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イニシエからの絆  作者: 炎の剣製
48/71

048話 『悪夢の闇に苦しむ少女…(後編)』

後編です。



「…それじゃ楓ちゃん、お大事にね」

「あぁ…せっかくお見舞いに来てくれたのに気分を害してすまなかった。特に海斗さんには不快な思いをさせて申し訳ない…」

「いえ、気にしないでください。それではいきましょうか」


あまり時間がたった感じはしなかったがもう夕方になっており四人は帰り支度を済ませて楓の入院部屋から出ていった。



そして一同は病院の外に出ると、


「もー! なんですかあの子は! なんで海斗さんは言葉を返さなかったんですか!?」

「そうですよ。楓ちゃん、海斗さんの事情を知らないとはいえひどかったです!」

「………」


鈴架と衛巳が楓の態度に少し怒っていた。だが海斗は無言だった。

真紅は海斗の心情を読み取ったのか鈴架と衛巳に言い聞かせるように、


「海斗くん…、鈴架、衛巳ちゃん。なんで海斗くんが楓さんに言葉を返さなかったわからない…?」

「「え…?」」

「真紅さん…いいですよ」

「お願い! 言わせて海斗くん! …二人とも? 海斗くんはね、楓さんと同じ辛さを分かってるから敢えていわなかったのよ」

「それってどういう意味…? お姉ちゃん?」

「…人は誰しも一生に何度かは必ず楓さんや海斗くんのような経験をするわ。

だから楓さんのような事を言ってしまう人も中にはいるわ。

でもだからって人の不幸を天秤にかけて比べちゃいけないわ。

海斗くんも一言ではとても言い表わせないつらい経験をして傷ついたわ。

だけど楓さんも楓さんなりにつらい思いをしたのよ。だから楓さんを責めちゃダメよ…」

「ありがとうございます、真紅さん…いつも僕が言いたくても言えない事を代わりにいってくれて」


海斗は真紅が分かってくれることに感謝していた。


「…そうですね。大小なんて関係ないですよね! 私どうかしてました…すみません海斗さん」

「はい…私もわかってませんでした。ごめんなさい…」

「い、いえ…」

「それよりお姉ちゃんすごいね!」

「え、なにが…?」

「はい! 真紅さんは私達と違ってまわりの事、みんなの気持ちをちゃんと理解しています! とっても立派です!」

「ありがとう…、でもね? そう思うようになったのはやっぱり影に殺されそうになったことがきっかけなの…。

私、あれから色々と悩んだけど私以上に心に傷を持っている海斗くんに支えられて思ったの…、


『私も海斗くんのようにまず人の気持ちを理解して接してあげよう』


…って。だから全部海斗くんのおかげなの」

「ふふっ…お姉ちゃんらしいね。」

「そうですね」


だがその時、


ズバーンッ!


『!?』

「これは、時空閉鎖広域結界!!」


突如として時空閉鎖広域結界が発生し病院をまるごと飲み込んでしまった。


「仮面の女の仕業か!? みなさん! いきますよ!」

『解咒!!』


カッ!


「もうっ! なんでいっつもなんの前触れもなく発生するかなぁ~!?」

「…そんなことを普通に教えてくれたら苦労はしませんよ? 鈴架さん?」

「そ、そうね」

「仮面の女!! いるなら出てこい! 相手になってあげますよ!」


ガサッ!


「…ごきげんよう」


すると仮面の女が姿を現した。


「この間はよくもやってくれましたね! 倍にして返してあげますよ!」

「そういきり立たないほうがいい…それより今日私は戦うつもりはない。用はあっちの奴だよ」


ガシャーンッ!


「きゃああぁっ!!」


突如、窓ガラスが割れる音がして楓の悲鳴があがった。


「あの声は…!? 楓ちゃん!?」


そして楓を抱えて男がこちらへと飛び出してきた。


「ふぅー…!」

「…うっ…」

「楓ちゃん!!」

「あ、あの男の人の胸にあるのは…!」

「暗黒球!!」

「当たりよ…その男は昨日刑務所から出てきたばかりでね…そこの娘に謝りに来たんだろうね? でも負の感情は消えていなかったから暗黒球には格好の餌だったよ」

「貴様! 償いをした者をまた外道に落とすつもりか!?」

「そうねぇ…?」


「!? ギッ!!」


だが急に男が苦しみはじめた。


「ううぅ…!」


そして楓を地面に落とした。


「どうしたの!? さぁ、戦いなさい!!」

「今がチャンスだ…! 美薙流! 凪!!」


すると海斗が突然楓に向かって針を投げた。


「海斗さん!? なにを!」

「大丈夫です!」


すると針は軌道を変えて楓の服に刺さり、そのまま針を楓ごと空に飛ばした。


「はっ!」


そして楓を抱き抱えて海斗は地面に降り立った。


「楓さんは返してもらいましたよ!」

「っ…! こいつまだ人間の心が残っているのか?」

「ウググゥゥ…ガアァッ!」


すると男は仮面の女へと襲い掛かった。


「ちっ!やはり欠陥品か…しかたがない! 闇の王より授かりし力! 闇に染まりなさい! 魔針!!」


グサグサッ!


「ギャッ!?」

『あぁっ!?』

「ウギギ…ウオオオオオッ!!」


カッ!

すると男は来豪のように影に形を変えて巨大化し始めた。


「その男の人になにをした!?」

「なに…来豪の遺伝子を打ち込んだだけよ?」

「そんな! それじゃあの人は完全に影になってしまいます!」

「ウグゥッ…!」

「くっ…どうする? この状況を打破する方法は!」

「…うぅ…ここ…は?」


そこで楓が目を覚ました。


「えっ!? 楓さん! この中で動けるんですか!?」

「なんでですか!? この空間内では力がないものは時が止まり動けないはずですよね?」

「…なんのことだ、衛巳? なっ!? あれはなんですか!」

「…東条…」

「…え?」

「なに? 魔針を打ち込んだというのにまだ意識が残っている…! なんてやつ!」

「それが人間の心です! 悪魔に魂を売った奴にはとうていわからないことですがね!」

「理解、不能…だ! 私は…一、時…帰るとする…」

「逃げるのですか!?」

「………」


シュッ!


仮面の女はなにも答えずにその場から消え去った…。


「仮面の女が消えたわ! 後はあの男の人を助けるだけよ!」

『はい!』


一同が気合を入れているところに、


「あの…あれは人間ですか? さっき私の名前を聞いたような…?」

「聞いて楓ちゃん…あの人は十年前に楓ちゃんを誘拐した男の人なの…」

「え!?」

「だが彼は十分償いをして刑務所からでてきたそうです。楓さんに謝りにくるために…!」

「だけど悪い奴にあの胸にあるものを埋め込まれてあんな姿になっちゃったの!」

「私を…撃った人……、あ! 思い出したよ…!」

「本当? 楓ちゃん!」

「うん。あの人は…、私の父さんの弟、『拓馬(たくま)』伯父さんだ」

『えっ!?』



◆◇―――――――――◇◆



真紅達が戦っているときだった。

聖梁学園の保健室で仕事をしていたガリウスは、


ガタッ…ブブブブブブッ!


「!?なに…? これは!! 子乙さんの『碧風(そうふう)宝玉(ほうぎょく)』が震えだしている!」


ガシャーンッ!


すると碧風の宝玉は窓ガラスを割ってどこかへと飛んでいってしまった。


「あ! しかたありません、とりあえずいってみましょう!」




場所は戻って、


「なんてことなんだ…! 母さん達からは伯父さんは遠い場所で暮らしていると聞いていたのに…」

「きっと嫌な記憶を思い出させないようにしていたんだわ」

「そんな…」

「…ふ、う…ちゃん…」

「伯父さん…!」


拓馬は残り少ない意識の中で楓に話し掛けてきた。


「…ご、めんな…あの…時、君を…撃ってし…まって…、その報いが来た…ん、だな…きっと…ウグゥッ…!!」

「伯父さーん!!」

「…、だめです。もう意識がなくなってしまった。彼は影になってしまう!」

「そんな…! なんとかできないんですか!?」

「きっとあれを取らなければ無理よ…!」

「でも…もう半分以上溶け込んでいます!」

「…助けたい…伯父さんを助けたい!」


その時、

ビュウッ! パシッ!


「な、なに…!??」


突然、楓の手に碧風の宝玉が飛び込んできた。


「この玉は!」

「みなさん! 大丈夫ですか!?」

『ガリウスさん!』


ガリウスの登場に一同は驚く。


「それじゃ…!」

「…はぁ、はぁ…えぇ、そうみたいね。彼女も…」



そして楓は自分の精神の中へと入っていった…。



『あの人を助けたい?』

『君は…?』


そこにはまだ幼い容姿の緑髪のショートの女の子が立っていた。


『ボクは君の前世、名前は子乙だよ!』

『私の前世の方が…あの、…』

『待って!ボクは難しい話は苦手なんだ、だから今は力だけを託すよ…!

あの人を助けてやってね! ボクはなにもできないけどずっと君を見てるから! それと生まれ変わったみんなとも仲良くね!』

『みんなって…衛巳達のこと?』

『うん! それじゃがんばってね!』

『はい! 感謝します…!』

『そして最後に―――…』

『…はい?』



楓は子乙とある約束を交わして現実に戻ってきた。

楓「…、いきますよ! 出てこい!『風神爪弓(ふうじんそうきゅう)』!!」


カッ!

カシッ!


楓は弓を宝玉から取り出した。


「弓矢!? 楓ちゃん…腕、大丈夫なの?」

「あぁ! なんだかわからないが力が湧いてくるんだ! 子乙さんが教えてくれた力…有効に活用させてもらう! 風よ、私の手に集まれ!」


シュウゥゥゥ!

すると見えない真空が楓の手元に集まっていき一本の風の矢が出来た。


「よし!」


ギリリッ!

楓は弦に矢をかけて強く引いて、


「必殺! 風牙芯裂波!!」


矢は放たれたと同時に風の空間を突き破りすごい勢いで暗黒球へと向かっていった。


ガシッ!


そして見事暗黒球に矢が突き刺さり、


ピシピシ…ガシャーンッ!


『やった!』

「うっ…」


シュウゥゥゥ…

ドサッ!


そして拓馬の姿は人間の姿に戻り、地面に倒れた。


「伯父さん!」


楓は拓馬にかけより安否を確かめた。


「…すぅー…」

「ふぅ…安心したよ。それで…衛巳? 説明してくれるか? この力は…衛巳達はなにをしているのか…?」

「…え? 子乙さんからなにも聞いていないの?」

「あなたがガリウスさんですか?」

「え、えぇ。そうよ」

「そうですか…子乙さんは難しい話は苦手とのことでガリウスさんに聞けばいいと教えてくれたもので…」

「子乙さんらしいですね…わかりました。ですがそろそろこの空間が崩れますので早く病室に戻りましょうか? 窓ガラスは直しますので。その後に私達がやっている事をお教えします」

「了解しました。それで伯父さんはどうしますか?」

「それは私達にまかせて!」


真紅が声を上げる。



◆◇―――――――――◇◆



「母さん…」

「なに、楓ちゃん?」

「実はまた一人紹介したいひとがいるんだ。衛巳、お願い」

「うん、わかった。楓ちゃん! さ、入ってください?」

「…あ、ああ」


だが中々拓馬は病室の中に入れないでいた。


「…? どうしたんですか?」

「さぁ、入ってきてくださいよ? 拓馬伯父さん」

「え!?」


ガラッ…


そして拓馬が躊躇しながら部屋に入ってきた。


「拓馬さん…! どうして…!?」

「やっと刑務所から出られたんだ…、すみませんでした!!」


すると突然、拓馬は地面におでこを叩きつけながら土下座をした。


「!!」

「楓ちゃんや兄貴、繭さんにはひでぇ事をしちまった…許してもらえない事はわかってる!

だがこれからは真面目にがんばっていこうと思うんだ!

だから身の良すぎた話になっちまうかもしんねぇがもう一度繭さんのパン屋で働かしてくれねぇか!!」

「拓馬さん…、顔をあげてください」

「そうだぞ拓馬?」

「その声は…兄貴か?」

「ああ…よく帰ってきたな拓馬」

「兄貴…すまねぇ、俺」

「拓馬伯父さん、私はもう気にしていない…大丈夫。だからもう謝らなくていいですよ」

「楓ちゃん…ありがとう!」

「それでは私達は外に待ってるので父さん、母さん…ちゃんと拓馬伯父さんを許してあげること! だよ?」

「ああ」

「ええ」


そして三人を残し一同は外に出ていった。その後、病室から大泣きする声が聞こえたという…


「…それで、話してくれますか?」

「えぇ…」


そしてガリウスは今までの事を楓に話した。


「なるほど…十二支の力、それに舞架という女性を助けだすという事ですね? 興味深いです…わかりました。私も及ばずながらお手伝いさせていただくとします。それが私の使命ですなら…!」

「楓ちゃん…! うん、よろしくね!」

「ああ。と、なれば私もうかうかしていられないな!」

「なにを…?」

「いや、子乙さんに精神世界で『弓の修業はおこたっちゃだめだよ!』なんて言われてしまったからな。これからは真面目に部活にでることにするよ」



…こうしてまた新たな仲間が加わり、新生十二支はあわせて八人となった。残る五人の覚醒は近いだろう…と、ガリウスは心の中で思っていた。




――to be continued.


楓が覚醒しました。

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