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イニシエからの絆  作者: 炎の剣製
55/71

055話 『因縁の相手の誘い』

タイトル通り、とある人物が海斗を誘います。





あの後、ラビは少し悩んだ末やはり雲隠家に住まうことになった。

幸い体の件に関しては特に目立った機械の部分はなく日常生活にも支障はない。

稼働にかんしての必要なエネルギーなどもガリウスが調べた結果、人間と同じ食事量を取りある程度睡眠時間を取れば大丈夫だと結論がついた。

だがラビはまた普通に暮らせることに迷いを感じているようだがもう一番の親友なのであろう静を始めほぼ同一の理由で暮らしている瑪瑙などに励まされて今はなに不自由なく第二の人生を歩み始めたのだ。




6/20(日)





とある武道館。そこでは大雨が降り注いでいる中、真紅達バレー部が地区大会優勝を賭けて他校との決勝試合を行っていた。


「真紅! いったわよ!」


海耶が真紅に指示を出す。


「はい部長! これで決めます! スマッシュ!!」


ズダンッ!


「あっ!?」


ピーーーッ!


「ゲームセット! 勝者、聖梁学園バレー部!」

「やった! やったね真紅!」

「はい、やりましたね!」

「お姉ちゃんおめでとう!」

「ありがと鈴架!」


そんなやり取りを観客席で見ていた一同は、


「優勝しましたですね、真紅さん達」


瑪瑙がそう言葉を発する。


「そうだな。だがまだ次は県大会が待ち構えているから気は抜けないな」

「そんな堅いこといってねぇで今は優勝の余韻に浸らせておこうぜ、秦兄?」

「そうですよ秦兄さん」

「そうか? ま、そうだな。ところで海斗くんはどこにいるんだ? さっきまでいたと思うが…?」


秦の質問にクリスが反応して、


「海斗さんですか? なにかガリウスさんとお話があるといって試合が終了しました後一緒に出ていかれましたよ?」

「なんの話ですかね?」

「さぁな? ま、大事な話かなんかだろ?」


一同がそんな話をしている中、海斗はガリウスと会話していた。


「それで…どうしたの?」

「…はい。それが――…」


海斗は一昨日に漆黒の風との間に起きた事を話した。


「………」

「………」


二人ともしばし無言。だがガリウスから口を開いて、


「…それは、本当なのですか?」

「はい。あれは幼くはありましたが間違いなく凶さんと紅葉さんでした」

「…でもそれならどうして彼女達はクリスタルに姿を変えているのかしら…? 呪いを解いた時、一つの魂として舞架さんと分裂して世界中に散らばっていったはずですのに…」

「わかりません。ですが必要以上に影はその水晶の欠片を狙ってきたそうです。もしかしたらこれはまだ舞架さんを救えるヒントになるかもしれません!」

「そうね」

「それともう一つ、漆黒の風のことですが彼は漆黒の風になる以前の記憶がないそうです。それで輝羽さんと話し合った結果もしかしたら…」

「え…! そんな奇跡的なことが…」


ガリウスは海斗が言いたいことがわかったのか口を手で押さえて少し目に涙をためる。

それに海斗は、


「ただの憶測です。まだ真実とは限りません。ですがこれから僕達がしなければいけないことが一つ判明しました」

「残りのクリスタル収集ね? 凶さんと紅葉さんが戻ったとすると後は、

舞華(まいか)』さん、

誠子(せいこ)』さん、

霏凪(ひな)』ちゃん、

勇火(ゆうか)』さんの残り四人ね」

「はい」


「ソレイユ先生!」

「海斗くーん! ソレイユ先生! 優勝しましたよ!」


二人が話をしている時に、観客席の下から気付いたのだろう真紅と鈴架が呼び掛けてきた。

それに二人は手を振りながらも、


「今日はここまでですね」

「そうね。私は少し裏から調べてみるわ。みんなによろしくいっておいてね」

「はい」


そして海斗は真紅達のもとへ、ガリウスは一人調べ物と“ある人物”を探しに会場を出ていった。

それから帰り道、

真紅達は海耶らバレー部員達と別れた後、いつものメンバーで傘をさしながら話をしていた。


「優勝できたね、お姉ちゃん!」

「そうね。でもまだまだ地区大会を突破しただけだから気を引き締めていきましょうね!」

「うん!」

「頑張ってくださいね。あ、それと奈義会長のお話によりますと授賞式は明日の朝の集会にて行われるそうですわ」

「そうか。なら緊張しまくってる鈴架が見れるわけだな? クククッ…楽しみだぜ!」

「翔…あんたねぇ。式中になんか言ったら承知しないんだからね!?」

「んなことしねぇよ。…でもそれもいいかもな?」

「あ、しまった! 翔にいらない塩おくっちゃった!」

「大丈夫ですよ鈴架さん。そんなことしたら明日は翔兄さん食事抜きにしますから。ね、秦兄さん?」

「ん? ま、衛巳がそういうならな」

「くっ…くそ。しねぇよしねぇ!」

「それでいいんです翔兄さん」


みんなが騒いでいる中、海斗はなぜか暗い面持ちで無言でみんなの後をついてきていた。

当然気付かないわけがなく真紅は海斗に話し掛けてみた。


「ねぇ海斗くんどうしたの…? どこか具合が悪い?」

「…え? あ、いやすみません。大丈夫ですよ。最近雨ばかり降り続けているので…僕は雨が苦手なので気が滅入っているだけですから」

「そうなの…?」

「しかし、意外だな」


翔がその話を聞いて意外だと言う。


「なにがですか?」

「だってよ、海斗お前属性水だし武器も水で作ってるじゃねぇか?」

「それはそうですが…水と雨は似て非なるものですから。それに…過去それで痛い目にあいましたから」

「痛い目…? なにがあったんだ?」

「いえ…思い出したくないのでここは…」

「そうか、すまない」


鈴架はそれを聞いて、


「(昔なにがあったんだろう海斗さん…?)」

「(わかりませんね。でも海斗さんが嫌がるほどなんですから相当すごいことだったんでしょうね…)」


ガサッ…


「?…(この気は! まさかこんな時にくるなんて…今日“やつ”は“ついていない”ですね…)」


海斗はそんな事を思いながら真紅達に話し掛けた。


「すみませんみなさん、ちょっと用事を思い出したのでここで失礼します」

「あ、はい」


そして違う道を行こうとしたところ、突然海斗の服の袖を真紅が強く掴んできた。


「…どうしたの? また一人で戦おうとしているの?」

「えっ…(真紅さんには心配はかけられない…それがたとえ嘘つきだと言われても…!)」


そう決意した海斗は苦笑いを浮かべながらある言葉を真紅に送った。


「大丈夫ですよ真紅さん…たとえなんであろうと僕は必ず真紅さん達のもとに帰ってきますから。もう前のような思いは絶対にさせません!」


ダッ!

海斗はそう言い切ると違う道を駆け抜けていった。


「海斗くん…なんで…どうしてなの…?」

「…真紅、海斗を行かせてやろうぜ?」

「そうだな…こればかりは俺たちには介入できないからな」

「え? 翔も秦先輩もなにを…?」

「…感じなかったか? 仮面の女の気配を…」

『!!』


真紅はそれを聞いた瞬間、顔が一気に青ざめた…。


「そ、それじゃ海斗くんは…?」

「きっと自ら戦いにいったと思うです…」


瑪瑙も気づいていたらしくそう答える。


「そんな! それじゃ助けにいかなきゃ…!」

「待て真紅!」


秦は走りだそうとした真紅の腕を無理矢理掴み動きを止めた。


「離してください秦さん! 早くいかないと海斗くんが…!」

「………」

「海斗、くんが……」


すると真紅は足を雨が降る中地面について泣きだしてしまった…


「秦兄さん! ひどいです!」

「………」


衛巳の初めて秦に対しての怒りのこもった叫びが浴びせられたが秦はいっこうに真剣な顔で黙り込んでいた。


「ちょっと…ねぇ、翔も瑪瑙ちゃんもなにかいってよ! 海斗さんをこのままにしちゃったら…」

「そうですわ! 間違いでもありましたら大変なことになりますわ!」

「………」

「………」


だが翔と瑪瑙も秦と同じく黙りを決め込んでいた。


「ッ…わかりました。三人がいかないなら私たちだけでいきます!…さ、いこ? お姉ちゃん…」


鈴架が力が抜けて動けないでいる真紅を連れていこうとした時、翔が叫んだ。


「あいつが…海斗が言った言葉を忘れたのか!?」


そして秦と瑪瑙も、


「海斗くんは…『必ず帰ってくる』といった。…その覚悟にも勝る言葉をいうのに海斗くんがどれだけ苦しい決断をしたことか…」

「そして海斗さんはこうもいいましたです! 『もう前のような思いは絶対にさせない!』と…」

「………」


それで鈴架とクリス、衛巳は黙り込む。


「信じてやろうぜ…あいつのことを。海斗ならきっと帰ってくる! 俺はそう信じたからなにもいわず行かせた!」

「俺もそのつもりだ。海斗くんならきっと、とな」

「はいです!」

「そして“もし帰ってこなかったら…”とか絶対に考えるんじゃねぇぞ?」

「翔…あんた」

「秦兄さん、瑪瑙ちゃん…ごめんなさい。海斗さんの気持ちも考えないで、私…!」

「わかってくれればそれでいい…。だから、今は海斗くんが帰ってくることを祈ってやるんだ…真紅も、みんなも」

「うん!」

「「はい!」」

「…、うん。そうですね…私も信じます…海斗くんが帰ってきてくれることを…!」


真紅は零れ落ちる涙を拭って笑顔を見せた。


「…でも秦先輩はいいとして翔? あんたちょっとかっこ良すぎだよ…?」

「う、うるせぇな!俺はただ思ったことをそのまま口に出しただけだぜ!」

「そうだね…私も信じるよ。」


それで全員は海斗が走っていった道を眺めているのだった。




――to be continued.


次回、戦いです。

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