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イニシエからの絆  作者: 炎の剣製
53/71

053話 『ある者の依頼、ニーグ登場』

仕事人時代のメンバーが揃います。


闇の王の城では、


「………」

「………」


そこでは闇の王が一つの玉座に座ってただ眠り続けている少女を見つめていた。


「…、なぜだ? なぜ、まだ眠り続けているのだ? これではわたくしの計画が…」


闇の王は計画が発動できないことに苛立ちを感じているのだった。



◆◇―――――――――◇◆



一方、とある深い森で、夜中のこと、大柄の男が何体もの影に追われていた。


「…はっ、は……」

「シャアァーッ!」

「しつこい奴らなんだな…! エアーハンマー!!」


ズゴアァッ!


その謎の男は武器の棍棒に風を纏わせて影の群れを粉砕した。


「…もう俺っちだけじゃこれを守り切ることは無理なんだな…。“あいつら”に力を借りるんだな!」


そういって男はあるものを懐に抱えながら暗い山道を走り抜けていった。






そして星林町の海岸線の漆黒の風が潜伏している洞窟で、


「くっ!? ぐあっ…! なん、だ…この感覚は…!?」


漆黒の風はなにかの衝動に起きて、そして頭をかかえ苦しみだした。


「漆鱗月よ…なにかが、来るのか?」

『………』

「……そうか」


そしてなにかを理解したのだろう、漆黒の風は洞窟から外に出てどこかへといってしまった。

色々な場所で、一つの大きな騒動になりうる事件が起きる前触れなのかもしれない夜が過ぎて…、



◆◇―――――――――◇◆



6/17(木)



その日は季節が梅雨に入っていたため雨が降り続いていた。

速水邸では、雫が窓から外を見ながら


「…雨、ね…」

「そうでございますね雫お嬢様…。もう梅雨ですから…」


リアが雫にそう返す。


「こーいう日は外で運動ができないから気分が憂欝になるから嫌なのよね…」

「そうでございますか。でしたらお出かけになられますか?」

「え? や、別に気にしなくていいのよ?」

「まぁそう仰らずに」

「…なにか今日のリアはいつもと違って強引ね?」

「そうでございますか? なんらいつもと変わりはありませんよ?」

「そう。ま、いいわね。それじゃ行きましょうか! 行ったからにはとことん付き合ってもらうわよ、リア!」

「お任せください!」


そして雫は身仕度をし、リアも滅多に着ない外出用の服装に着替えていつもより小型の車で家の外に繰り出していった。

ちなみに縁は午前中ずっとメイと話をしていて疲れて寝てしまっていたため今日は二人だけだ。


…それから二人は海岸線の道を通り隣町まで足を運んで久しぶりに思いっきり買い物をして時間も七時過ぎになり帰ることにした。

帰り道に、


「ふぅ~、かなり買ったわね。縁やみんなのお買物もできて今日はいい気晴らしになったわ。サンキュね、リア」

「いえいえ、私も久しぶりに楽しめましたからよいですよ。…、ん? え!」


キキィッ!

リアはなにかに驚いて突然急ブレーキを踏み車を止めた。


「わ、とっ! ど、どうしたのリア!?」

「大変でございます、雫お嬢様! あれを御覧ください!」


雫が指差した方向を向くとなんと大柄の男の人が道の真ん中で傷だらけになって倒れていた。


「あれは…『ニーグ』さん!? 間違いないわニーグさんよ! リア! 早急に救護班を手配して! それとこの事は屋敷内の者達には内密にね!」

「分かりましたわ、お嬢様!」


リアはすぐに救護班に連絡を入れ、ニーグと呼ばれる男は直ぐ様速水邸の医務室に秘密りに運ばれた。

そして翌日、




6/18(金)



速水邸・特別医務室ではニーグは寝かされていたが、


「…む…ぐっ…んぐ? ここ、は…?」

ニーグは目を覚ましたようだ。当然のことながらここは何処だろう?と辺りを見回すニーグは入り口の方から雫に声をかけられた。


「お目覚めはどうですか? ニーグさん。」

「速水…? じゃここは…」

「そう。あたしの家よ。安心して…あなたのことはあたしを含めごく一部の者にしか知らせていないですから」

「そうか…助かったんだな。…あ! 俺っちの抱えていたものは!?」

「あれのことね…大丈夫、ちゃんとあなたの荷物の中に入れておいてありますから。それよりあれは一体…?」

「わからないんだな。どこから流れてきたかは謎なんだが依頼人に、


『時が来るまでこれを守ってほしい』


なんて言われて今もがんばって守ってるんだな」

「その依頼主の名は…?」

「わからないんだな…」

「え? どうして…?」

「聞く前にその場にいたものすべてが謎の黒い影の群れに殺されてしまったんだな…俺っちを逃がすために!」

「(影…!?)」


雫は影の存在が出てきたことに内心で驚く。


「だから俺っちは依頼主達のためにもなんとしてでもこれを守り切らなきゃいけないんだな…!」

「わかりました。ではあたし達も手伝いますよ!」

「いいのか…?」

「はい!」


雫は握りこぶしをつくりその意を見せた。


「それじゃあたしだけじゃ不安なので久しぶりに…みんなを集めますか?」

「久刻と睦月はわかるとして海斗の所在はわかるのか?」

「えぇ、現在海斗くんはこの町に住んでいますから」

「そうか…みんな元気なんだな?」

「はい。それじゃちょっと待っていてくださいね。すぐに呼んできますので」

「わかったんだな」


そういい雫は部屋を出ていった。そしてニーグは、


「(雫…やっぱりあの影のことを知っていたんだな。顔を見ればわかる…もしかしたら俺っちは余計なもめ事を持ち込んでしまったかもしれないんだな…)」


ニーグはそんなことを考えていた。一方ニーグの預かった謎の青い水晶の欠片はなにかに呼応するかのように少しずつ光り輝いていた…







そして何かに導かれるかのように町を影から影へと移動していた漆黒の風はまた頭の頭痛に苦悩していた。


「(ぐうぅぅぅ! なんだこの痛みは…!? 俺はこの感覚を知っているのか!?)」


その時、漆鱗月の中心にはめ込まれている黒い水晶の欠片らしきものが輝きだした。


『(…近くに、いる…我ら主人の一部分…)』

「(…なにが起きているのか知らないがようはお前と同じ形の宝石を見つければいいわけだな…? 漆鱗月?)」

『………』



そしてまた場所は戻り、



そこには雫をはじめ学校帰りの久刻、海斗、睦月…それにスピネスがいた。


「お久しぶりですニーグさん。それに睦月くん」

「はい、海斗お兄さん。それで…傷は大丈夫なんですか? ニーグおじさん?」

「もう大丈夫なんだな。しかしよく俺っちのために来てくれたんだな」

「それは当然のことですよ。仲間がピンチならば助けるのが道理」

「それに影に襲われたと聞いては黙って見過ごすことなんてできませんからね」

「あの影がなんなのか知っているのか海斗!」

「それならあたし達も知っているわ。なにせ一時はその影達の仕業でこの町が終わりそうだったからね」

「はい。あの時は海斗さん達が大本と戦っている間、分散して影の群れを俺たちで駆除していましたからなんとか死人は出ませんでしたが…」


雫と睦月の話を聞いて海斗は「やはり…」という表情になり、


「やっぱりでしたか。あの時はお礼も言えずすみませんでした」

「なに。この町に住む者として見過ごすことはできなかっただけだ。だから気にしなくていい海斗」

「はい」


四人が話し合っている中、ニーグだけは話が見えずに、


「…話が見えないんだな。俺っちにも説明してくれ」

「そうでしたね。すっかり話が脱線していましたね」

「あ、それなら混乱する前にもう一つ。あたしのパートナーを紹介するわ。スピネス、いえ輝羽さんよ」

「お初にお目にかかります。わたくしは輝羽といいます。ニーグさん」

「よろしくなんだな。輝羽」

「…驚かないのですか?」

「まぁ似たようなもんだからなぁ」

「それはどういう…」

「それより話を聞かせてくれなんだな!」

「………」


輝羽はどういう意味かを聞こうとしたがニーグは突然話を切り替えてはぐらかした。


「(この人にはなにか言えない事情があるんですね)」


輝羽は自己納得し静かに話のなかに入っていった。

そして皆はニーグに今この町、いや世界で起きている出来事を話した。

ニーグはまさか…と顔を歪ませたが一同の真剣な表情、そして実際影に襲われていたこともありこれは真実だと受けとめる他なかった。


「そんなことが起きていたんだなぁ。じゃ俺っちが受け取ったこの青い水晶の欠片もなんらかの理由で狙われていたんだとしたら絶対渡すわけにはいかないな」

「そうですね。それで雫さん、やはりこの件に関しましては真紅さん達には内緒にしておいたほうがいいんですよね?」

「えぇ、頼むわ。まだあたしと睦月くんは正体をバラす訳にはいかないからね」

「はい。まだその時ではない、ということです。それに久しぶりに皆さんと仕事ができるんですからお願いしますね、海斗お兄さん」

「わかったよ睦月くん」

「ではとりあえず今日はニーグさんのこともありますことなので家に今日は用事があるので帰れないと伝えておきます」

「じゃ俺も。雫お姉さん、電話借りてもいいですか? うちの母さん、かなりの心配性なんで」

「わかったわ。はい、携帯」

「ありがとうございます」

「海斗はいいのか?」

「平気ですよ。まぁ…帰っても誰もいませんし」

「あ、すまん! そうだったんだな…」

「気にしないでください。慣れてますから」

「でも、本当にいいのかな~?」


雫がなにか思いついたのかニヤついている。


「…なにかいいたそうですね?」

「別に~…ただ真紅達はお隣でしょ? 帰ってこないと分かって心配してないかと思ってね。よく夕飯に招かれているって真紅達から聞いたから」

「え!?」


すると海斗は一気に顔を赤くした。


「そうであったか。ならやはり連絡しておいたほうがいいのではないか? 海斗」

「そうですよ、海斗お兄さん。真紅お姉さん達はあれでかなり心配性なんですから」

「っう…。はい…わかりましたよ…」


そう言い残すと海斗は顔を赤くさせながら渋々真紅に携帯で連絡を入れていた。


「…ところで雫先輩。」

「ん? なに久刻くん?」

「真紅さんに聞いたというのは嘘ですか? それとも本当のことですか?」

「ん~…それは企業秘密♪」


雫は笑顔で返したが明らかに追求するなということがひしひしと伝わってきた。


「ふぅ…やはり敵いませんね」

「今も色々と苦労しているんだな…」





――to be continued.


次話に続きます。

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