036話 『漆黒の風』
前回の続きです。さて真紅は?
真紅がピンチに陥っているのを第六感で察知した海斗は突然立ち上がり、
「!?」
一同は突然立ち上がった海斗を不思議がり、翔が代表して、
「お、おいどうしたよ?」
「………」
「海斗さん…?」
「っ…! やっぱり真紅さんが心配になりましたので少しばかりいってきます!」
「海斗くん…!」
海斗は、しかし秦の呼び止めの言葉も聞かずに飛び出していってしまった。
「今、真紅さんの叫び声が聞こえた気がした…。手遅れになる前に急がないと! 解咒…はっ!!」
海斗は力を解き放った瞬間、大急ぎで真紅の叫び声が聞こえたであろう方へと突っ走っていった。
そして星林海岸では真紅はというと、
「危ないところだった…」
「………」
真紅は黒いフードを羽織った謎の男の腕に抱かれながら気絶していた。
「真紅さーん!!」
そこに大急ぎで駆け付けた海斗が現れた。
「…?」
「!? 誰だ! 真紅さんになにをした!?」
「………」
「答えろ! 返答によっては…!」
ジャキッ!
海斗は針を出し構えた!
「…安心しろ。この女性はまだ生きている」
「なに…?」
「ただ気絶しているだけだ。俺はただ謎の集団に襲われていた彼女を助けただけ…君がこの女性の知り合いなら安心だ…俺は、いく…」
そういって黒いフードの男は真紅を砂の地面におろして歩きだした…。
「待ってください! あなたは一体…? せめて名前だけでも…」
「…名前、か…あいにく名は持ち合わせていない…しかしどうしても呼びたければ『漆黒の風』と呼ぶがいい…ではサラバだ」
漆黒の風という男は一瞬でその場から転移したかのように消えてしまった。
「…消えた。彼は一体…はっ! それより真紅さんを!」
そして海斗は真紅を抱き起こして必死に何度も呼び掛けをした。
「真紅さん! 真紅さん! しかりしてください!!」
「んっ……か…か、いと…くん?」
「よかった!」
「どうしてここに…あ、あぁ…!?」
「真紅さん…!?」
真紅は突然目から涙を流しだした。
そして次には海斗に抱きついた。
「…し、真紅さん?」
真紅は海斗の胸に顔を埋めていた…そしてわずかに体を震わせていた。
「…わた…し殺されそうになった…解咒もでき…なかった…何度も叫んだの…だけど口を塞がれていて…私、私…!!」
真紅は半ば放心状態のまま喋っていた…。
「…もう、大丈夫ですよ! 僕がいます!」
「あっ……うっ…ひっく…海斗くん! 恐かった! 恐かったよー!!」
「………」
海斗はなにもいわずにただ真紅が泣き止み落ち着くまでしばらくその状態のまま抱き締めていた。
………………
……………
…………
そしてしばらくして真紅は落ち着いたのか喋りだした。
「…ありがとう海斗くん。そしてごめんね…」
「なにがですか…?」
「その、えっと…変に気が動転しててその、取り乱しちゃって…」
「気にしないでください。それより早くいきましょう? 皆さんが心配してましたよ?」
「うん…海斗くん、手…つないでていいかな…? まだ恐くて…」
「…いいですよ」
「ありがとう…海斗くん」
そして二人は雲隠家の前まで来て、
「…ねぇ、海斗くん? まだ涙の後ついてるかな…?」
「平気ですよ。それより早く入りましょう?」
「うん…」
そして扉をあける。
「戻りました」
「すみません、遅れて…」
「あ…お姉ちゃん!!」
鈴架は真紅が来たことに気づくとすぐ様飛びついた。
「心配したんだよ!? とっても心配したんだよ!!?」
「うん…うん、ごめんね鈴架」
「お姉ちゃん…? どうしたの? 涙なんか流して…なにかあったの?」
「え…ううん、なんにもなかったよ?…ね、海斗くん?」
「…え? あ、はい」
海斗はなんとかそう言い繕った。
「よかったですわ。突然海斗さんが飛び出していってしまった時はなにかあったのかと心配しました」
「まったくだぜ!」
「しかし何事もなかったのだからよかったじゃないか」
「そうですね、秦兄さん。さ、真紅さんあがってください。料理は温めなおしますから」
「うん…ありがとみんな…心配してくれて…」
そこでまた真紅は涙を流しはじめた…。
「ったく大げさだなぁ…」
「翔くん…ここは」
「…海斗? まぁ、事情は知らねぇが、わかったぜ」
「さ、いきましょうか」
「うん…」
そして部屋に残っていた面々にも出迎えられて真紅の誕生日会は開かれた。
「それじゃ真紅さん。ケーキのろうそくの火をお願いします」
「うん、わかったわ。ふーー…」
そして火が消えた瞬間、
パンッ!パンッ!
みんなが一斉にクラッカーを鳴らした。
『誕生日おめでとう!』
「ありがとう、みなさん!」
「それじゃ誕生日プレゼントを渡しましょう」
一同はそれを聞いて頷いた。
「それじゃまずあたしからね! はい真紅、あなたが好きな紅茶のパックよ。今日庭園で取ってきたばかりだからおいしいと思うわ」
「ありがとうございます、雫先輩!」
「それじゃ次は縁、よろしくね!」
「…うん、雫お姉様…、あの、真紅さん…これ、メイさんと…、一緒に作ったの。…クマのお人形さん…初めてつくったから…変かも、しれないけど…受け取ってください…」
「ううん、大丈夫。上手にできてるわ。ありがと縁ちゃん! 大事にするね!」
「…、うん。うれしい…」
雫と縁が渡した後、クリスが声を上げた。
「それでは次はわたくしですね。はい、真紅さん。わたくしのはオルゴールです。それと中にわたくしが真紅さんのためだけに歌ったものを録音したカセットが入っていますわ。是非よかったら聞いてくださいね」
「うん! 後で聞かせてもらうわ!」
「それでは次は私ですね」
次は衛巳。
「真紅さん、その…あまりいいものが思いつかなかったので私が好きなファンタジー小説をまとめて買ってみました! 面白いのでよかったら読んでください!」
「うん。ゆっくり読ませてもらうわ」
「そんじゃ次は俺たちだな!」
「ああ!」
「そうね!」
「はいです!」
次は翔、秦、静、瑪瑙が声を上げた。
「それじゃあたしが代表で…真紅ちゃん、はい。あたしたち四人で買った望遠鏡よ」
するとそこにはどでかい望遠鏡がたたずんでいた…。
「わっ、大きい…」
「たりめーだ! 何てったって数字が6ケタいってたからな!」
「えぇ!? そんな高価なものを私に!? 貰ってもいいんですか…?」
真紅はおそるおそる聞いた。
「えぇ、いいわよ! じゃなきゃなんでこんな高いものを買ったのか意味がなくなっちゃうしね~♪ それに金額より大事なのは想う心よ? だから大切にしてあげてね?」
「はい! 必ず!」
「それでは最後に僕が」
「よっ、来ました! 最後だなんてよぉ、決めてくれるぜ!」
「翔…あんたは親父か? 翔なんか気にしないで進めてください、海斗さん」
「はぁ…? では僕のプレゼントはこれです」
すると海斗はポケットから首飾りのネックレスを取り出した。
「わぁ…この中心の水晶きれい…」
「どれどれ? わ、本当ね」
「これは僕が作ったものなんです。気に入ってもらえましたか?」
「うん! とってもきれい! ねぇ、海斗くん…つけていいかな?」
「いいですよ。せっかくですから僕がつけてあげますね」
「あ…うん」
そして海斗は真紅の後ろにまわって首飾りをつけてあげた。
「あっ…なんだか暖かい。それになんでだろう? まるで海の中にいるみたいに気持ちいい…」
それを聞いて翔と鈴架が海斗に近寄って、
「(…おい、海斗。お前なにかあのネックレスに細工したのか?)」
「(あんなに穏やかに笑うお姉ちゃん、久しぶりに見たよ…あれってどうやって作ったんですか?)」
「(水の精霊の力を借りて作ったんですよ。ですからあれは世界でたった一つ…真紅さんのためだけの首飾りです)」
「(かぁー…お前って本当に恥ずかしいことを普通に口にするのなぁ…)」
「(でも素敵だと思います)」
「(そうですか? ありがとうございます)」
それで全員からのプレゼントも貰って真紅は嬉し泣きをしながらも、
「ありがとうございます…私、こんな誕生日は初めてだから…本当に嬉しいです。絶対大切にしますね…」
真紅はそう話していた…。
「それじゃ食事にしましょうか。温めなおしましたから存分に楽しんでいってください!」
「はい!」
「それじゃ久しぶりに一緒に飲みますか? 雫」
「いいわね。付き合うわ!」
静と雫はさっそくお酒を開けだした。
「わぁ! これなんて料理ですか? ただの鶏の丸焼きじゃないですよね?」
「はい。これは『ピジョンの赤ワイン煮』という料理です。お爺さまが食材を送ってきてくれて話ではとてもおいしいらしいです。今、切りますね?」
「わたくしも手伝いますわ」
「それじゃお願いします」
「それにしてもうまそうだな! 他のもうめぇがこれは格別そうだな」
「そうだな」
「はいです」
鈴架がどんな料理かを衛巳に聞き、切り分けるというのでクリスが付き合うという。
翔がうまそうだといい秦と瑪瑙も同意する。
「…はい。…スピネス…、いっぱい食べてね…」
「オ~ゥ♪」
縁もスピネスに食べさせてやっていて楽しんでいた。
皆それぞれ楽しんでいる中で真紅と海斗は静かに食事をとっていた。
「海斗くん…その、あのね…さっきのことなんだけど…助けに来てくれてありがと。私、あの時は本当にダメだと思ったの…。でもこうして生きていられるのも海斗くんのおかげ…」
「…いや、真紅さんを助けたのは僕ではないですよ」
「えっ?」
「僕が来たときにはもう戦いが終わっていて、そこには『漆黒の風』と名乗る男の人が真紅さんを抱えていたんです。だからもしその方がいなかったら真紅さんは……すみません」
「ううん…謝らなくていいわよ、海斗くん。結果はどうあれ海斗くんが助けにきてくれただけで私…とても嬉しかったの…。
もちろんその人にも感謝しなきゃいけないけど海斗くんにはいつも助けてもらってるからいつかお返しするね♪」
「はい。楽しみにしています」
するとそこに翔がやってきて、
「おーい!どうしたんだ?主役がそれじゃいけねぇぜ?」
「そうね。今日はいっぱい楽しもうね海斗くん!」
「はい!」
それから一同はかなり騒いだそうだ…
◆◇―――――――――◇◆
…その頃、ガリウスは精霊界の辰雛へと水晶玉を通して会話をしていた。
『えっ! 無心様にお会いしたのですか!?』
「えぇ」
『そうですか! それを聞いて安心しました! きっと里の皆さん…特に白虎様は喜びます!』
「そうね。…それと無心さんから里の皆さんに伝言を預かっています。ほとんど白虎さんに対しての事が多いですが…今すぐに再生しますね」
辰雛『ぜひお願いします!』
そしてガリウスは水晶に記憶させた映像を再生させた。すると、
【ワシはまだまだピンピンしとるぞ。じゃから心配せんでいいわい!特に白虎…ワシもおまえと同じ気持ちじゃ。
友を失うのはとてもつらい…じゃがの、まだ残されたワシ達にも出来ることはあるじゃろ?主はすでにその答えを知っているはずじゃ。
よく考えることじゃの…ワシも答えが出たから今、この人間界におる。じゃから最後にお主に伝えたいことがある…。
『お主らしくないぞ白虎! もぅちっとしゃきっとせんかッ! 主の持ち前は皆を勇気づける元気じゃったはずじゃろ!? その元気を今の世代のものに分けてやらなくてどうするんじゃ!!』
…ふぅ、言うだけ言ったらすっきりしたわい! それではまた今度会おうぞ…次は直に会いたいものじゃな…】
プツンッ…
そこで無心の映像はきれた…。
『…あ、あはは…相変わらず元気な方ですね無心様は…ですがこの映像は確かに白虎様にはいい薬だと思います!』
「そうね。ぜひ白虎さんに見せてあげてくださいね。」
『はい!必ず!』
そしてガリウスは辰雛との通信を終了するのであった…。
――to be continued.
漆黒の風という謎の男の登場です。




