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イニシエからの絆  作者: 炎の剣製
39/71

039話 『縁の初めての大きな一歩』

縁が勇気を出します。



そして三人は縁の部屋の前までやって来た。


コンコンッ!

メイは扉を軽くノックすると、


「縁様~、秦様と瑪瑙様がいらっしゃいましたよ~?」


「はわわっ!?」


ドッ!ズダンッ!


「「「!?」」」


その時、部屋の中から何かが倒れる音がした!


「…、はっ!? 縁様! 縁様!! 大丈夫ですかーー!?」


メイは数秒動きが止まったがすぐに再起動して血相を変えて扉を何度も叩いた。


「だ、大丈夫よ、メイ! ちょっと縁が驚いてすぐ隣にあった椅子を倒しちゃっただけだから!」

「あ…、雫様もいらっしゃったのですか。でしたら安心です」

「それで悪いんだけどちょっと二人には外で待っててもらってもらえないかしら?」

「はい、わかりました~♪」


それを聞いて三人が外でホッと息をついているよそに部屋の中では、


「(縁! 縁! 落ち着いて! 秦くんと顔を合わせる前からこんなじゃ言いたい事も言えないわよ!? さぁ、深呼吸よ! 息を思いっきり吸って!)」

「(…う、うん。すーーー…!)」

「(ゆっくりとはいてぇ…)」

「(はーーー……、うん…、もう大丈夫…。…で、でも…雫お姉さま…、やっぱり…怖い…)」

「(…何が怖いの?)」

「(…さっきから何度も試みて…、いるんだけど…どうしても雲隠様の事だけ…、わからないの…)」

「(…やっぱりそうなの?)」

「(…うん…)」

「(…そう、でもね縁!)」

「(…えっ?)」


雫はゆっくりと縁を抱き締めると、


「(普通はみんな誰だってそうよ…ただあなただけは他人にはない能力を生まれながらに持ち合わせちゃったからしかたないけれど…。

いつまでもその力に頼っていちゃいつか自分の力で前に進めなくなってしまうわ。だから勇気を出して…縁ならきっと大丈夫だってあたしは信じてるから!)」

「(…雫、お姉さま…うん…私、頑張る…!)」

「(その意気よ、縁! それじゃもう秦くん達を中に入れてもいいわよね?)」

「(…うん…)」


縁の返事に雫は頷いて、


「それじゃもう入ってきていいわよ? メイ、お願いね?」

「はい!ささっ、お二人ともどうぞ中にお入りくださいまし」

「はい」

「はいです」


そして三人は部屋に入ってきた。


「どうも。速水先輩、縁君」

「どうもです」

「いらっしゃい、二人とも。ごめんね、昨日はちゃんと謝れなくて…ほら、縁も…?」

「…は、はい…その、…雲隠様、それに影紫様…昨日は、ちゃんとしたお礼も言えず…、すみません…、でした…」

「あぁ、昨日のことか。どういたしまして、というべきだろうか…すみません! あれは本来俺と瑪瑙だが狙われるはずだったことなんだ!」

「「えっ…?」」


秦は両手を合わせて二人に謝罪をした。


「はいです! だから巻き込んでしまった事を謝りに来ようと私たちも来たんです!」

「そんな…いいのよ? たとえそれが理由だったとしてもあたし達は結果、秦くん達に助けてもらった事は変わらないんだから…だから気にしないで!」

「そういっていただけると助かります。速水先輩」

「あの~…? 先程から皆さんがお話されている事はなんですか? 全然話が見えないんですがぁ~…?」


そこに何を話しているの?と言わんばかりの顔でメイが聞いてきた。


「…あ、…それはね…ぷわっ!?」


そこで雫が縁の口を塞いだ。


「あーー…たいしたことじゃないわ、メイ。余計な詮索は不要よ?」

「はぁ~…? わかりましたです。あ、それではお飲物をお持ちいたしますね? 秦様は私的に見た目ブラックコーヒーで砂糖とかは一切不要といった感じですか?」

「は…? まぁ、当たりですが…しかしなぜ俺のよく飲むモノが分かったんですか?」

「ただの感です! それで瑪瑙様は―――…むぅ、縁様と同じミルクティーといった所ですか?」

「当たりです…メイさんすごいですぅ!」

「そうなのよ。メイったら昔からなにかを言い当てることが得意だったから…それじゃあたし達はいつもので」

「かしこまりましたぁーー♪」


そういってメイは部屋から出ていった。


「ごめんなさいね、二人とも? メイったらとても落ち着きがない子で…」

「いえ、構いませんよ。それに自然に振る舞ってくれる方がこちら側としては緊張しなくてすみますから。しかしなぜ先程はメイさんに昨日の事をお話にならなかったんですか?」

「…それがね、笑わないでね? あたしと縁の父…佐助お父様は少しでもあたし達に危害が及ぶ事が起きると海外にある自分の会社からこの速水邸の敷地内まで専用ジェット機を使って仕事をほっぽりだしてまでやってくる程の心配性な人なのよ」

「それは…またすごいお父上ですね。ですがそれほど心配なされるのですからさぞお優しい方なのでしょうね?」

「わかってるじゃない! 秦くん!」

「…、はい…お父様とても…優しい方なの…」

「…それで、ね? 昨日の事とか知られちゃうとね…きちゃうのよ」

「すごいですぅ…」

「あぁ…中々気が置けませんね」

「そうそう…あ、それより!」

「「?」」


雫はなにか話を切り出そうとしていた。


「ね、瑪瑙ちゃん? この間スピネスと妙に仲が良かったじゃない? 一緒に遊んできたらどうかしら? 今は中庭にいると思うから」

「あ、わかりましたです! それじゃ皆さんでいきませんか?」

「ごめんね…ちょっと三人でお話することがあるのよ。いいかしら?」

「?…わかりましたです! それじゃ秦さま行ってくるです!」

「あぁ、わかった」

「場所がわからなかったら近くの者に聞いてね?」

「はいです!」


瑪瑙は満面の笑みを浮かべながら部屋を出ていった。


「…それで速水先輩、俺に話というのは?」

「あたしじゃないわ…用があるのは縁よ?」

「縁君が…?」

「…あ、あの…はい…」

「俺になにか用があるのかい?」

「…、はい…ああの…、…その前に…昨日は助けていただき…、まことにありがとうございました…」

「あ、あぁ…」

「そ、それで…!…、…その…」

「?…どうしたんだ?」

「………」


縁は本題に入るどころか先程言ったばかりなのにも構わずお礼をしていた。もう話をするのもいつも以上に絶え絶えでついに黙りこくってしまった…。


「(縁…やっぱりあがっちゃっているわね? よ~し…! ここは一つアシストしてあげちゃおうかな!)ねぇ、秦くん?」

「え? あ、はい。なんですか? 速水先輩?」

「つかぬこと聞くけど秦くんて今…好きな女の子、いる?」

「「えっ!?」」


雫の一言に秦とついでに縁も声を上げてしまっていた。


「(…雫お姉様ぁ…、ひどい…)」


縁はとっさに隣にいる雫に小声で話し掛けた、もう顔が真っ赤である。


「(ごめんごめん! でも…秦くんをみてみなさい?)」

「(…え…?)」


縁は秦を見ると秦は別に迷わずに、


「…俺ですか? 今はいません。と、いうより正直いいますと俺は他の人と考えが違うらしく今だに恋をしたことがない…と、いう答えではだめですか? ところでどうしてそんな事を…?」

「いやね、ちょっと聞いてみたかっただけよ? 今はまだ気にしなくていいわ!」

「はぁ…?」


「(でしょ? 秦くんはここまで鈍いんだからまだ大丈夫よ!)」

「(…なにが大丈夫、…なの…?)」

「(わからない? 誰も好きな人がいないって事は縁が告白すればもしかしたらあなたの事を考えてくれるかもしれないのよ?)」

「(…え、ふえぇ~?)」

「…お二人とも先程からどうしたのですか?」

「ふえ~…!?」

「どうしたんだ、縁君?」


縁は突然秦が話し掛けてきた衝動で気が動転していた。


「…ほら、がんばりなさい」


雫が優しく語り掛けてきてくれたおかけで縁は意を決したのだろう。

「…う、うん…あ、あの…、雲隠様…」

「なんだい?」

「…わ、私…こんな、…気持ち、初めてで…まだよく、わからないのですが……」

「………」


秦は縁の話そうとしていることが本気だと悟ったため黙って真剣に話を聞いていた。


「…昨日の、雲隠様の私とお姉様を…助けていただいた時の姿が、とても…、とても…素敵でした。その時に、…気付いてしまったのです。私の、…その、この想いを聞いてくださいますか…?」

「あ、あぁ…(まさか、先程の速水先輩が言っていたことの意味はもしかすると…そして静姉さんのあの意味深なメール…まさか!?)」

「…ああ、あの…私は雲隠様の事を…その…、…好きになってしまいました!」

「(ついに言ったわ!)」


秦はその瞬間、体中に雷が走ったかのような衝動にかられていた。


「…う、あ…(っ…!落ち着け、落ち着いて今起きた事を整理するんだ…!『雲隠様の事が…好きです!』…っあ!!)」


そして今一度その言葉を思い出し二度目の衝撃を受けて秦の顔は見る見るうちに赤く染まってきた。


「(…くぅ、こういう時はどんな返事をすればいいんだ!?)」


秦はもう頭の中では普段考えもしない事で爆発寸前の状態であった。

そんな秦を見て雫は、


「(…ね? 秦くんてこーいう子なのよね、だからもう一発でかいものをお見舞いしてあげれば即K・O間違いなしよ?)」

「(…で、でもお姉様…、私も…もうこれ以上…、…恥ずかしい…)」

「(そう? 残念ね…ま、縁が告白しただけでも大きな一歩だったわ! 後は…秦くんの返事を待つだけね、当分かかりそうだけどね…?)」


そしてとうの秦は、


「…速水先輩、少し落ち着きましたので話を…進めてもいいですか?」

「!…いいわよ。縁も覚悟しておくのよ?」

「…うん…」

「俺は…」

「「………」」

「俺は…まだわかりません」

「…うっ、…」

「え? なによそれ! 縁がせっかく勇気を出したっていうのに…!」


雫は珍しく怒りをあらわにして、縁は泣きそうな顔になった。


…だが、


「最後まで俺の話を聞いてください!!」

「「!!?」」


秦もまた普段とは違う面持ちで大声をあげた!


「俺はまだ縁君に対してまともな返事を返せそうにありません。かといい縁君の俺に対する気持ちも無駄に終わらせたくない…!」

「「………」」

「だから…! だから俺はいつか縁君の気持ちをちゃんと受けとめられる男になれるようになるまで…その時までは、こういう時はどういえばいいか?

…そう、お友達から始めませんか!?…今の俺にはここまでが精一杯の気持ちです。許してくれ、縁君…」


そういい秦は顔を赤らめながら、がらにもなく頭を下げていた。


「秦くん…(やっぱり秦くんは秦くんね。ちゃんと縁の事を考えてくれている…あたしもうれしくなってくるわ!)」

「…、…はい…お願い、…します…」


縁は嬉し泣きしていた。


「でもね、秦くん! いつまでも待てないからね? 早く自分の答えを出すのよ?」

「はい、わかっています! 俺が答えを出すその時まで待っていてくれ、縁君…」

「…はい、…私…とてもうれしい…、です…雲隠様…」

「………」


その時、すでに二人の空間ができていることを雫はあえて言わないでいた…だが、


「…あたし、もうお邪魔みたいだけど一ついいかしら?」

「「?」」

「あなた達、いつまでその“縁君”と“雲隠様”を続けてるつもり? それじゃ他人行儀みたいで進展も何もないわよ? それに秦くんはいいとして縁は静や翔くん、衛巳ちゃんが一緒にいる時はどうするつもり?」

「…、…そ、それは…」

「そうですが…」

「思い切って変えてみたらしっくりとくるわよ? そう、秦くんは例えば呼び捨てで呼ぶとか? いつも真紅ちゃんや鈴架ちゃんとか呼んでるじゃない?」

「それは…まぁ、小さい頃からの付き合いですから。ですが確かにいいですね」

「そして縁はそうね…やっぱり名前で呼ぶのが一番よ?」

「…ふわわぁ…まだ…、恥ずかしぃ…」

「そんなこと言わずに…ほら、そんなじゃ他の娘に秦くん取られちゃうわよ!」

「それは…、やだぁ…」

「それじゃ! お互い言い合ってみて!」

「うっ…、…そ、それでは…え、縁!」

「…は、はい!…、その…秦、様…」

「うん、二人ともよろしいわ!」

「………」


すると二人は突然黙ってしまった。


「?…どうしたの、二人とも?」


パタッ…


「…え?」


いきなり二人は倒れてベットに一緒に顔をうずめてしまった。


「……、はっ!? きゃあーーー! 縁、秦くん! しっかりして!!

「「すぅー…すぅー…」」

「…あ、ただ気絶しちゃっただけ?」


二人はまさに同時に緊張の糸が切れたのだろう…寝息をたてながら横になっていた。


「ふふ…しょうがないわね。ま、もとは無理矢理に話を進めたあたしの責任ね…秦くんと縁が起きるまで静を呼ぶのを待ちましょう」

「そうですね~♪」

「うん…、て……わ! メイ、いつのまに!?」

「抜け駆けはいけませんよ、雫様?今度はこのような面白い事はぜひ私にも教えてくださいまし~♪」

「わ、わかったわ。(メイ、いつからいたのかしら…?でも、まぁ…縁が幸せになってくれるならなんだって構わないわ)」


だがその後、いつまでも起きない二人を見越して雫はしょうがなく静を召喚するのだった…。




――to be continued.


予知能力があるとはいえなぜか秦には効果がないので先がまったく読めない縁としては不安だったでしょう。

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