057話 『心の欠片の争奪戦』
四つ目の欠片の奪い合いです。
闇の王の城では闇の王と氷月が二人で会話をしていた。
「…闇の王、仮面の女との応答が途絶えました。位置も特定できませんね…」
「…別に今はかまわんだろう。それより今やるべきことは…二人ともわかっているな?」
「わかっております…」
「………」
氷月と滅はわかっているらしく頷きを返した。
◆◇―――――――――◇◆
6/26(土)
…―――夜のこと、速水邸、雫の部屋では、
カタカタカタカタッ…
「………」
雫は夜中にパソコンから舞架の心の欠片を探すために様々な情報をネットから検索をしていた。
そして条件を絞りだして、複雑な鍵がかけられているところなどはお得意のハッキングやクラッキングのスキルを駆使して次々とコードを解除していった。
カタカタカタカタッ…
「…あったわ。情報は二つ、どちらも間違いなくあの欠片と同じ形をしているわね。色はやっぱり違うけれど…片方は橙色、もう片方は黄緑色…ん?」
雫はスクリーンに映し出された二つの水晶を見てあることに気付いた。
「…これは…えっ? 橙色の水晶の方はもうすでに奪われてしまったの!…その時の人物の映像が残っているみたいね」
雫はそれをアイコンをあわし開いてみるとそこに映し出された人物の格好は全身に黒いフードを羽織っているというものだった。
「この人は…漆黒の、風…!…、でも彼でよかったのかもしれないかしらね? 敵に奪われるくらいなら…」
雫は安堵と不安の入り交じったようなため息をついた後、もう片方の方の情報を集めだした。
ガタッ…
「!? 誰!」
「あっ…!」
物音に咄嗟に振り向いた先には雫のために飲み物を持ってきていたリアが立っていた。
「申し訳ございません雫お嬢様…驚かしてしまいまし。」
「なんだ、リアか。いいのよリア。もとはあたしが悪かったんだし…それよりコーヒーを持ってきてくれたの?」
「はい。最近お嬢様は毎夜遅くまで作業に没頭なされていますのでお体は大丈夫かと思われましたので…」
「ありがとねリア。でも大丈夫よ。それよりコーヒー…ありがたく頂いとくわ」
「はい。それではなにかありましたらお呼びください」
「えぇ」
そしてリアは部屋を出ていった。
「さて…あらかた情報もそろったわね。明日にでもニーグさんと合流をして目的の場所へと向かいましょう!」
◆◇―――――――――◇◆
6/27(日)
まだ日も明けていない時間帯、雫は輝羽とともにニーグと合流していた。
「よく呼んでくれたんだな。しかし雫と輝羽以外はどうしたんだな?」
「彼らにも色々とあるのよ…それより情報は昨日伝えたとおりです」
「…まさか欠片の一つが裏社会のマフィアの一人、『獄寺組』のボス『獄寺壕蔵』の手に渡っているなんてなぁ…手強いんだな」
「そうですね。でも…隙をつけば侵入することは可能。そこらへんはあたしに任せてください」
「わかったんだな!」
そして三人は獄寺組付近の森の家に忍び込もうとしていた。
「さて…どこからいくんだな?」
「少し待ってください」
カチャッ!
雫はミニのノートパソコンを開いてコードを伸ばしその家にある差し込み口に接続し次々とコマンドを入力していった。
「アジトエリア解析…クリア」
雫はまずアジトの全エリア、抜け道、隠し扉、その他もろもろの情報を摘出していった。
「雫さん…すごいですね」
「当たり前なんだな。速水は俺っち達の中で情報戦の要だったんだな!」
カタカタカタッ…
「防犯センサー、赤外線、監視カメラ……、面倒ね…いいわ。獄寺組アジト全電子回線オールカット! クリア!!」
「ハ、ハッキングのテク…腕をあげたんだな?」
「そんなことはないですよ。それじゃいきましょう! 今屋敷内はすべての機能が停止していて大混乱でしょうから侵入は容易くできます!」
「わ、わかったんだな…」
「はい…」
そして雫の言ったとおりにアジトの内部は突然の全電源停止に混乱が起きていた。
「どうしたー!?」
「わからない! 突然すべての主電源が切れちまって…」
ガスッ!ガスッ!
「うっ…!?」
ドサッ!
雫は静かに、しかし素早く警備員を気絶させた。
「さ!さっさと行きますよ!」
「「…はい」」
それから雫は次々と敵を気絶させていきながら道を進んでいった。三人が通った後にはただ気絶した者が点々と転がっているという光景…。
「(雫さん…本当にすごいですね。今まで影を見つけだし掃討をする、という場にしか付き合った事はなかったですから…)」
「(…そうだなぁ。
そういえば速水は俺っち達と組む以前に一人だけで敵のアジトを襲撃してありとあらゆる情報を駆使して侵入していたんだな。
そして持ち前のスピード戦で一夜にしてその組織は再起不能にまで壊滅させたことがあるらしいんだな…それが所以でか掃除屋の噂で神速と呼ばれそこから『神速の氷笑』と呼ばれるようになったんだな…)」
「(…なるほど。やはり目的は縁さんを守るためなんですか…?)」
「(そうなんだな。家柄から妹さんがちょくちょく狙われることが多かったから速水も血の滲むような努力をしたんだと思うんだな…)」
「(雫さんはそういう人です。生まれ変わる前も、そして今も…だからわたくしはそんな雫さんを守りたいのです!)」
「(そうか…がんばるんだな輝羽!)」
「(はい!)」
ニーグは輝羽を応援しているのだった。
そして、
「ついたわ、二人とも」
「「………」」
そこには最後の扉であろう獄寺組のボス、獄寺壕蔵の部屋の扉があった。
「案外呆気なかったんだな…?」
「そうでもないですよ? あれでもここの出力をすべてカットさせるのも結構苦労しましたから」
雫は笑いながら手をふっていたが、
「「(あなたは何者…!?)」」
二人は同じことを考えて驚愕していた。
「さて…ニーグさん」
「へっ? な、なんなんだな?」
「ここの扉だけ分厚くできてるんですよ。だからでかいの一発お願いしますね?」
「お、おう…わかったんだな! しかしそんなに頑丈なのか?」
「はい。軽く軍の対装甲板くらいはありそうですからここはニーグさんの震動拳法が打ってつけかと」
「わかったんだな! それじゃいくぞ! ソニック・パーーーンチッ!!」
ズガアンッ!
ニーグはソニック・パンチを放ち頑丈な扉を粉砕した。そして部屋の中には獄寺壕蔵の姿があった。
「ひっ! この扉まで破壊するとは…! 貴様等は…!?」
「神速の氷笑…」
「揺るがす衝撃…」
「あ、あの裏社会で有名な掃除屋の『神速の氷笑』に『揺るがす衝撃』!」
「そうよ。それより今あなたは“ある、この世界には存在しない鉱石のクリスタル”を持っているはず…訳あってそれを貰い受けに来たわ。それを素直に渡してくれれば命は保障するわよ?」
「そうなんだな。さぁ、よこすんだな」
「くっ…これは俺様のものだ! これがあればまた一商売ができる…!」
「浅ましいわよ、それはあなたなんかが持っていていいものじゃないわよ!」
「絶対に渡さねぇぞ! こっちは腕利きの用心棒を雇ってるんだ! さぁお二人とも出てきてくだせぇ!」
壕蔵がそう叫ぶと影の中から二人の男が姿を現した。
「ふっ…」
「……」
現れたのはなんと闇の王の部下、四天王の残りの二人、『氷獅子』の黒華氷月と『魔刃』の諸刃滅だったのだ。
なぜこの二人が獄寺壕蔵というただの一マフィアに荷担しているのか?…簡単な答えだ。
闇の王は舞架本体が目を覚まさないことは舞架の心の一部であった『凶』を含め六人の人格が抜け落ちてしまっていると確信したからだ。
そしてそのわかれた心が水晶へと形を変えて世界に散らばっていると知りこの獄寺壕蔵が一つ所持しているとわかり二人を差し向けたのだろう…。
二人の力ならばこのような烏合の衆の集まりなぞは、せいぜい一時間もしないうちに壊滅できるだろうが敢えてそれを実行しようとはしない。
その理由はかならずと言っていい程に水晶あるところ『漆黒の風』が出現するからだ。
それを見越して氷月達はやってきた漆黒の風を返り打ちにし殺害し所持している三つの水晶を奪い、その後に獄寺壕蔵という男を始末しようと考えていた。
だが計画にイレギュラーはつきものだ。漆黒の風より先に雫と輝羽、ニーグが来てしまったのだから。
「…これはこれは。わたくしはてっきり謎の黒いフードを身にまとった人が来ると思っていたのですがね…」
「その声! そして少し違いますが忘れようもないその顔! 華氷か!!」
「おや? あなたは輝羽ではないですか。お久しぶりですね…」
「えぇ、こちらとしては二度と会いたくはありませんでしたが…」
「輝羽さん、もしかしてこの男が…?」
「そうです! 闇の王とともに舞架さんを連れ去った奴ですよ!」
「こいつが…!」
と、そこに話がまったくわからない壕蔵が氷月にむかって激しい言葉を飛ばした。
「なにをやっとる! 早くそいつらを倒せッ! 俺は先に逃げるからな!」
そういうと壕蔵はあらかじめ設置してあった隠し通路を通り消えてしまった。
「…やれやれ。人間とはなんて醜い生き物なのか? まぁ計画は少し狂ってしまいましたが…あなたたちを葬ることにしましょうかね!」
「我はあのでかい奴を殺る…」
「ご自由に…はぁあっ!」
「「「!?」」」
氷月は手のひらに力を集め一気に解き放った瞬間、爆発を引き起こし天井を崩して雫・輝羽とニーグを別れさせた。
ニーグは崩れた壁越しに、
「くっ…! 速水、おまえは獄寺を追うんだな! おまえの足なら追い付ける!」
「わかりました! ニーグさんも気を付けて!」
「死なないでくださいね!」
「わかっているんだな!」
そして雫と輝羽は逃げていった壕蔵の後を素早く追っていった。
「逃がしませんよ!」
そして後を追うように氷月が走っていった。
…そして残されたそこにはニーグと滅の二人のものが両方とも喋らずに静寂が周辺一体を支配していた。
「………」
「……、我の名は諸刃滅だ」
その静寂を破ったのは滅の方だった。
「…驚いたんだな。自らの名を名乗ってくるなんて…」
「…上辺など不要。我はただ強い者と戦いたいがために今ここにいる。
先程のおまえの仲間も見る限りおまえが一番強いと見た…そしてなにより我は女を斬る趣味など持ち合わせてはいないからな」
「…敵にしてはいい心がけなんだな。いいぞ、相手をしてやるんだな! 俺っちの名はニーグ、橋本ニーグだ!」
そして少し間を置き無言で向き合った次の瞬間、二人はお互いの武器を取り出して、
「おおぉっ!」
「はぁっ!」
ガキッ!
二人の戦いが始まった!
――to be continued.
最後、ニーグと滅の戦いが起こりました。




