それであらかた話を終えて、真紅は海斗とガリウスと別れの挨拶をする。
「それじゃまた明日ね! 海斗くん! ガリウスさん!」
「それじゃ失礼します」
「はい、帰りはお気をつけて…」
そして二人は家へと帰っていった。
………………
……………
…………
二人が帰った後、海斗とガリウスは、
「…でも彼女達に教えてよかったの? あまり自分の戦いには巻き込みたくなかったんでしょう?」
「えぇ。ですが知られてしまった以上は僕も彼女達のことを積極的にカバーしていこうと思います」
「そう…あ、それとあの子達にはまだあの事を伝えてなかったんだけどどうするの?」
「それなら任せてください」
海斗は笑みを浮かべる。
そして真紅と鈴架は家へと帰ってきた。
「「ただいま!」」
「あ、お帰りなさい。ちょうどよかったわ、二人とも!」
「なに…?」
琴美にちょうどいいと声をかけられて二人は、
『家の隣に新しい人が引っ越してきたのよ。七時過ぎには帰ってきてると思うからご挨拶してきなさい。特に真紅はきっと驚くと思うわ!』
と、琴美に言われて二人で隣の家に挨拶をしに行った。
「…そう言われてきたけど誰なのかな? お姉ちゃん、心当たりは…?」
「うーん……まさかねぇ? まぁいってみれば分かるわよ」
そして二人は隣の家についてチャイムを鳴らした。
「はい、今出ます!」
「あれ? 今の声はもしかして…?」
すると家から出てきたのはなんと海斗だった。
「か、海斗くん!? どうしてここに?」
「すみません。ついさっき言い忘れてしまって…。実はガリウスさんが僕の身元引受人でここを紹介してくれたんですよ」
「そうなんだ。ガリウスさんてすごいよね…」
「ですね」
「でもそれならいつでも会えるね。改めてよろしくお願いしますね! 海斗くん!」
「よろしくね!」
「えぇ、よろしくお願いします」
――to be continued.
海斗は水の属性の使い手で後は針使いです。




