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イニシエからの絆  作者: 炎の剣製
61/71

061話 『夏の始まり…それぞれの日常(中編)』

今回はクリスから始まります。



―――A.M.6:00。



真紅と鈴架がドラゴンから逃げ回っている頃、場所は変わり聖梁教会。

そこでは教会に暮らすシスター達がお祈りをしていた。


「さぁ…皆さん。朝のお祈りの時間ですわ。今日も良き日になりますように神様に願いましょう…」

『はいマザー…』


そしてマザー・クレセントとともにその場にいるクリスを含むシスター達は神へとお祈りを捧げた。


「さぁみなさん。今日も学校にいく時間が近いですから早く準備しましょう」


聖梁教会にはそれこそもう自立して働いているシスターも多いが、3分の2くらいの人数はクリスと同じくまだ学校に通っているものが多い。その中で一番年少の子はまだ小学五年生のシスターだ。

そしてその子の名前は、


「クリスチーヌお姉様! 一緒に朝ご飯を食べよ!」


まだシスター服を着た子がクリスに近づいてきた。


「えぇ、わかりましたわ。また一緒に作りましょうね、レイシスちゃん」

「やった!」


彼女の名は、『レイシス・デルフィーヌス』。

性格はとても素直でクリスとは部屋が同室の為、かなり懐いている。

そして彼女もまたクリスと同じく親がいなく数年前にここに入ってきた孤児であった。

名前の『デルフィーヌス』の由来は、ここ『聖梁教会』に入ってくる前レイシスは誰にも心を開かない無口な子だったそうだ。

だが、あるイルカとの出会いで心を開いたことからイルカ座の名を冠してこの名前がつけられたそうだ。


「お姉さま! お姉さま! ここはどうやったらいいかな?」

「待ってくださいね。ここは…」


二人は朝食作りを楽しみながら作っている。これはもう毎日の日課になっているようである。



―――A.M.7:00。



そして午前七時、大体の人はこの時間帯に起きるこの時間、



―――速水邸。


「…ん…」


縁は七時ピッタシの時間帯に目を開けた。


「…朝…」

「オゥ…」

「…あ、スピネス…お早よう…」


そして縁はスピネスの頭を撫でてあげた。

しかし、スピネス…いや輝羽はかなりの演技派だ。もう完全にスピネスになりきっている。


コンコンッ!


「縁様? もう起きてらっしゃいますか~?」

「…メイさん…? うん、…もう…起きてるよ…」

「それでは入らせてもらいますね?」


ガチャッ!


縁が起きていることを確認したメイは部屋に入ってきた。だが…


カッ!


「あっ…」

「え? わ! うきゃーーーっ!!」


ズデンッ!

メイはいつものドジッ子ぶりを万遍無く発揮しドアの角につまずきそのままぶっ倒れた。


「…め、メイさん…?大丈夫…?」

「あいたたた~…はっ!? はい、大丈夫ですぅ!」

「…よかった…メイさん…がもし怪我したら私…」

「大丈夫ですよ~! リアメイド長にビシバシ鍛えられていますから~!」


メイが握りこぶしを作りながら張り切っているが、そこに、


「そう思うのでしたらまずはそのドジなところを直していただけないと言葉に説得力が感じられませんよ? メイ」

「へ…? り、リアメイド長!? は、はいぃ…なるべく気を付けますぅ~…」

「まったく…あなたはそれがなければ優秀なのですから頼みますよ? それでは縁様…」


そういいながらリアは歩いていってしまった…。


「はうぅ…リアメイド長、気配が感じられませんから恐いです…」

「…がんばってね…メイさん…」

「はい! それより縁様。今日のご予定ですが食事後にまた私が勉強をお教えいたしますね!」

「うん…ありがとうメイさん…秦様に早く…追い付きたいので…今日もよろしくお願いします…」

「縁様…メイは、メイは毎日が感激ですぅ!

縁様がこんなに意欲的にお勉強を学んでくださるなんて…。

さ!きっと本日も雲隠様が来てくださると思います! それまでに今日分のお勉強を終わりにしときましょうね!」

「…うん…(秦様…)」




―――東条家。



「…すぅー…すぅー…」

「楓ちゃ~ん?もう朝ですよ?」

「…むぅ…ふぁ~…まだ眠いぃ~…」


まだ自分の部屋で寝ていた楓は一階から聞こえてきた母、繭の声で半ば寝呆け眼で目を覚ました。

普段、男口調でクールなイメージを持つ楓らしからぬ意外な一面。


「もう朝ご飯の準備は出来てますから早く降りてきてくださいね。早くしないと食べちゃいますよ?」


いい終わるとそれっきり繭の声は聞こえなくなった。


「…食べる…食べる…」


だが楓はなぜか『食べる』という言葉を繰り返している。そしてどこでずれたか『喰われる』なんて呟きだしたではないか!


「喰われる…喰われる…、……敵!? 解咒!!」


カッ!


「…風よ…巻き起これ…風神――……」

『(ちょっと待ったーーーッ!!)』

「!?」


キィイイイッ!


それで楓は突如精神世界に連れてこられてしまった…。


『ダメだよ楓ちゃん!!』

『…あ、子乙さん? なんで私はまたここに…?』

『…はぁ、覚えてないんだね?』

『なにがですか…?』

『今ね…楓ちゃん、自分の家を竜巻を起こして吹っ飛ばそうとしてたよ…?』

『……、は!? 私がですか!』

『…うん。ボクが止めてなかったら確実にやってたね』

『…私としたことが…なんたる失態を…』

『寝呆けていたとはいえ今度から気を付けてね?』

『…はい。自重します』

『うん。それじゃ早く起きてね!』



そして楓は現実に戻ってきて顔を赤くしながら己のやったことに本気で恥じていた。



◆◇―――――――――◇◆



―――A.M.8:00。



この時間はもうそれぞれ登校時間なので学校へと続く道を歩いていた。


「クリスチーヌお姉様! 私こっちだからまた帰ったらお料理教えてね!」

「わかりましたわレイシスちゃん。それではまた」

「うん!」


そしてレイシスは待っていた同世代の子達と一緒に小学校に歩いていった。


「それではわたくしも学園に向かいましょう」


そしてクリスが道を歩いていくと真紅、鈴架と出会った。


「あ! 真紅さん、鈴架ちゃんおはようございます」

「…おはようクリス」

「…おはようございますクリスさん」


元気に挨拶したクリスに対して二人はまるで疲れ切ったような返事を返した。

相当あのドラゴンに追い掛け回されたのだろう…


「お二人ともどうされたのですか? なぜか面持ちが暗いようですが…?」

「はい…ちょっと今朝色々ありまして…」

「…まさかサラマンダまで出さなきゃ勝てないなんて思わなかったわよね…鈴架…」

「うん…」

「え!? サラマンダさんをお使いになってやっと倒せた敵ですか! 今朝なにがあったのですか!?」


クリスが心配そうな眼差しで見つめてきたが、


「…違うのクリスさん…」

「うん…実はね――…」


二人は今朝あったことをクリスに隠さず伝えた。



「まぁ…そうでしたのですか。わたくしはてっきりまた真紅さん達が敵に襲われたのかと思い心配いたしましたわ…」

「ありがとクリス…でも本当にあの仮想空間はすごかったわ」

「うん! まるで別世界にいる感覚だったね!」

「そうなのですか…、…もしよろしければわたくしも一度体験してみたいのですが…よろしいでしょうか?」

「えぇ、いいわよ」

「あっ、ありがとうございます!」


三人が楽しく話をしていると、


「…ったくよぉ…もう少し手加減しろっての…」

「すみません。ついつい気持ちが高ぶってしまったもので…」

「いい加減機嫌を直さないか、翔…」

「はいです!」


その時、違う道から聞いたことのある声がいくつか聞こえてきた。


「あれ? 今の声って…」

「そうですわね」

「海斗君達だわ!」

「あれ? 真紅さんに鈴架さん、クリスさん」

「お早よう!」

「おはようございます」

「おはようございます」

「よぉ!」

「おはよう、みんな!」

「おはようございますです!」

「おはようございます」


一同はそれぞれ挨拶を交わすと一緒に学校にむかって歩いていった。

それで秦達も仮想空間の話を聞き、


「…ほぅ。仮想空間か。それはまたいいものを貰ったな鈴架」

「はい。…でもいきなり最初からドラゴンはきつかったですよ」

「いいねぇ! おい鈴架、今度俺らにもやらせろよ!」

「う~ん…どうしよっかな?」

「おいおい! ひいきか!?」

「…ぷっ…うそうそ! そんな真剣に怒らないでよ」

「鈴架ぁッ! てめぇっ!!」

「きゃー! 翔に襲われるぅ~♪」

「おいこらぁーっ! 人聞きの悪いこと言ってんじゃねぇ!!」


そして二人はさっさと駆けていってしまった。


「…俺たちもいくとするか」

「そうですわね」



◆◇―――――――――◇◆



―――聖梁学園、鈴架・翔のクラス。


そこでは今現在母、琴美による古典の授業が行われていた。


「(…あ~、つまんねぇ…思いっきり体を動かしてぇなぁ…)」


翔はつまらなそうに机にふしていた。


「(翔~…?次はあんたが当たる番よ~…?)」


隣の席の鈴架がそう翔に話しかけるが、


「(あ…? 寝てる振りしてりゃ流されるだろ?)」

「(お母さんがそんな甘い人だと思う? あ…! やばい…もう私は知らないからね!!)」

「(ん? どーいう意味だ?)」

「…雲隠君? それで寝ているつもりなのかしら? 起きなさい!!」


スコンッ!


「うごっ!」


翔は丸めて凶器(笑)と化した教科書を持った琴美に叩かれていた。


「あら…起きてるじゃない…? それじゃここを読んでくださいね?」

「っ…はい」

「(…バーカ)」


翔は横目で鈴架を睨みながら立って渋々と教科書を読み始めた時、突然外から色んな男子の声が聞こえてきて一斉に生徒はそちらの方へと振り向いた。


「(あー…またかな?)」

「(もー…しょうがないわね。あのクラスは…)」



―――聖梁学園、プールサイド。



同時刻、真紅達のクラスは今年何度目かの水泳の授業が行われようとしていた。

なぜか男子どもはずっとそわそわして落ち着きがない。それは何故かというと…


「…茎宮先生。いつも思うのですが男子のこの落ち着きの無さはどうにかならないんですかね…?」


海斗は体育担当の女教師、『茎宮(くきみや)千華(ちか)』先生に話し掛けていた。


「そうだねぇ…困ったものよ。ほんと美薙だけは落ち着いてていい子だよ」

「え?…そんなことは、ないんですけどね。まぁしかたがないですね」

「そうねぇ…このクラスはダンチが二名もいるから…」

「ダンチ…ですか」


そのダンチの二名とはおそらく…

すると後から遅れて女子更衣室から水着に着替えた女子達がやってきた。


「「「「「「うおーーーッ!!」」」」」」

「こら、男子共! 変な奇声をあげながら変な目でこちらを見ないでよね!」

「しっ! しっ!」

「しょうがないだろ! 男…いや漢は正直な生き物なんだッ!!」

「堂々としょうもないことを口走るなーッ!」


もう何回も行われたのだろう男子と女子はお互い口論を開始した。

その中で女子に至っては恥ずかしがって顔を赤くするものがよく目立つ。


「また…始まりましたね」

「えぇ…これじゃまた授業ができないわよ。ここは…美薙!」

「は、はい! なんでしょう!」

「あの集団を沈めてちょうだい! きっと美薙ならできるわ!」

「むー…しょうがないですねぇ」

「恩に着るよ美薙…本当なら教師のあたしがする役目なのに…」

「気にしないでください。先生は実際よくやっていますよ」

「美薙~…ありがと。じゃ頼むわ」

「了解しました。(…だけどどうやってみんなを止めようか…?)」


考えているとふと視線を感じて向いてみると真紅が海斗に口を動かすだけで言葉を伝えていた。


「(海斗くん、止めるの手伝うわ。同時にみんなの前に出て止めましょ!)」

「(わかりました!)」


見事に口だけの会話は成立していた。


そして海斗は男子一同、真紅は女子一同の前に無言で立った。


「「「「「美薙…?」」」」」

「「「「「辰宮さん…?」」」」」

「みんな!」

「みなさん! 喧嘩はやめてください!」

「いつもみたいに仲良くやりましょう?」

「そうですよ。でないと茎宮先生が可哀相ですよ…?」


一度一同の動きがストップし千華の方へと皆は顔の向きを変えた。


「え? なに…?」


遠くで見ていた千華は当然騒ぎの話の内容など聞いておらずきょとんとしていた。だが状況把握はすぐに終了して、


「あ…! みんなやっとあたしの授業受ける気になってくれたの!?」


と、目を丸くしていた。その目には星がいくつもきらついているようにも見えた。

そんな千華の目に一同は逆らえないことを悟り、それからはちゃんと授業を受けだした。


「やったね海斗くん!」

「はい。手伝ってくれてありがとうございます」

「さすが真紅さんに海斗さんですわね!」



それを窓越しで見ていた鈴架は、


「(やっぱりお姉ちゃんと海斗さん、すごいなぁ…見ててかっこ良かったよ。それに比べて…)」

「………」


翔は真紅達を見てボーッとしていた。


「(いつまでのぞき見てんのよ!!)」


ゲシッ!

「(ぐっ!)」


じっと見ていた翔は鈴架にも琴美にも怒られていた。



授業終了後…


「いや~、助かったよ二人とも。まずはさすがというべきかな?」

「そんな…当然のことをしたまでです」

「はい」

「うんうん。さすが聖梁学園の―――…おっと! これはあたしの口からは言わないほうがいいわね」


千華はなにか言い掛けたがとっさに口を閉じた。当然二人はなんだろう?と言わんばかりの表情をしていた。だが理由はわからずそのまま解散となった。

そしてあっという間に帰りのホームルームの時間になった。


ガラッ!


琴美が教室に入ってきた。


「それでは帰りのホームルームをはじめますね!」


騒いでいた生徒達は琴美が教室に入ってくるなり静かに席についた。


「さて、まずはじめる前に言っておきたいことがあります」

『?』

「茎宮先生から聞いた話なのですがプールの授業で私のクラスの生徒がかなり騒ぎを起こしているという話を聞いたのよ」

『………』

「私はそのことに関しては追求はしませんがもう少し真面目に授業を受けるんですよ?」

『はーい…』

「返事はきびきびと!」

『はい!』

「よろしいわ。では改めてホームルームをはじめますね」


琴美はこれからのことを話しだした。


「もうわかっているとは思いますが来週の12日の月曜日と13日の火曜日の二日にかけてに期末テストが行われます。

ですから夏休みに補習を受けたくなければちゃんとテスト範囲の復習をしておくんですよ?」

『はーい』

「では日程表を配りますので委員長お願いします」

「わかりました」


テストの日程表が配られ、それからホームルームは終わり解散となった。




――to be continued.


学生時代、期末テストと聞いて頭を悩ませましたね~。

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