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イニシエからの絆  作者: 炎の剣製
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056話 『雨の中の死闘』

仮面の女との戦いです。





離れの海岸線で海斗と仮面の女は対峙していた。



「…あら? よく逃げないで来れたものね?」

「誰が…! 今日こそ色々と白状してもらうぞ、仮面の女!」

「ちょうどいいわ。それなら私には人間の心というものを教えてもらいたいものね?」

「なに!?(人間の心…? こいつもサイボーグなのか? いや、しかしそれにしては感情が豊かすぎる…)」


内心で海斗は仮面の女は何者なのかと思案する。


「勘違いしているところ悪いけど私はサイボーグなんてものじゃないわよ? ただ、ね…人間の感情はときにすごいパワーを見せる。それがどういう原理か知りたいだけ…」

「おまえ…人間じゃ、ないのか…?」

「さぁ…? それはわからないわね」

「ふざけるんじゃない!」

「…私は至って真面目よ? 本当に自分が何者か知らないだけ……。

今回はヒント無しで教えてあげたんだから感謝しなさい…。

さて、それじゃそろそろ始めましょう? あなたもそれが目的でここまで追ってきたのでしょう…?」

「…不本意ですが、いいでしょう。解咒!!」


カッ!


「出でよ! 水龍!!」


海斗は解咒したと同時に薙刀・水龍を右手に、水の針を左手に出した。完全に本気モードだ。


「そう。ならば…長針刀!」


ズワァッ!


「!?」


海斗は驚愕した。それは水の針を最大限まで高め刀状にまで仕上げた殺人専用の美薙流針術。そして姉・遥海のもっとも得意とする術だったのだ。


「…貴様! どこまで遥海姉さんの真似をすれば……気が済むんですか!?」

「…さて? 真似か本当の実力か…? 二択の内どっちでしょうね?」

「くっ…!」

「それそれ! 考えている暇はないわよ!」


ダッ!


「!?…っ!」


ガキンッ!


仮面の女は一気に間合いを詰めて長針刀を叩きつけてきたため海斗は瞬時に水龍で受けとめた。


「っ! たぁーーーッ!!」


ガンッ!


海斗はなんとか弾き返す。


「!」

「今だ、美薙流針術!凪!」


ビュンッ!


「破砕針!」


シュンッ!


仮面の女は海斗が凪を放つことをあらかじめ見計らっていたためすぐに破砕針を放ち軌道が変わる直前に砕いた。


「ならば! 十二支が必殺! 砿牙水竜鞭!!」


ドパァッ!


薙刀を振り下ろした突如、水龍からその名の如く竜の形をした水撃が飛び出した。


「なに!?」

「これは避けられますか!?」

「この程度…避けてやるわ!」

「…できますか?」

「なに? なっ…!」


水の龍は仮面の女が避けた方へと向きを変えて追跡しだした。


「この術には追跡の効果があるのね?…いいわ。それなら対抗してあげる。長針刀よ!」

「なにをするつもりですか…?」

「見せてあげるわ。長針刀の本当の使い方を! 行け! 凪!!」

「なに!?」


仮面の女は突然その巨大な針を使い凪を放った!

そして追尾してきた水の龍を逆に迎え撃ち激突してどちらも消滅した。


「…長針刀に、あんな使い方があったのか…」

「そうよ。さて今度はこちらからね? ふっ!」


すると仮面の女のまわりに長針刀が何十本も出現した。


「なっ! あれはまさか!」

「美薙流針術奥義…天叢雲剣乃矢!!」


ビシュシュシュシュシュシュ…!


そして放たれた…。それはまさに神の光の矢のマシンガン。

それらが一本でも当たれば死は絶対に免れられない。

その最大のわけはこの術は“叢雲”と同じく爆発の効果を持ち威力はダイナマイト以上だからだ。


「くうぅっ! 間に合え…! 美薙流防御術! 反射陣・八咫鏡乃盾!!」


そして海斗は直感、そして迫る死の恐怖から本能的に避けることは不可能と強く感じ防御術を最大限で展開した。

その術の名は仮面の女が放った“天叢雲剣乃矢”と同じく古代神話に登場した三種の神器から取られているため力の度合いは同じであろう。後はそれを扱う術者の精神力が頼みの綱だ。


「ぐうぅぅぅ…!!」

「ハアァァァァァア…!!」


次々と天叢雲剣乃矢を放つ仮面の女、それを反射陣・八咫鏡乃盾で爆発の最中なんとか直撃を防いでいる海斗、どちらも力を惜しむことなく発揮している。

限界は、近い…。


そして海斗が先に片足をついてしまいそこを突いて仮面の女が最後の一撃をたたき込もうとしていた矢先のこと、


『(ダメッ!!)』

「っ!? あああああっ!!?」


突然仮面の女は誰かの頭に響く声を受けて頭を抱え苦しみだした。

そこを狙ってないはずもなく海斗が反射陣・八咫鏡乃盾の本当の力を発揮させた。


「今が…チャンス! 跳ね返せ! 反射陣・八咫鏡乃盾よ!!」


海斗がある印を組んだ瞬間、仮面の女の放っていた天叢雲剣乃矢を爆発していない残りすべてをその名の如く跳ね返した。


「ッ!? しまった…!」


そしてすべて仮面の女がいる付近を直撃しすごい爆発音とともに煙があがった。

それから、


「…直撃は避けました。ですがこれであなたは動くことはできない。さぁ教えてください! 遥海姉さんをどこに隠しているんですか!!」

「……、まだ動けるわ」


すると仮面の女は足をふらつかせながら立ち上がり長針刀は出せなくも小さい針を何本も出現させた。


「もう無駄ですよ…今出した針でさえ最後の抵抗なのでしょう…?」

「まだ…手はあるわ」


少し海斗から離れている場所で仮面の女は一本の黒い針を取り出し己自身に刺した。


「ぐっ…!」

「今のはまさかあの時楓さんのおじさんに刺した黒針!」

「その通りよ…ここまで私を追い込んだことは誉めてあげるわ。だけどこちらには闇の王の力がついている! 負けるわけにはいかないのよ!」


すると刺した部分から体が黒に変色していき仮面の女は力が戻ったのだろう、また長針刀を出して構えをした。

その哀れな姿を見て海斗は、


「…わかりました。なら、これで終わりにさせます! 十二支が奥義の一つ! 水圧幻爆落!!」

「!?なんだこれは!!」


突如仮面の女を水の球体が覆いつくし閉じ込めた。


「そのまま…空へと上がれ!」

「っ…あぁぁっ!」


仮面の女が閉じ込められた球体は空高く飛び上がっていった。


「…本当ならここで水圧とともに突き落としてやるべき術ですが…今日この時だから使える美薙流針術を使わせていただきます」

「…なに?」

「美薙流針術裏奥義…天地鳴動!!」


海斗が複雑な印を組み上げ天へと指をあげ、その術の名を言い放った瞬間、


ゴゴゴッ…


突如、辺りすべてを静寂が支配し海斗は指をあげたまま仮面の女を睨んでいた。

最後の警告かのごとく…。


「………」

「ま、待て……!」

「…もう一度質問です。姉さんはどこです? そしてどうしてあなたは美薙流針術を使える!?」

「…こんな時になにかと思えば…またそれ?」

「真面目に答えてください!」

「…いいわ。この際だからね…あらいざらい教えてあげるよ。…私は、なにも知らないわよ」

「なに…?」

「私はな、初めて私が私だと気づかされた時からずっと闇の王のとこにいた。

そしてこの“美薙流針術”と“針水晶”はその時からすでに手元にあった。闇の王からはおまえの姉は生きているとだけ聞かされただけ。それだけだ」

「最初から…持っていた? そんな馬鹿な話が…」

「それが真実だ。…でも、まぁ…闇の王はああ言ってはいたが実際おまえの姉は…もう死んでいるかもね? ふふふっ…」


仮面の女は不適に笑いを零した…その人を見下すようなそんな嫌悪感的な行為についに海斗の怒りに火を付けてしまった。


「ふっ…そうですか。わかりました…もうあなたに聞くことはありません。ここでお別れです!」


バッ!

海斗は再び大雨が降り注ぐ中で印を構え、そして大きく振り下ろした。

するとどうだろう、先程まで普通に地面に降り注いでいた雨がすべて水針と化して仮面の女を襲った。

もう叫びもあげようとしない仮面の女、そして次々と針が仮面の女に刺さり…その憎たらしい仮面をも半分砕き、仮面の女の素顔が半分露出した。

すると海斗はあまりの衝撃に一瞬頭が真っ白になった。そう、その露出された顔こそが、


「…遥、海…ねえ…さん……?」


海斗の実の姉、遥海の素顔だった。


「…そう。この顔はおまえの姉のものだったか…」


雨の針が降り注ぐ中、仮面の女が喋りだした。見ると針で貫かれた場所から次々と機械的な部分が見えだした。


「…そうか。私も機械だったのね。私が今まで散々こき使ってきた道具と同じ機械人形…実に滑稽だわ…」

「……――れ……」

「…でもこれで楽に、なれる」

「……―――まれ……! 止まれ! 止まれ! お願いだから止まってくれ!!」


海斗は叫んだ…。

だが天地鳴動は一向に止まない。

当然のことだ。この術は解き放ったが最後、対象物が死に絶えるか…はたまた雨が止むか、それしか止まる方法がない完全無欠の殺人術なのだ。

それを分かった上で海斗はそれを使った。

最初は脅しのつもりで出した術だったがカッとなり発動してしまってはもうどうしようもない。

だが海斗は叫んだ。たとえ偽物だったとしても実の姉と同じ顔をした者をどうして殺められようか…、だがその叫びも虚しく雨はより一層威力を増し続けた。


「やめて…くれ。僕は姉さんを…殺し…たくない…!」


そして大粒の雨の固まりが仮面の女の胸を貫こうとして、


「お願いだから止まってくれーーー!!」


海斗の最後の叫びとともに仮面の女の胸を針が貫ぬ…かなかった。

不思議に思った海斗は泣き崩れた顔を上に上げると仮面の女の頭上にはなんと漆黒の風が浮いていた。

そして次々と降り注ぐ雨の針を漆鱗月で音速のスピードで砕きながらもう片方の手で天に向けなにか巨大な波動を放った瞬間、雨が止み夕日が顔を出した。


「………」

「…これで、いいだろう…」

「…どうして…?」

「…ただ、『止めてくれ!』と声が響いてきた瞬間俺はこの場にいた…それだけのことだ…」

「…どうして…、私を助けた…?」


ボロボロでほぼ手足は機能を停止している仮面の女が喋りだした。


「…『助けてあげて!』と、女性の声が聞こえた…だから助けた…」

「…本来の、この体の持ち主かもね…?」

「おい、貴様。名前は…海斗といったか?」

「どうして、僕の名を…?」

「そんなことはどうでもいい…海斗、お前の『怒りに任せた戦いはしない』という志しはどうした…?」

「なぜ…それまで…?」

「いいからどうした!?」

「…それは…」


海斗は言葉に詰まってしまう。


「…咎めたりはしない。だが今度それを見失った時には俺はお前の敵になる…それだけは覚えておけ…」

「…はい」

「…ならばいい。さて、この女だが当分俺が預かる」

「え…?」

「俺が一緒にいれば奴らには気づかれまい…傷は俺の方でなんとかする。お前は…仲間のもとへ早く帰ってやれ。ではな、海斗…」


そういって漆黒の風は仮面の女を連れてその場から消えた。


「………」


トサ…ッ…

海斗は、安堵と後悔の念で砂浜の上で足を落とし手をつき震えていた…。

するとまた雨が降り注いできたために海斗は足をふらつきさせながら帰路につくと自分の家の前に雨の中、人影があった。

そう、真紅が立っていたのだ。

その姿から悲しみを感じられたがそれでも美しいという言葉が似合っていた…


「…真紅、さん…?」

「あ…海斗くん!」


ドサッ!

真紅は思い切り海斗を抱き締めた。


「…約束守ってくれて…帰ってきてくれて…ありがとう。私…私…うれしいの…」

「…ありがとうございます…。でも約束…一つ破ってしまいました…」

「え…? あ…」


ギュッ…。


「………」


海斗は真紅を逆に強く抱き締めて無言で泣きだしていた…。


「海斗くん……。…大丈夫だよ。海斗くんはきっとまだ約束は破ってないわよ。だから…今はゆっくりと泣いていいよ」


真紅は海斗の頭をまるで子供をあやすかのようにゆっくりと撫でて上げた。


「…すみません…」

「いいのよ…謝らなくて…」

「…はい。少しこのままで、いさせてください……」

「……うん……」



◆◇―――――――――◇◆



星林町の海岸線洞窟では、


「…これで、よかったんだな…? 漆鱗月…いや『誠子(せいこ)』…」


するといつの間にやら手に入れていた三つ目の舞架の心の一つ、橙色の欠片に漆黒の風は話し掛けていた。


カッ!


「…あぁ、うん。生まれ変わったとはいえ水滸にまた悲しい想いをさせたくは、ないからね…」


人の姿になった舞架似の活発そうな少女・誠子がそういうと、


「…そうか」

「…で、実際どうする? あたし達だけじゃこの子直せそうにないけど…」

「…なんとかやるしかない」

「そうだね。でも、あんた…」

「なんだ…?」

「…いや、なんでもない」

「…?」

「(優しいところは全然変わってないよな…)」


誠子はそう思いながら漆鱗月へと戻った…




――to be continued.


実は仮面の女は…というのが今回の注目ポイントです。

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