041話 『真紅、新たな決意!』
恐怖を克服します。
…そして帰り道。
真紅はみんなの前に立って、
「…みんな、今まで心配かけてごめんなさい!」
『!』
真紅の突然の謝罪におもわず一同は動きを止めてしまった。
「…私、本当はみんなに相談しなきゃいけないことを一人で抱え込んじゃって…それで…」
「謝らないでください、真紅さん…わたくし達は真紅さんが笑顔を取り戻してくれるだけで嬉しいんです」
そのクリスの言葉に一同も同意していた。
「みんな…ありが――…」
ズワアァァーーーッ!
『!?』
その時、突然一同の周りに小規模の時空閉鎖広域結界が出現し影が群れをなして姿を現した。
「ちっ! あっちはこちらの都合もお構いなしってか!?」
「しょうがない!いくぞ!!」
『はい!』
一同が構えようとするが、
「待って!」
『!!』
その時、真紅がみんなを止めた。
「どうした、真紅!?」
「……、今日だけは私にやらして…!」
『えっ!?』
一同はその真紅の思わぬ一言に目を丸くした。
「で、でも真紅さんは…」
「そうだぞ、今日は体調が悪いのだろ?」
「そうだよお姉ちゃん!」
「そうです!」
「そーいうこった!」
「ここは僕達が引き受けますから真紅さんは安全な場所まで下がっていてください!」
クリスが、秦が、鈴架が、瑪瑙が、翔が、海斗がそう心配の言葉をかけてくれる。
真紅はそれだけで嬉しい気持ちになった。
「…大丈夫よ。それにみんな…もう知ってるんでしょ? 私の誕生日の日、なにがあったのか…?」
『…っ!』
「…やっぱり知ってたんだね」
真紅はみんなの表情をすぐに察してそう話す。
「みなさんを責めないであげてください。…すみません、こればかりは話さない訳にはいかなかったので…本当にすみませんでした」
海斗がそう言って謝罪をする。
「ううん、いいの…それよりみんな聞いて、私…あれから影達の事が怖くなっちゃったの…いつ襲われるかもしれない…いつ後ろから出てくるかもしれない…と。
そう、何度も何度も思うようになって今日はとうとう夢の中にまで出てくるようになったの…」
『………』
一同は黙って真紅の言葉を聞く。
「みんなに迷惑をかけたくなかったから我慢していたの…でもやっぱり無理だった。その結果が今日の事を引き起こしちゃって…」
「ばかやろうっ!!」
「!?」
そこでいきなり翔が怒りのこもった大声をあげた。
「誰が今まで真紅のことを迷惑だといったよ? あ!? 俺的には今日までみたいにどんどん真紅らしくなくなっていく様を見ている方が何倍も迷惑だ!」
「そうだよお姉ちゃん! 翔の言い分は少し気にくわないけどお姉ちゃんは一人でなんでも抱え込みすぎてるよ!」
「そうです。真紅さん…僕達は真紅さんの事を迷惑なんて決して思いません。だから困った時があったらいつでも相談してください…僕達はいつでも助けますから」
「そうですわ、真紅さん」
「そうだぞ真紅、なぜなら俺達は…仲間なのだからな!」
「あっ…!」
秦のその言葉を聞いた瞬間、真紅はガリウスが教えてくれた赤竜の話を思い出した。
「(…そうよ。私も赤竜さんと同じでもう一人じゃない…鈴架、クリス、秦さん、瑪瑙ちゃん、翔くん、衛巳さん、海斗くん、ガリウスさん…。
みんな私の大事な友達、そして大事な仲間、…大事な…大事な…、…みんなが一緒にいてくれればもう影なんて怖くない! 赤竜さん…私、まだ頑張れるよね?)」
…その時、
『(ああ…大丈夫だ。俺もお前の中でいつまでも見守っているぞ…さぁ、心機一転した力を解き放て、真紅!!)』
「(はい!)」
ボオオォウッ! ズワアァァァッ!!
『おー!』
そして真紅の周りが今までの炎よりさらに増した灼熱の炎陣に包まれて、
「みんな、ありがとう…私、もう大丈夫よ。みんながいるかぎり私はもう影から逃げないわ!!」
カッ!
「ギッ!?」
すると真紅のまわりで燃え上がっていた炎が影の群れをまるで意志を持っているかのように捕縛した。
「…真紅が完全に復活したのはいいんだがよ…今、真紅はあの影の群れに対してなにをするつもりだ!?」
「まさか…あの時のあの力を使う気じゃ!?」
「あの力?」
「前に一回だけ今までより強力な炎を出したの!
お姉ちゃんは精神世界の中で赤竜さんに“十二支の紋章の力を使え”っていわれたらしいの…。
でもそれを使った後、お姉ちゃんは力の使い過ぎで気絶しちゃったの!」
「なんだって!?」
「大丈夫よ、鈴架…ガリウスさんに力の制御のやり方を教えてもらったの。だから大丈夫! さぁ…いくわよ! 紅炎の宝玉よ…私に力を!!」
カッ!
そして力は発動しまたもや真紅のひたいに“辰”の紋章が浮かび上がり目の色が朱色に変わった。
『あれが…!』
「はぁぁぁあああ…!(今、影は群れをなしているから炎舞翔竜突きはあまり有効的ではないわ…それなら!)」
ゴオオオオッ!
炎はさらに威力を増し続け、そして。
「十二支が奥義の一! 必殺! 炎陣…烈封殺!! 出てきて! 炎の竜!! “サラマンダ”!!!」
すると真紅の眼前に炎で描かれた魔法陣が出現し、その陣の中から幾重にも鎖で繋がれたとてつもなく巨大な翼の生えた炎の竜が姿を現し、
ズンッ!
「ガアアァアァアアーーーッ!!!」
炎の竜サラマンダは出現し拘束された両の手を地面につくと同時にすさまじい咆哮をあげた。
ビリビリビリッ!
『うわっ!』
そしてその叫び声は地鳴りとかして一同にも降り掛かった。
「な、なんだ今の!? 声の衝撃がこっちにまで伝わってきたぜ!!」
「それにあの炎の竜…サラマンダといったか? あれほどの数の鎖で束縛されていながらなんて威圧感と戦慄を全身から放っているんだ…!」
「あの術は赤竜さんの最大の奥義の一つでした。その力はフルパワーを出した時にはこの町が壊滅して跡形もなくなるほどの力を秘めているです!」
「そんな…! お姉ちゃん…大丈夫なの?」
だが鈴架の心配もよそに真紅はいたって平然としていた。
「サラマンダ…ここではあなたの力は解き放ったら被害が大きくなっちゃうから自由にしてあげられないの。でも、少しでいいから私に力をかして…!」
「グルッ……、(コクッ…)」
サラマンダは真紅の願いを聞き入れ無言で首を縦にふった。
「いい子ね…ありがとう、サラマンダ…! それじゃお願い! 口を束縛せし鎖よ、今解き放たん!」
バチンッ!
「ヴアアァアアアァアアアアッ!!!!」
そして口を拘束していた鎖が抜け落ちたと同時にまたもサラマンダは雄叫びを上げた!
「サラマンダフレア! セット!! 目標は前方の影よ!!」
「ガァァァアアアア…!」
そしてサラマンダの口に力が集中し始めた。
「すごいですわ…、力がどんどん集まっていきます!」
「皆さん! 防御術を展開してください! 衝撃波がきます!」
「わかりました!」
「お任せください!皆さんはわたくし達の後ろに!」
「それじゃやるね? クリスさん?」
「はい! 鈴架さん!」
「はぁーっ! 爆雷陣!!」
「出でよ、光の壁!極覇閃光!!」
ズバァーンッ!
二人は結界をはった。
「ありがとう、海斗くん!」
「いえ、それより今のうちにお願いします!」
「えぇ! サラマンダ! お願い!!」
「ガァァァアアアアッ……!!ガアアアアアーーーーー!!!!」
「ギッ!? ギィッ!!」
影は何度も炎の鎖から抜け出そうとするがそれは叶わず、解き放たれた力はすさまじい火炎の塊となって、炎の鎖で束縛されて動けないでいる影の群れに見事に直撃し身を焦がし炎上した。
「ギャアアアアーーーーッ!!?」
ドシュンッ!
そして影の群れは跡形もなく消し飛んだ。
「ありがとう、サラマンダ…またよろしくね!」
「グウゥ…」
バシュッ!
そしてサラマンダは魔法陣の中へと戻っていった。
「すぅー……はぁー……」
真紅は一息すると力を抜き、ひたいの紋章は消え、目の色も普段の黒色に戻っていた。
そして、すると影達がはったのであろう時空閉鎖広域結界は四将がはったわけではないため、いつもより早く、そして脆く崩れさっていった。
「お、お姉ちゃん……すごかったね、さっきの炎の竜!」
「サラマンダのことね…私も初めて出したから驚いたわ。でも、とてもいい子よ?」
「はっ!? あれでおとなしいほうなのか!? 俺にはまるで知性なしの狂暴竜かと思ったぞ!?」
翔は信じられないという顔つきだった。
「翔さん? 外見での判断はしてはいけませんわよ?」
「そうですぅ! サラマンダさんだって好きであんな狂暴な姿になったわけじゃないですよ!?」
「あー…わかったわかった、俺が悪かった。だから大声で耳元で叫ばないでくれ…鼓膜がとぶ!!」
「…あ、ごめんなさいです」
「ふぅ、まったく…それより、真紅…やっと立ち直れたか」
「はい! ですが…まだ影の存在が恐いことには変わりありません。でも…、みんながいてくれる…、仲間でいてくれる…、それだけで私は何度でも戦うことができます!」
「真紅さん…よかったです」
「うん! ごめんね、いっぱい心配かけて…明日からはまた普段どおりみんな…、よろしくね!」
「おう!」
「ああ!」
「はいです!」
「はい!」
「うん!」
「ええ!」
翔が、秦が、瑪瑙が、クリスが、鈴架が、海斗が真紅の元気な声に勇気をもらったのだった。
…後日、真紅は朝練もちゃんと行って天見部長や部員達にもう大丈夫だということをアピールし、学園中の教師・生徒も明るさを取り戻した真紅のおかげで活力が戻ってきたという。
――to be continued.
サラマンダはまだ本気を出していません。




