005話 『お昼休みの出来事』
まだ学園のほのぼのな日常が続きます。
中庭に移動した三人はあの中から抜け出せて一息ついていた。
「はぁ、はぁ…やっと抜け出せたね…」
「そうですわね…でもこれから二人とも毎日大変そうですよね」
「?…なんのこと?」
鈴架とクリスがこれから大変そうだと話しているが当の真紅だけ何のことか分からないといった顔をしていた。
「はぁ~…本当にこんな時はお姉ちゃんのこと羨ましく思うわ…」
「だからなんのこと…?」
「…ですわね」
「だからなんなのよぉ~!?」
鈴架がため息をつき、クリスもそれに賛同している。
それで真紅はますます分からないといった感じになっていた。
「……!!」
「はっ!?」
だけどその時、真紅は何者かの敵意ある視線を感じ取った。
「えっ…どうしたの?…お姉ちゃん?」
「…真紅さん?」
「早く二人とも私から離れて!」
真紅が自分から離れるようにと言う。その表情は少し焦っている。
だがもう片方の感情では真紅は「またか…」と心の中でため息をついていた。
「え…?」
「早く!」
「う…うん…」
それで二人は真紅のそばからお弁当を渡されて離れると途端に、
「でやあぁぁーーー!!」
ズガンッ!
「くっ…!」
「あ! あのツンツン頭! もしかして…!」
真紅はなんとか叫び声の主の攻撃をかわした!
鈴架も誰かわかったようで声を荒げていた。
「ちっ…よけたか」
「ふぅ…また君なの? “翔”くん!」
「おぅ! 真紅よぉ~、俺と勝負しやがれ!」
彼は『雲隠翔』。
生まれた月は10/24の天秤座。
髪は先程鈴架が言った通りツンツンと逆だっている。
聖梁学園の鈴架と同じ学年、同じクラスで性格は勝手気儘でお調子者の少年だ。
なぜか小さい頃に真紅に喧嘩で負けたことを今でも根に持っているがためか、よく真紅に喧嘩をふっかけてくる。祖父の趣味が受け継がれて忍者修業もしているらしく動きは素早い。
「翔! またあんたなの!? お姉ちゃんにつっかかるのいいかげんにやめなさいよ!」
「うるせぇ、外野はすっこんでろ!これは俺と真紅との問題だ!」
「問題って…あんたねぇ…」
「いくぜ!」
「あー…始めちゃった」
「あ…あ…神よ…わたくしはこの争いをどうやってとめればよいのでしょうか…?」
クリスは胸の十字架を握り締めながら戸惑っていた。
「…ふぅ…大丈夫ですよクリスさん。翔の攻撃はお姉ちゃんには絶対あたりませんから!」
「え…?」
「ほら、みて」
鈴架が指差しクリスはすぐに二人へと視線を向ける。
そこでは、
「おらおらおらおらおらおらっ!!」
「もう…」
真紅は翔の拳を紙一重、いやしいていうなら踊っているかのようにかわしていた。
「なぜ当たんねぇんだ!?」
「翔くん…あなたの攻撃はいつも大振りすぎなのよ。だからかわすだけならどうということないわよ?」
真紅は攻撃をかわしながら翔に話し掛けていた。
「し、真紅さんすごいですわ…! 一つも当たらずに避けています!」
「くそっ!あたれあたれあたりやがれぇ!!」
翔は拳が当たらず焦りを見せているそんな時だった。
「やめないか、翔!」
『!?』
「こ、この声は!?」
その時、翔の後方から声が聞こえたと思い翔は後ろを振り返ってみたが誰もおらず、気付いたらその人物は真紅の隣に立っていて翔の頭に拳を打ち下ろしていた。
ズガッ!
「うがっ!?」
「あ、“秦”さん!」
「ふぅ…大丈夫だったか、真紅?」
彼は『雲隠秦』。
生まれた月は2/14の水瓶座である。
髪は翔とは違い整っていて優等生のオーラを醸し出しているようだ…と評判のこと。
真紅の一つ年上の18歳の高校三年で性格は曲がったことはかならず許さない真面目な青年だ。
彼は翔の兄で家が雲隠流剣道場を開いており、秦自身も剣道部の部長をしている。当然真紅などとは知り合いだ。
「っう~………いってぇ…なにしやがる秦兄!!」
「なにをしているのか聞きたいのはこっちのほうだ! まったく真紅につっかかるのはやめろとあれほどいっただろうに…」
「秦兄…俺は!」
「言い訳なら後でいくらでも聞いてやる。だがその前に…わかっているな?」
「わかったよ、たくっ! すまなかったな真紅…」
ゴッ!
「ぐわっ!」
「謝罪の意が感じられん! もう一回だ!」
「うるせぇな! ちゃんと謝ったんだから俺はもういくぜ!」
シュッ!
そして翔はすさまじい跳躍で森の中へと消えていった。
忍者修行で跳躍力が普通の人間を超えているところがなかなかというところである。
「翔!…全く困った奴だ。すまないな真紅、俺の弟がいつもお前に迷惑をかけて…」
「いえ…怪我はしませんでしたから気にしないでください秦さん!」
「そうか。すまんな、本来なら君は怒ってもいいべきなのにな…」
「そうですよ!お姉ちゃんが本気を出せば翔なんか目じゃないんだから!」
秦の言葉に鈴架も加勢する。
反撃もせず受けだけになって暴力は振るわない真紅は確かに偉いことである。
「いいのよ、鈴架。ここは学園内だからそんな事できないし…それに無益な争いはなるべく避けたいじゃない? だからこれでいいのよ」
「さすが真紅さんですわ!」
「まさに生徒の鏡だな。それより一つ聞きたいのだが山で修業をしている翔の攻撃を一発も当たらずによくかわしていたものだな。なにかやっているのか…?」
「いえ…ただ相手の動きをよく見てかわしているだけですから…武術とかはそんなに…」
「しかし翔の動きはもう普通の人間の動きを越えていると思うのだが…それを見切っているとはやはり真紅はすごいな! 今からでも遅くはない、我が剣道部に入部しないか?」
「あ…それはえっと…」
真紅はそれで少し困りの表情になる。
秦はしばらく黙り込み、
「………、はははっ! 冗談だ! 真紅はバレーが好きで入った事は知っているからな! 変なことを聞いてすまなかった。それじゃもうすぐ午後の授業が始まるのでまたな、三人とも!」
「「「はい!」」」
そして秦は笑いながら校舎内に消えていった。
「さっきのは冗談に聞こえなかったよね、クリスさん?」
「はい、とても真剣な目をしていましたわね。ね、真紅さん…あら?」
「やっぱり秦さんて格好いいわよね…」
「お姉ちゃん…まさか秦先輩のこと…?」
「え? そんなことないわよ? 単純に秦さんは強くて格好いいなと思っただけ」
鈴架は真紅の物言いに何かを感じ取ったのかすぐに聞いた。
だが真紅は慌てる事もなく冷静に語っていた。
「なんだぁ…その様子だと脈はないのね。よかったぁ………あ、いやお姉ちゃんに彼氏ができるのは妹としてはとても嬉しい事だけど! えと…その…」
「ふふっ…鈴架ちゃんの方か慌てていますよ? 鈴架ちゃんは本当に真紅さんの事が大好きなんですわねぇ」
「ちょっと…ク、クリスさ~ん…」
それから三人は翔のせいでなくなってしまった時間で急いでお弁当を食べてそれから談笑などをしていた。
キ~ンコ~ン…
しかしそこで予鈴がなった。
「あ…秦さんの言ったとおり後少しで昼休み終わっちゃうわね…」
「あ~あ…全く翔の奴がこなけりゃもう少しお姉ちゃんと一緒にいられたのになぁ…」
「まぁまぁ鈴架ちゃん…もう過ぎた事なんですから忘れましょう」
「そうね…じゃ早く戻りましょう。鈴架、また部活でね」
「うん、お姉ちゃん! クリスさんもまたね!」
「はい、またお会いしましょうね」
そして鈴架は先に戻っていった。
「それじゃ私たちも教室に戻ろうか」
「そうですわね」
そして午後の授業が始まり特にこれといって目立った事もなく時間が過ぎて帰りのホームルームになり琴美がやってきた。
「みんな、今日も一日ご苦労様。明日明後日は土日で休みですが勉強の復習はちゃんとやるのよ?…それともう一つ伝える事があるわ」
『?』
「…皆も知っていると思うけど最近隣町や近辺で人が何人も失踪しているという事件が起こっていますね?
…実は一昨日と昨日についにこの町でも人がいなくなる事件が起こりました。
詳しい内容は先生も知りませんが皆も帰りや一人で夜出かける時は十分気をつけてね!」
『………』
琴美の発言に一同はとうとう来たか…と色々と話をしていた。
「それじゃ先生の話は以上です」
そしてみんながざわめく中帰りのホームルームは終了してぞろぞろと生徒達が教室から出ていった。
「それじゃ真紅さん、わたくしは聖歌部にいきますのでまた来週、ごきげんようです」
「うん、またね! それじゃ私も部活にいこう」
――to be continued.
少し最後らへんで不穏な事を話してみました。




