037話 『秦の一日、そして芽生えるもの…』
今回秦とちょっとした人達との話を書きました。
それと十時に更新します。
5/22(土)
…土曜日の休日、午前五時過ぎの事、
「はぁあっ!」
「でやあぁーっ!」
バシッバシッバシンッ!
秦はもう最近では朝の日課となっている瑪瑙との打ち合いをしていた。
「「はぁぁーーーっ!!」」
バシーンッ!
「そこまで! 勝者、瑪瑙!」
判定をしていた静がそう声を上げる。
「っ…! 今日は負けてしまったな」
「でも今日も少し危なかったです。ですが秦様?」
「なんだ瑪瑙?」
「最近妙に気を尖らせていませんですか? なんていいますか…焦っているっていう感じがしますです」
「そうそう! あたしもそう思うわ! もしかしてこの間のことで神経張り詰めてたりする…?」
「この間?…海斗くんの話か?」
「そうよ。誕生日会が終わった後、真紅ちゃんとなにもしらない雫と縁ちゃん以外を集めて話してくれたこと」
「………」
それで秦はあの後のことを回想する。
それは真紅以外を集めた時のこと、海斗が話し出して、
「最近の影は的確に僕達のことを狙ってきていると思います」
「えっ…? やっぱりなにかあったんですか!?」
「…はい、先程は真紅さんの事を思って皆さんには話しませんでしたが僕が飛び出していった時から既に真紅さんは影の群れに襲われていたそうです」
『えっ!?』
それで全員が声を上げる。
「で、ですが真紅さんは先程まではあんなに普段どおり笑っていらしたのに…」
「はい。ですがきっとそれは真紅さんの優しさゆえの行動だと思います。隣に座っていた僕はわかります。
顔では笑顔を作っていましたが時折体が震えていましたから…僕が助けに駆け付けた時はもう真紅さんは恐怖に支配されていてずっと泣いていました」
『………』
「そして『漆黒の風』という謎の人物がいなければ僕が駆け付けた時にはきっと真紅さんは……殺されていたでしょう」
それを聞いた瞬間、一同の背中にはなにか重いものがのしかかっていた…。
「皆さんが落ち込むことはありません。全部僕の判断が甘かったせいなのですから…」
「…いや、海斗くんは真紅の危機に気づけただけでたいしたものだ。それに比べ俺たちは…」
「ああ…情けねぇな…」
「はいです…」
「お姉ちゃん…」
「真紅さん…」
「…僕は、もう真紅さんのあんなに泣いている姿はもう見たくありません。だから…!」
「わかっている。真紅の笑顔を守るためにも俺たち自身が強くならなければいけないな…!」
それで全員で強くなろうと誓うのだった。
◆◇―――――――――◇◆
「…確かに、そうかもしれないな。もっと前向きに考えなければな」
「そうだぜ、秦兄!」
「翔…」
そこには修業から帰ってきたのだろう翔が立っていた。
「嫌な予感がしていざって時には携帯ですぐに連絡を取るって決めたんだからよ! 焦らずにいこうぜ!」
「そう…、だったな」
「ああ! まぁ秦兄はそれでも気に掛けちまう性格だからな。今日は息抜きにどこか出かけてくればいんじゃねぇか! 毎日修業だけじゃその内ぶっ倒れちまうぜ?」
「翔にしてはいいこというわね! そうね、秦! 今日の修業はここまでにして瑪瑙ちゃんを連れてどこかいってきなさいよ?」
「いや、しかし…」
「言い訳は受け付けません! それに瑪瑙ちゃんもたまにはこの町を探険したいんじゃない? 秦のことだからいつも知った道しか通ってないんでしょ?」
「はいです!」
「こ、こら瑪瑙…」
「はい決まり! 秦、今日は一日しっかり瑪瑙ちゃんの面倒を見てあげるのよ?」
「……、はぁ、わかったよ静姉さん」
「わーいです! うれしいです!」
「それじゃ食事を済ませたら行ってきなさい。お金は行くときに渡すからさ」
「はい…」
「はーいです!」
…と、いう訳で町に繰り出してきたはいいものの秦はあまり乗り気ではなかった。何故かというと…
「………すまん瑪瑙。正直俺もこの町をよく回ったことがないんだ」
「安心してくださいです! 私、もうほとんど前に回っちゃいましたから覚えていますです!」
「そうか。それは心強い…だがその反面瑪瑙より前からこの町に住んでいる俺としては情けないかぎりだ」
そういって秦は肩を落とした。
「気にしちゃダメです! 今日は息抜きに来たんですからもっと笑顔でいてくださいです!」
「そうだな。それじゃ申し訳ないが案内を頼む」
「わかりましたです!」
そしてそれから二人は商店街、海岸沿い、ショッピングビルなどなど色々なところを回った…。
そしてお昼、二人はショッピングビルで食事をとっていた。もちろん和風店だ。
「…こうしていざ町を回ってみると俺が知らない場所もかなりあったな。ところで瑪瑙はどうやってこの町を回ったんだ…?」
「あ、それはですね! 静さんや衛巳さん、鈴架さん、真紅さん達と私の身の回りのものを揃えるついでに探険してたんです」
「なるほど。姉さん達がやりそうなことだな」
「はいです! よっと…!」
瑪瑙は勢い良く椅子から降りると、
「さて、それじゃ次はどこにいきますか、秦様?」
「そうだな…翔がいればゲームセンターと言いだすだろうがあいにく俺はそういうのはやったことがないからな。…、そうだな。お茶菓子でも食べに行くか?」
「はいです!」
そして二人が歩きだしたところ、
「あ、秦くんだ」
「「えっ?」」
その声に秦と瑪瑙は振り向く。
「あ、速水先輩!」
そこには車椅子に座っている縁を押しながら雫が歩いてきた。
「こんにちはです」
「どうも」
「はろ~!」
「…雲隠…、秦さま…、影紫瑪瑙さま…、…こんにちは…」
「こんにちは、縁君」
「こんにちはです、縁さん。今日はお体は大丈夫なんですか?」
「…、はい…」
「今日は体調がいいらしいからお外に出たいって縁がいいだしたのよ。それより二人してなにをしていたの?…もしかしてデート?」
「デート、ですか…?」
デートと聞かれて瑪瑙は首をかしげていた。
瑪瑙としては秦と一緒に回るのは当然だと思っているのでそんな感覚はなかったりする。
さらに言わせてもらえば見た目や体格的に二人は兄と妹と見られても不思議ではない。
「…違った?」
「まぁ似たものですよ。静姉さんにたまには息抜きもしたらといわれたので二人で町を探険…もとい出歩いていたんです」
「そうだったの」
「それでこれから近くのお茶菓子店にいこうと思っていたところなんです」
「あら奇遇ね、あたし達もそこにいこうと思っていたのよ」
「それじゃ一緒にいきませんか?」
「いいわね! もちろん奢ってくれるんでしょう?」
「うぐっ…相変わらず口が早いですね。まぁいいですよ」
「やり~♪ ありがとね秦くん!」
「…すみません…」
「それじゃ入りますか。俺が縁君を押していきますよ」
「ありがと!」
「…その……ありがとう…、ございます…」
「気にしないでくれ。俺がしてあげたいからやっているだけの事だからな」
「…はい…」
そんな秦を見て雫はというと瑪瑙に小声で話しかけていた。
「(ねぇねぇ、瑪瑙ちゃん? 秦くんて相変わらず恋愛感情とかそういったものはないの…?)」
「(う~ん…そうですね~。静さんからも聞きましたが秦さまは真面目すぎるんですがその分そういった感情は乏しい…とのことです…)」
「(そうなの~…相変わらず苦労してるのね…縁もその優しさに引っ掛からなきゃいんだけど…)」
「どうしたんですか? 入りますよ」
「あ…う、うん!」
「はいです!」
「…?」
秦は二人の行動が気になったがあえて触れないようにした。
…その後、四人は建設途中のビルが立ち並ぶ街道を通りながら帰っていた。
「秦くんありがとね! 奢りだっていうのについついおかわりしちゃって…」
「いいですよ。今日は十分楽しめましたから」
「そういってくれると身が休まるわ。それより縁? まだ体調は平気…?」
「…うん、…平気…それより雲隠さま…今日の件…ありがとう、ございました…」
「いやお礼をいうのはこちらの方だ。な? 瑪瑙!」
「はいです! 私も楽しめましたです!」
四人が仲良く会話をしている中、ビルの上には影が数体もおり、
「ガァッ!」
なんと四人の頭上に鉄骨を落とそうとしていた。
「…あっ!?」
「どうしたの縁!?」
「…上から、鉄骨が…!」
しかし縁がとっさに予知能力で先の事を言い当てた。
「えっ!?」
「「(はっ! この気は影!)」」
すると縁が言った次の瞬間、頭上から本当に鉄骨が降ってきた。
「っ!?…(いけない! 逃げなきゃ! でもあたしの力だけじゃ縁しか担げない!)」
その時。
「二人はここから動かないでいてください!」
「「!?」」
秦が動かないようにと二人に言い、
「いくぞ瑪瑙!」
「はいです!」
「「解咒!」」
そして直ぐ様、瑪瑙は刀へと姿を変え、
「衝覇武神刀…! はぁぁあああーーーッ! 刀…一閃ッ!!」
秦が気をためて刀を振り上げ術を放った瞬間、頭上の鉄骨は真空の衝撃波によって粉々に粉砕された。
「ギッ!?」
「逃がさん!!」
すると秦は足に力を集中して、思いきり跳躍し頂上に飛び移り、
「はぁーーーっ!」
「ギャアアアッ!!」
秦に斬られてそして影は消滅した。
秦は瑪瑙に話しかける。
「…やはり海斗くんの言っていた通り俺たちは狙われているらしいな…!」
『はいです!』
そして秦は事が済むとそのまま下に飛び降りて静かに着地した。
…後日談だが、はたから見れば飛び降り自殺のような光景だったと雫はいったという…。
秦は着地すると直ぐ様二人に駆け寄って、
「大丈夫でしたか、お二人とも?」
「…え、えぇ。それよりすごい! すごいわ! 瑪瑙ちゃんは刀に変わっちゃうし鉄骨は粉々にしちゃうしすごいジャンプもしたし!」
「あーー…普通に見られましたか。必死でしたからね。それより縁君、ありがとう。君が教えてくれなかったら危ないところだったよ」
「……ぽぉー……」
秦に話しかけられたのだが縁は頬を染めてぼうっとしていた。
「縁君…?」
「縁…? ちょっと縁?」
「大丈夫ですか?」
「…あ、…はい…その…あの、…ありがとう…、ございました…」
縁は顔を赤くしながら感謝の言葉を言っていた。
「…それより雫お姉さま…早く…、帰りましょう?…雲隠さま…その、お礼はまた明日します…、…ので…」
「わ、わかったわ縁。それじゃ秦くん、また明日来てくれるかな?」
「あ、はい。それじゃまた明日伺わせてもらいます」
「…早くぅ…」
「わかったわ。もう…それじゃ二人ともじゃね!」
そして二人は急いで帰ってしまった…
「どうしたんだ縁君は?」
「さぁ…わからないですぅ」
縁の慌てように秦と瑪瑙は疑問の顔をしていた。
そして別れて少しして、
「ちょっとどうしたの? 縁? ちゃんとしたお礼もいってないのに…」
「―――見え、なかったの…」
「えっ…?」
「…本当は、鉄骨に潰されちゃう…ビジョンが視えたの…でも…、…さっきのビジョンは私…全然…、視えなかったの…」
「えっ…縁の予知がはずれたの?」
「…うん、…それとね、雫お姉さま…雲隠さまのお顔を見ちゃうと…なんだか、胸がもやもやするの…鼓動も激しくなる、の…私…、…変になっちゃったの…?」
「えっ! それって…もしかして!?(これは明日確かめてみる必要があるわね!)大丈夫よ…別に病気じゃないから…いやある意味病気ね…それより明日はちゃんと秦くんにお礼いうのよ?」
「…うん、…あ、また雲隠さまの名前を聞いたらドキドキ…、…してきちゃった…やっぱり変なの、…かな…?」
「(……これがもし“アレ”だったら責任とってもらうわよ! 秦くん!)」
そして帰宅後、縁は悩みすぎて知恵熱を出したという…。
――to be continued.
縁さんが恋に目覚めてしまいました。




