068話 『永遠の誓い、翔る翼』
後半です。
…それから影達はすべて掃討され後は上で見下ろしている巨大な鳥だけだ。
「後は上にいる鳥だけだな…」
「よし…! 俺が先手を切って上で偉そうに見下している奴に挨拶してきてやるぜ!」
「気を付けろよ!」
「わかってるぜ! 重力の羽よ!!」
バッ!
翔は見えない翼を展開させ巨鳥に飛び掛かっていった。
「てめぇで最後だ! くらえ、帝釈斬!! おおぉぉーーーッ!!」
そして巨鳥より高くあがり真っ二つに切り裂こうとした。だが…
「……――ょう……」
「!!?」
翔は切り裂く寸でで刄を止めた。
「どうしたんだ翔!?」
「くっ…!」
「…、フアァッ!」
バシッ!
「!? うわあぁぁぁっ!!」
翔は巨大な鳥の翼で叩かれて地面へと落下していく。
「翔兄さん!!」
「ぐっ! くそぉっ!!」
ブワッ!
翔は地面に叩きつけられる直前でなんとか重力で止まったがどうにも翔の表情は険しいものだった…
「翔、大丈夫か!?」
「どうして倒さなかったんだ?」
澄星が聞く。
「…それは、奴の胸に暗黒球がついていたからだよ」
「えっ!?」
『暗黒球ですか!』
「暗黒球…?」
「…それは人の心を支配し闇の人格を作り出してしまう凶悪なアイテムです」
「ということはあの巨大な鳥は…!」
「いや、まだ完全に暗黒球は取り込まれていなかったから奴はまだ誰も殺していないはずだぜ!」
「確かに…あの鳥はいつも現れるたびに上空で留まっているだけだったな…?」
「じゃもしかしてあの鳥さんは暗黒球の意志に逆らっているということですかね」
「たぶんな…」
その光景を違う場所で見ていた清星は紫の闘将石を握り締めて皆の無事を祈っていた…その時、紫の闘将石が光りだした。
「な、なんですかこれは…? まさか闘珍様…?」
バシュンッ!
「キャッ!」
紫の闘将石は清星の手から離れ一直線にある場所へと飛んでいった。
「くそ! どうすっか…? あれじゃ…」
シューンッ!
パシッ!
「!?」
「「「「「!?」」」」」
突如翔の手に紫の闘将石が飛んできた。
「それは…紫の闘将石!?」
カッ!
「くっ!?」
「きゃっ!?」
「なんだこの光は…!?」
「これは…まさか闘珍様の力?」
―――翔の精神世界。
『くっ!…ん? ここは…俺の…』
『…そうだ翔』
『あんた! なんでいきなり俺をここに…?』
『おまえに頼みがある…一度でいい、体をかしてくれ…!』
『はっ!? なんでだ!』
『あの鳥を…いや、闘珍の野郎を助けてやりてぇんだ!』
『闘珍って…まさかあの鳥がか!?』
『そうだ。あいつは死んだ後、きっと俺と同じになろうとしたんだろうぜ? だがきっとその矢先に…』
『捕まっちまったってわけか…』
『俺はあいつを助けてぇ…だから協力させてくれ! 翔!!』
『わかったぜ、鳥翔さんよ。だがなら俺も手伝うぜ! その闘珍て人とも話がしてぇからな!』
『ふっ…そうか。それじゃいくぜ翔!』
『おうよ!』
そして二人の意志は同時に外へと飛び出した。
「翔…か?いや違う、威圧感が翔のものとは桁外れだ!」
「「いや、俺だぜ秦兄…だが今は一人じゃねぇ」」
「「そうだ。俺は…鳥翔だ!」」
気付くと翔と鳥翔の声が二重になって聞こえてきている。
「「「「「えっ!?」」」」」
「本当に…鳥翔将軍なのですか?」
「「そうだ。今俺と翔は体を共有していることになるな」」
「久しぶりです! 鳥翔さん!」
「「おう! 瑪瑙か! すまねぇが再会の感動はなしにしてくれ。今はあの鳥、いや闘珍の奴を助けにいかなきゃいけねぇからな!」」
「なっ!? あの巨大な鳥の化け物が闘珍様だというのですか!?」
「「化け物なんかじゃねぇ! あれは闘珍の奴が精霊として転生した姿だ!」」
「闘珍様が、精霊に…?」
「「つべこべ言ってる暇ないんじゃないすか? 鳥翔さん?」」
「「そうだな!いくぜ!!」」
フッ…!
「え…? あれ、翔兄さんは…?」
「上だ!」
気付いたときには翔の姿ははるか上空にあった。
「なんてスピードだ! あれが鳥翔様の力!!」
上空の大空では、
フッ!
「「うわっ!?」」
「「くく…驚くのはまだこれからだぜ! いくぜ闘珍! 今から俺が救ってやるぜ!!」」
フッ!フッ!フッ!
鳥翔はさらに加速してもはや人の目には止まらないスピードになっていた。そしてそのまま暗黒球を体を一切傷つけず破壊した。
「「すげぇ…いとも簡単に暗黒球を!」」
「……た、隊長……」
「「…前世の記憶がまだ残っているのか? おまえそこまでして…、…よし翔! おまえこいつと契約してやれ!」」
「「はっ? なんでだよ?」」
「「できれば俺がしてやりてぇが今回のようにそうそう外に出られるわけじゃねぇからな。それにここにちょうどいい契約アイテムがあるじゃねぇか!」」
「「紫の闘将石…いいのか? 闘珍さんとやら…?」」
「…はい。これでやっと誓いを果たせますから…もう…わたくしの新しい人格に交替することにします」
「「…そうか。だがな闘珍、俺たちは永遠に仲間だからな!」」
「はい、隊長!…では、もう…眠くなりましたので…わたくしの生まれ変わりをよろしく、お願いします…翔くん…」
「「…あぁ」」
「「じゃ俺も戻るぜ?」」
「「あぁ、あんがとな」」
「「なぁに。お互い様だろ?」」
「「ぷっ…確かにそうだな!」」
鳥翔は翔の中に戻り、闘珍ももう意識はなくなり一瞬だが心が殻の状態になった。
そして新たに目覚めた意志の持ち主は翔を見た。
「…あれ、あなたは?」
「俺は雲隠翔、翔でいい。で、すまねぇが俺と契約してくんねぇか? 俺とお前の前世同士が納得しちまったもんでよ…」
「ふふっ、わかりました。私の名は『グライヴァーン』。属性は重力です。
今ここに雲隠翔との契約を果たしたものと認めます。それで私が宿るものは…わかりました。その紫の闘将石ですね?」
「…なんでわかったんだ?」
「それはもう契約しました身ですから!」
「お前…なんかおもしろい奴だな…だが気に入ったぜ! これから頼むぜグライヴァーン!」
「はい、マスター!…ちなみに私は女性ですから粗末に扱わないでくださいね…? クスッ♪」
「ばっ! おいこら!!」
「きゃー!」
そしてグライヴァーンは慌てながら(笑いながら?)紫の闘将石に入っていった。
それから少しして指輪からグライヴァーンの声が聞こえてきた。
『あ、忘れてました!』
「今度は何だ?」
『今度私を呼び出す時はマスターが、“鳥重剛翔陣”と唱えてくださればいつでも助けにまいりますね♪』
「あぁ、わかったぜ」
そして翔は指に紫の闘将石の指輪をはめて一同のもとへと戻った。
「翔! 大丈夫だったか!?」
「…なんとかな。ていうかやったのはほぼ鳥翔さんの力だぜ? それに強要はしてねぇけど…話の流れで…その、なんだ…?」
「どうしたんです翔殿?」
「まぁちょっと離れてくれ」
翔は一同を遠ざけた後、
「じゃいくぜ! 鳥重剛翔陣! 出でよグライヴァーン!!」
カッ!
「………」
一同は茫然としていた。目の前には先程まで敵になるかもしれなかった巨大な鳥が突然姿を現したのだから。
「あ、早速お呼びですか、マスター?」
「いや、用ってわけじゃねぇんだけど…ま、こーいうわけだ」
「あのぅ…グライヴァーンさん?一応聞きたいんですけど私みたいに人型になれるですか?」
「う~ん、難しい質問ですねぇ…?」
二人が話をしている間に、
「(翔殿? あれが本当に闘珍様なのですか!?)」
「(イメージとあまりにかけ離れているが…?)」
「(まるで女の子ですよ…?)」
「(は、ははっ…なんていったらいいんだか? 闘珍さんの意志は完全に生まれ変わった人格に取り込まれちまったみたいだ。後な、…)」
翔はあったことを一同に語った。
そして宮廷に戻って、四人はその晩に大層な料理を食べさせてもらい澄星とも意気投合した翔が間違って飲んでしまった酒によりドンチャン騒ぎをしたのはここだけの話。
そして一夜が明けて…
―――フォースピア・韓籠軍宮廷、玉座の間。
翔は清星にも昨日にあった出来事を伝えて、
「なるほど。そうなのでしたか…」
「それであん時の返事の答えだけどよ、この指輪…ほんとに貰っていいんだな?」
「はい、構いませんわ。ですがなにか感謝させてください」
「い、いいって! なぁ秦兄、衛巳?」
「そうだな。俺たちはしたくてやったことなのだから」
「はい」
「そうか。せっかく助けてもらったというのに残念だ…」
「すんません…」
「うーん…あ! そうですわ! 翔様、少し私のもとに来てくださいませんか?」
「…? いいけどよ…」
清星のもとに向かう翔。
だが秦はあることに気づく。
「(…澄星さん、今清星様は翔に『様』をつけなかったか…?)」
「(確かに…昨日までは殿であったが…)」
「(なにをするんですかね…?)」
「(さぁな…?)」
「(たぶん…あれ、じゃないかな兄さん?)」
「「(あれ?)」」
秦と澄星は同時に首を傾げる。
「(澄星さんも秦さまと同じくらいあれです…)」
「(はい…)」
そして翔は清星の前にやってきた。
「それで、俺は何をすればいいんだ姫さん?」
「清星でいいですわ。翔様、少しの間…目をつぶっていてください」
「ん? わかったぜ」
清星は目をつぶっている翔に近寄り、
「あなたは、闘珍様の心を救ってくださいました。そしてなによりこの国を救ってくださいました」
「そんなだいそれた事はしてねぇよ…それにいったろ? 救ったのは鳥翔さんの力だ」
「ですがあなたがした事には変わりありません。…ですからこれはその感謝の気持ちと……そして、私の想いをこめて…」
すると翔は突然頬に妙な感触を覚えた。
それは暖かく、そして柔らかくて…それは、それは…。
「わっ…」
「…あ、姉上…!?」
「……」
「わぁ…キスなのです!」
「…へっ?」
「ん…」
翔は閉じていた目を一気に見開き目の前で起きている現実、もとい光景に信じられないでいた。
そして清星は慌て硬直している翔をよそにそっと唇を翔の頬から離して顔を真っ赤にしていた。
「き、ききき清星さん…! な…なにを!?」
「これがわたくしの想いの形ですわ。翔様…お慕いもうしております…」
「なあっ!!?」
そして清星は翔に体をそっとすりよせた……案の定翔本人は顔を爆発させていた。
「…翔…きさまぁ…! よくも姉上を!!」
「す、澄星!? うわっ待て! 刀を抜くんじゃねぇ!!」
「うるさい! 今すぐそこになおれぇ!!」
「できるかい!!」
翔は澄星から逃げるために広場へと飛び出していった。
「まぁ…!…ふふ、翔様も澄星ももうあんなに仲良しになってくれたのね」
「…秦兄さん、もしかして清星さんて…?」
「言うな。失礼だからな…」
「はい。それにしても翔兄さん…姫様に恋をされてしまって…すごいです!」
「はいです!」
「いや、もっと深く考えてくれ二人とも…」
「ここに静姉さんがいたらきっと『人のこと言えるの?』と言われてしまいますよ? 秦兄さん…?」
「そうなのです!」
「ぐっ…言い返す言葉がないな」
…そして澄星の暴走もやっとおさまり秦達はフェニキアに向かう準備を済ませ門の前に来ていた。
「翔様…返事はいずれ…。わたくし、待っております」
「は、はぁ…」
「翔! 姉上の期待を裏切ったら私の剣が黙っていないことだけは忘れるなよ!」
「あー! わかってる! だからいちいち構えるな!!」
「ではもう参ります」
「また来ますね!」
「はい! 歓迎しますわ!」
「じゃあな澄星、それにき、清星…」
「あ…はい!」
翔に清星と名前で言われて嬉しそうに表情を緩める清星。
「ふん、またな翔…」
「あぁ! そんじゃいくぜ! 鳥重剛翔陣! 出でよ、グライヴァーン!!」
カッ!
「はぁーい! マスター!」
そして四人はグライヴァーンに乗って教えてもらった道を飛んでいった。
それを清星と澄星は一同の無事を祈りながら見送った。
翔達は空を飛翔しながらも、
「…で、実際のところはどうなんだ翔?」
「なにがだ…?」
「清星さんのことですよ」
「なんだそのことか…」
「なんだ。以外に冷静だな」
「そのことはまた後で考える…今は、言わなくても分かってるだろ?」
「!…そうだな」
「はいです!」
「鈴架さんを救うことです!」
「分かってるじゃねぇか! じゃいくぜ! グライヴァーン! 飛ばしてくれ!!」
「りょうか~い! マスター!!」
ドグアァッ!!
そして四人を乗せたグライヴァーンは最大パワーでフェニキアを目指して向かっていった。
鈴架の魂が完全に身体より離れてしまうタイムリミットは、後…五日間。
――to be continued.
新たに翔に使い魔が追加されました。
そして清星に惚れられる翔でした。




