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イニシエからの絆  作者: 炎の剣製
31/71

031話 『闇夜を駆ける二つの疾風』

今回のキャラ達はまだ真紅達とともには戦いません。


…ある深夜のこと、影が町の中を徘徊していた。


「…また現われましたね?」

「そうねぇ…まったく物騒な世の中になったものよね!」


ビルの上に女性と一匹の大型の獣が立っていた…。


「…門限も近いから早々に片付けるわよ!」

「はい、…―――さん…!」


ダッ!


二人はビルから勢い良く飛び降りて、


「せいっ!」

「ガァッ!」


グシャッ!



………………

……………

…………



5/4(火)



今日はとある事情で真紅と鈴架はある家に歩きながら向かっている途中であった。


「今日は時間がとれてよかったね、お姉ちゃん」

「そうね。二ヵ月ぶりかしらね…? 雫先輩、突然押し掛けてびっくりするかしら?」

「うんそうだね! それより早く縁ちゃんに会いたいな~…前より元気になってればいいんだけど」

「そうね」


その時、


ブーーーッ!

バシッ!


「あっ!?」


突然後方からやってきたバイクの走者に鈴架が肩から下げていたリュックを盗られてしまった。


「あーーっ! 私のリュック!! こらー! 返せー!!」

「へへへっ…これは頂いていくぜ!」


キキキッ!ブーーーッ!

そして窃盗犯はそのまま立ち去ってしまった…。


「私のリュック~…」

「鈴架、しっかりして! まだあれなら解咒すれば追い付けるわ!」

「あ、そうだね!それじゃ解…!」

「―――あたしに任せて!」

「「えっ?」」


鈴架が解咒をしようとしたその時、二人の隣をすごいスピードで一人の女性が突っ走っていった。


「あの人…もしかして!」

「雫先輩だ!」



窃盗犯を追っていった女性は『速水(はやみ)(しずく)』。

生まれた月は7/9の蟹座。

髪は緑色で真紅と同じストレートのロングだ。

性格は静と似ていて豪快だが妹の縁をいつも心配している優しい人。

彼女は国内、海外両方に会社を設立している速水グループの社長、『佐助(さすけ)』の長女で近くの大学に通う大学三年のちょうど二十歳の女性だ。

大学のサークルは当然陸上部。その驚異的な足の早さには他の有数の業界、ジムからも一目置かれているとのことだ。



「へへへっ…次はどいつを狙うとするかねぇ…?」

「それはもう無理だと思うわよ?」

「な! 誰だ!? なにぃー!? バイクのスピードについてきてやがる!!」

「ハロー♪ 悪いけどそれ、返してもらうわ! ハッ!」


雫は一気に間合いをつめて鈴架のリュックを奪い返した。


「あ、てめぇ!?」

「怒るのもよろしいけれど前を見たほうがいいんじゃないかしら…?」

「は?…なにーーーっ!?」


なんと目の前は川になっていた。


「アデュー♪」

「うわぁーーーっ!!」


ドバシャーーーンッ!

窃盗犯は止まりきれずそのまま川へとダイブしてしまった…。


「ふぅ…さて!」


すると雫は携帯を取り出して電話をかける。


『…はい。速水家でございます』

「あ、リア! あたしよ」

『まぁ雫お嬢様! どうなされたのですか?』



彼女は『リア』。リアは速水家専属のメイド長である。おもに雫の頼みをよく聞いてくれて人当たりもとてもいい人だ。



「うん、早急にあたしが指示した場所に警察と救急車を手配してもらいたいのよ」

『まさかご友人が大怪我を負われたのですか!?』

「違う違う。その友人のモノを盗んだやつを捕まえたのはいいんだけど多分骨折くらいはしてると思うから手配してもらいたいのよ」

『そうでございましたか…かしこまりました、ただちに向かわせますわ。それで今はどこにいらっしゃるのですか…?』


そしてあらかた説明をして雫は電話を終了した。


「雫せんぱーい!」


そこに真紅の声が聞こえてくる。


「あ、真紅に鈴架。遅かったわね? それより、はいリュック」

「ありがとうございます、雫先輩!」

「私からもお礼を言わせてください。ありがとうございます!」

「いいっていいって! それより二人とも前よりさらに可愛くなっちゃって、このこの~♪」


そういいながら二人を抱き締めている雫であった。


「く、苦しいですよぉ~…雫先輩…」

「うん…」

「ところで二人ともこんなところまでなにしに来ていたの…?」

「はい! 雫先輩と縁ちゃんに会いにきたんです!」

「そうなんですよ」

「そうだったの~♪ ちょうどいいわ! リアに警察とかと一緒に車も手配させておいたからもうすぐ着くと思うわ」

「あ、そんなお構いなく…!」

「気にしないでいいわよ。あたしが乗ろうと思っていたことだし…」


キキッ!

そこにはなんとリムジンが到着していた。


「お嬢様ー! 迎えにまいりましたー!」

「ありがとう、リア! さ、早く乗って乗って! 帰りはあたしが運転していくからね?」

「は、はい…それでは失礼させてもらいます」

「同じくぅ…」


そして一同はリムジンに乗り込み、雫が運転をしながら家へと向かっていった…その中で、


「お久しぶりでございます。真紅さま、鈴架さま」

「はい、リアさんもお元気そうでなによりです」

「本当にお変わりがないようで。相変わらずきれいですぅ」

「まぁ…ありがとうございます。それで今日はどうなされたのですか?」

「あ、それは…」

「あたしと縁に会いにきてくれたのよ、リア」

「あぁ~! お嬢様! 運転中にお喋りはいけませんよ?」

「はいはい、わかってるわよ。あ、もうすぐつくわ」


キキッ!

リムジンは大きな豪邸の前で止まって、


「リア、後はよろしくね!」

「かしこまりました雫お嬢様。それでは真紅さま、鈴架さま、ごゆっくりしていってくださいね」

「はい、わかりました」

「は~い!」

「それでは…」


そしてリアはリムジンを片付けにいった。


「それじゃ立ち話もなんだから早く入ってちょうだい。縁もきっと喜ぶと思うから。それと“メイ”もね」

「「はい」」


そして三人は家へと入っていくとそこにいたすべてのメイド達が一斉に、


「「「「「「お帰りなさいませ!雫お嬢様!」」」」」」

「ただいま! 今日はあたしの友達を招いているから粗相のないように頼むわ!」

「「「「「「承知いたしましたー!」」」」」」

「それで誰かメイは今はどこにいるか知っているかしら…?」


雫の問いに一人のメイドが声を上げる。


「あ、メイさんなら今は縁お嬢様のところにいると思います」

「わかったわ。それじゃ縁の部屋に向かいましょう二人とも」

「「は、はい…!」」


雫にそう言われたが二人はガチガチになっていた。


「ちょっと二人とも…? そんなに堅くならなくてもいいのよ?」

「わ、わかってはいるんですがやっぱりこういう場所は少し落ち着かないんです…」

「うんうん…」

「…まぁ、そうね。でもその内いつもみたいに慣れるわよ」


そしてお話をしながら縁の部屋へと向かっていった…


そして三人は一つの部屋に到着するとノックをする。


コンコン…


「は~い。どうぞお入りくださ~い♪」

「あ、メイさんの声だね」

「それじゃ失礼するわね。」

「…あ、雫お姉さま…それにやっぱり…真紅さんに鈴架さん…」

「…あれ? やっぱり私たちがきても驚かないんだね、縁ちゃん?」

「…うん。さっき二人がお姉さまと来るのが“視えた”から…」



彼女は『速水(はやみ)(えにし)』。

生まれた月は6/9の双子座。

髪はショートで後ろはそろっている。

雫の妹で体が弱く家にいることがほとんどで口数が少ないが優しいほほ笑みを絶やさない子で鈴架と同じ15歳である。

ちなみに縁には少し先のことが視える『予知能力』を持っている。



「やっぱり縁様の力はすごいですね~♪ さっき雫様達がここへ来るのを予言していたのですよ~?」



そしてこちらは縁専属のメイドの『メイ』さんである。少しあわてんぼうだが縁の家庭教師もしているため雫からの信頼も高い子だ。



「そうなの。でもね、縁? その力は絶対に外では軽はずみに言葉に出して使っちゃダメだからね…?」

「…はい、お姉さま…」

「大丈夫だよ縁ちゃん! 私たちは絶対変な目で見たりしないから!」

「そうよ。だからそんな俯かないで笑って笑って!」

「…うん…」

「あー…それとメイ?」

「なんでございましょう? 雫様?」

「“あの子”は今どこにいるか分かる…?」

「あの子と申されますと~…? あ、スピネスちゃんですね~♪」

「そうよ。それとスピネスは男の子なんだから言うならスピネスくんよ?」

「「スピネス…?」」


初めて聞く名に真紅と鈴架は首をかしげる。


「あ、まだお二人とも知りませんでしたね~♪ それでしたら今は…」

「…姉さま…ここ…」


縁がそういって布団をめくるとそこにはとても大きな犬(?)が入り込んでスヤスヤと寝転んでいた。


「お、狼ーーー!?」

「だ、大丈夫なんですか!?」

「あ、大丈夫よ。この子人懐っこいから~♪」

「本当ですか…?」

「…うん…スピネスとても可愛い…」

「私たちは平気かな~…?」

「大丈夫ですって~♪ この家に来たときから一回も人に噛み付いたり吠えたりしてませんから~…とっても賢い狼さんですぅ~♪」

「オウ…」

「…あ、起きました。お姉さま…」

「おはようスピネス」

「オ~ウ!」


するとスピネスは雫に向かって飛び跳ねた。


「わわわわっ! 雫先輩!」

「だいじょーぶ! ね、スピネス?」

「オゥ♪」


スピネスは噛み付くどころか逆に戯れていた。


「あはは♪ もう困ったさんね~」

「「………」」


真紅と鈴架は一歩間違ったら危険な光景にある意味絶句していた。


「(む…?)」


するとスピネスは二人の方へと向いた。実に興味津々の顔をしている。


「あ、スピネスくんは真紅さま、鈴架さまに興味を示されたようですね~♪」

「え?」

「そうなんですか?」

「えぇ」


そしてスピネスはゆっくりと近寄ってきた。


「あわわわっ! お姉ちゃん、スピネスくんがきた! きたよぉ~!」

「だ、大丈夫よ鈴架…雫先輩もああいってくれているんだから」


そういいながら真紅はそ~っとスピネスの頭を撫でてやった…すると、


「オゥ…」

「あ、犬みたいな仕草をしてる…なんか可愛い…」

「そうね…スピネスくんを撫でてるとまるで優しい気持ちが伝わってくる感じがするわ」

「…よかったねスピネス…真紅さんと鈴架さんが気に入ってくれたみたい…」

「オウ♪」


するとスピネスは真紅の手を舐めてきた。


「きゃっ、くすぐったい…雫先輩、スピネスくんて本当にいい子ですね」

「でしょ?」

「あ、お姉ちゃんだけずるい! 私もスピネスくんとお友達になるぅ!」


そして鈴架は大胆にもスピネスの首に手を回して体を撫ではじめた。


「わー…ふさふさして気持ちがいいですね」

「ふふふ~…そうなんですよねぇ。あ、いけな~い! 雫様、今から紅茶を入れてまいりますぅ~♪」

「それじゃあたしはいつもので頼むわね」

「ハーブティでございますね?」

「…私も…」

「ミルクティですね? それで真紅さまと鈴架さまはなにがよろしいですか~?」

「えっと…それじゃレモンティでいいです」

「私はストレートティでお願いします」

「かしこまりました~♪ それでは少々お待ちくださいね」

「オゥオゥ!」

「はいはい、ミルクですよね?分かってますから安心してくださいね~♪」

「オ~ウ♪」


全員分を聞き終えてメイは出ていこうとするが雫に声をかけられて、


「…急がなくてもいいからね、メイ?」

「大丈夫ですよ~。私そんなドジじゃ…きゃあぁー!?」


ズテーンッ!

メイは何もないところですっ転んでしまっていた…。


「あちゃ~…言ってるそばから…大丈夫、メイ?」

「はい~。てへ…失敗失敗。それじゃ今度こそいってまいりますね」


そういってメイはおでこを擦りながら部屋を出ていった。


「ふぅ…いつもながら心配だわ」

「…姉さま大丈夫…メイさん、とってもよくしてくれてるから…」

「そうですね。メイさんとても頑張り屋さんですから」

「そうね。で、今日は二人ともなんでうちに来ようとしていたの…? ただあたしたちに会いにきただけじゃないのでしょ?」

「あ、はい。その前に雫先輩、縁ちゃん、今月の19日は何の日かご存じですか…?」

「19日…? えぇっと…あっ!」

「…真紅さんの…」


縁がなにかに気づいたのか真紅の名を口にする。


「そうなんです! 19日を持ちましてお姉ちゃんは17歳になるんです! つまり…」

「誕生日ね!!」

「は、はい…。それでよかったらぜひ雫先輩と縁ちゃんもと、鈴架が急かしてきたんで…あの、それで…来てもらえますか…?」


真紅はそのことを言いおわると顔を赤くして黙り込んでしまった…。


「もちろんよ! 可愛い後輩の頼みならいくらでもお姉さん聞いてあげちゃうんだから!」

「…あ、あの…私も体調がよければ平気です…」

「よかったねお姉ちゃん!」

「う、うん…あの、ありがとうございます」

「ん~♪ もう真紅のその照れ方ったらあたしが男の子だったら絶対ほっとかないほどの可愛さね~♪」

「そうですね!」


同士を得たと言わんばかりに鈴架が雫に同意する。


「オ~ウ!」

「…あ、スピネスも行きたがってるよ…」

「もちろん大丈夫です! なんせ誕生日会場は秦先輩の家ですから何人でも入れますし!」

「…秦って?…もしかして雲隠秦くん?」

「はい! 秦さんのお宅にはこの頃よくお世話になってまして私の誕生日のことを話したら、


『なら俺の家でやればいい』


といってくれたんです」

「ふ~ん…秦くんらしいわねぇ。それでやっぱりメンツは他にはクリスさん?」

「はい。後、雫先輩に話すのは初めてだと思いますがガリ……ソレイユ・カシウスという女性の先生と海斗くんという男の子を呼ぶ予定です…」

「(…海斗? はて…どこかで聞いたことのある名前のような…?)」


海斗の名前が出た途端、雫は考え込んでいた。


「雫先輩…?」

「え…えっと、なにかな鈴架?」

「あ、なんでもないです。ただ雫先輩が急にうわの空になっちゃったからどうしたのかなと思って…」

「なんでもないわ。気にしなくていいから。わかったわ。それで何時にいけばいいのかしら?」

「あ、詳しいことはこの手紙に記してありますので後で目を通しておいてください」

「オッケー♪ それじゃこれは預かっておくわね」


そしてそこに、


「みなさま~、紅茶とクッキーを持ってまいりました~♪」

「あ、ちょうどいいタイミングね!」


…それから五人+一匹は紅茶を飲みながらまた違う話をして盛り上がった…。

そして夕方、速水家の正門の前で、


「お世話になりました」

「ました~」

「えぇ、また来てちょうだいね。縁も喜ぶから!」

「「はい!」」

「それじゃ19日にまた会いましょう」

「はい!それじゃお邪魔しました」


そうして二人は家へと帰っていった…。

それを雫は無言で手を振りながら見送っていた。そして、


「雫お嬢様…準備はできております」


雫の後ろにはいつのまにやらリアが立っていた。


「…えぇ、ありがとうリア」


すると雫の顔はさっきの笑顔とは打って変わって真剣な眼差しになった…。


「それでは今宵もわたくしがお供します。雫さん…」

「お願いするわ…スピネス」


そしてそこには人語を喋るスピネスの姿があった。


「リア…このことは縁やメイ、それに他のもの達に悟られないよう後を頼むわ」

「かしこまりました。それではお早いお帰りを、雫お嬢様…いえ、今は『神速の氷笑』とお呼びいたします。いってらっしゃいませ」

「えぇ…!」


そして雫は白いコートを身にまとって闇夜の暗闇へとスピネスとともに走っていった…。


「…今夜もあの黒い影は出てくるかしら?」

「きっと出てくると思います。今まで奴らを相当狩ってきましたからそろそろわたくし達に歯向かってくることでしょうし…」

「そうね。でも…あたしがこんなことをしているなんて真紅達は微塵も思っていないでしょうね…?」

「そうですね。ですが少しながら真紅さん達から前にお話した力を感じました。もしかすると…?」

「十二支の生まれ変わりかもしれないということね? そしてあたしも…」

「はい。それにソレイユ・カシウスという女性…もしかしたら」

「思い当たる節があるのね? ま、いづれ分かることだわ。“It goes without haste.”つまり気長にいきましょうスピネス…いえ、“輝羽(きば)”さん!」

「はい、雫さん!」


なんとスピネスの正体は現在精霊界では行方不明のはずの『輝羽』であった。

そして今夜も二人は住民を襲う影達を狩りに町へと繰り出していったのだった…。




――to be continued.


雫と縁はご令嬢です。

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