030話 『人形の恐怖の影』
今回はサブキャラがメインのお話です。
…それはとある家の物置の中、
『(…また…会、いたい…――ちゃん…)』
女の子の形をした人形がそう呟いていた。
しかしそこに闇の気配が感じられて、
「…なんだよ。闇に近い声が聞こえてきたからわざわざ俺様が出向いてきてやったってのによぉ…こんなちんけな人形かよ…?」
そこに突如として来豪が暗闇の中から現れた。
『(…だぁれ…?)』
「いっちょ前に意志を持ってやがるか…九十九神ってやつか? 長年大切にされると化けるってやつか…。
だがその様子じゃもう主人には忘れ去られちまったみてぇだな? かわいそうになぁ…だが俺はそんな奴がお気に入りなんだよ! よし、てめぇにこれをやるぜ!」
『(…なぁに…?)』
「なぁに…てめぇのしたいことを叶えてくれる素敵な道具と思ってもらっていいぜ! それで名前はなんだ?」
『(…わたしの名前…?……『エファ』……』
「よし、エファ! お前の願いを叶えてきてやれ!」
『(……うん……!)』
そして来豪はエファに暗黒球を埋め込んだ。
『(……あっ!)』
カッ!
「(くくくっ…せいぜい短く楽しい時間を噛み締めることだな…)」
◆◇―――――――――◇◆
…昨日、真紅は新たに第二の覚醒を果たしたがまだ力が使いこなせていなかったがために気力を使い果たしてしまってそのまま鈴架に雲隠家に担ぎ込まれた。
そして色々とつのる話もあるだろうがそれはゴールデンウイークが終わり学校が始まったらガリウスに相談してみようという事で話はつきそれぞれ家に帰宅し、その翌日…
5/3(月)
辰宮家にて、
「お姉ちゃん…今日は部活休んだほうがいいんじゃないかな…?昨日の件で体調がまだ優れないんでしょ…?」
「平気よ。一日ぐっすりと寝たら体調も回復したから!」
「…うん、お姉ちゃんがそーいうなら私も安心だけど…ガリウスさんに話を聞いてもらえるまで昨日使った力は禁止だからね!?」
「うん、わかってるわ。心配してくれてありがとね鈴架…それじゃいきましょ!」
「うん!」
そして二人は休日の部活をしに学校へと向かっていった…。
…その頃、ある家では、
「あぁ~…久しぶりに昨日から家の掃除をしていたけど、このままじゃ部活に間に合わなくなっちゃう…部長としてそれはかなりまずいわ…!」
その人物は真紅達バレー部の部長である天見海耶である。
「それに久しぶりの部活だし早く真紅たちに会いたいから急がなきゃ…」
ガタッ…
「ん…? 何の音?」
海耶は掃除していた物置から聞こえてきた物音に反応して調べてみた。するとそこには少し薄汚れている洋風のお人形が転がっていた…。
「あ、この人形は…あれ? 確か名前は……ま、いいわ。部活から帰ってきたらきれいにしてあげるからね! それじゃ急いで部活にいかなきゃ」
そして海耶は急いで学校へと向かっていってしまった。
「………」
「いっちまったなぁ」
エファが無言でいるところにいつのまにやら来豪がいた。
「…海耶ちゃん、私のこと、忘れちゃったの…?」
「ひでぇご主人さまだよなぁ~。なぁ?」
「ううん…海耶ちゃんはそんな子じゃない…まだ大丈夫…学校…いく…」
「そうかい?」
エファは浮かび上がって海耶の後を追っていった。
学校の体育館ではバレー部の練習が始められていた。
「それじゃ部活を始めるわよ!」
『は~い!』
「それじゃそれぞれ各定位置のメンバーに分かれて練習を開始してください」
「あの、部長…?」
「なに…?」
「部長の荷物の隣に置いてある人形はなんですか…?」
「人形…? あれ、あの人形は物置に置いてきたはずなのに…」
そして近寄り人形を持ち上げた瞬間、バチッ!と痛みが海耶の手に流れた。
「いたっ!?」
「天見部長、大丈夫ですか!?」
そこに近くにいた鈴架が心配そうな顔をして近寄ってきた。
「だ、大丈夫…ちょっとピリッときただけだから…汚れているから静電気が発生したのかもね?」
「そうですか。ところでそのお人形はどうしたんですか…?」
「わからないわ。今朝は掃除をしている時に物置から出てきたんだけど時間がなくて置いてきたはずだったんだけど…」
「不思議ですね…それで名前はなんていうんですか?」
「それが思い出せないのよ…ほら前に私って色々な人形を持っているって話をしたでしょ? それでたぶん前にこの子は部屋に置けなくなっちゃったから物置にいっちゃったんだと思うわ…」
「そうなんですか」
「でもなんだか思い出さなきゃいけない気がするのよ…」
海耶がそんなことをいっているがエファはもう耳に入っておらず、
「(…そうなんだ…もう海耶ちゃんは私を必要としてくれないんだ…)」
「(そうだ! もうそいつはお前の主人じゃねぇ! だが安心しろ、今から俺様がおまえのご主人さまになってやるぜ! さぁ後は好きなようにやっちまいな…!!)」
「(…うん…ご主人さま…!)」
キィィィ…!
「なに…!?」
「人形が光りだした…!? あ、この気は…!」
「ハァァァァーーー!!」
「キャアーーーッ!?」
すると人形が巨大化し服が破れて中からすごい数の触手が出現し海耶を捕らえてしまった。
「鈴架っ!」
「あ、お姉ちゃん! 天見部長が…!」
「部長!」
「………」
だが海耶は恐怖のために気絶してしまっていたために真紅達の声は聞こえないでいた。
その頃違う学校の剣道場では邪気を察知したのか秦と瑪瑙が反応をしていた。
「「はっ…!?」」
「この黒い波動は…!」
「すまんみんな! 一度席を外す!」
「は、はいわかりました部長」
「いくぞ瑪瑙!」
「はいです!」
そして二人は邪悪な気を放っている体育館へと急いだ。
そして遠くから見下ろしていた来豪は、
「…時空閉鎖広域結界…発動!」
結界を発動させた。
それによって動きを停止させる人々。
「お姉ちゃん!」
「えぇ! 時空閉鎖広域結界ね! いくわよ鈴架!」
「うん!」
「「解咒!!」」
そして二人以外その場にいた人たちは時間が止まってしまった。だが…
ガラッ!
「遅くなってすまない!」
「です!」
「秦さん!」
「瑪瑙ちゃん!」
「な、なんだあの怪物は…!? それに捕まっているのは天見君か!?」
「はい、今すぐ助けないと部長がどうにかなってしまうかもしれません!」
「そうか…。よし瑪瑙、頼むぞ!」
「はいです!」
「出てきて虎鉄拳!」
そして瑪瑙は刀化し秦に持たれ鞘から解き放たれ、鈴架は虎鉄拳を装着した。
「それじゃいきましょ! 秦さん、鈴架!」
「あぁ!」
「うん!」
「私の邪魔をしないで! シャアッ!!」
するとエファは体から飛び出している触手を飛ばして攻撃してきた。
「くっ…! やぁっ! 瞬炎拳!!」
「雷撃パンチ!!」
二人の攻撃により触手は燃えて粉々になったがすぐに次弾の触手が伸びてきて中々前に進めないでいた。
「はぁっ!」
秦は次々と触手を切り裂いていき、
「はぁぁーーーっ!」
秦の渾身の一振りで起きた斬風で殆どの触手を一掃したが、やはり量が量だけに本体までは届いていなかった…。
「く…! 天見君さえ人質にされていなければ止めをさせるのだが…!」
『秦様…少しいいですか?』
「なんだ?」
『はい…私、あの子とお話したいです…』
「なに!?」
「危険だよ、瑪瑙ちゃん!」
『平気です…私はあの子と同じ“モノ”ですから心が伝わってくるです…悲しい悲鳴が。だから、任せてください…!』
それで一同は終止迷ったが、
「わかった…」
「秦さん!?」
「秦先輩!?」
「根拠はないが瑪瑙ならきっと大丈夫だ…だから、任せてみようじゃないか二人とも?」
「「はい…」」
『ありがとうございますです! 秦様!』
そして瑪瑙は人型へと姿を変えてエファへと近づいていった…。
「なんだ貴様!? 近寄ってくるなぁーーーっ!!」
エファは触手を瑪瑙に放った!だが…、
「はぁっ!」
瑪瑙は自らの手を硬化し、手刀で触手を切り裂いた。
「!?」
そして瑪瑙はエファに近付きながら…。
「私の話を聞いてくださいです!」
「は、なし…?」
「はいです! まだあなたに優しい心が残っているです! だから、こんなことはやめてくださいです!」
「知ったような口を…! 私の心はもう邪悪に染まっているわ!」
「それは嘘です! 同じ“モノ”の私だから分かるです…あなたの心の中にはご主人さまに対する想いで今も大粒の雨が降っているです…!」
「それがどうした! もう私は海耶ちゃんに捨てられてとうに吹っ切れてるのよ!?」
「それも嘘です! 本当はあなたはまたその人に大事にされたいんじゃないですか!? その人に対する想いはその程度だったですか!?」
「…でももう遅いよ…何年もほったらかしにされて名前まで忘れられちゃって…」
「天見部長はそんなひどい人じゃないわよ!」
そこに鈴架が声を上げる。
「鈴架さん…」
「鈴架…」
「それは名前まで忘れられちゃってあなたも悲しいらしいけど…天見部長もなんとかあなたの名前を思い出そうとして頑張ってたんだよ!? それに前に天見部長は言ってたわ!
『私は大事にしている人形は決して手放さないわ!』
って! だからきっとあなたのことも思い出してくれるはずよ!」
「…本当…?」
「うん! だからあなたも天見部長のことを信じてあげて!」
「…うん! 私、もう一度海耶ちゃんのことを信じる!」
「その意気です! だからもうあなたのご主人さまを離してあげてくださいです…」
「…うん…ごめんね、海耶ちゃん…」
エファが海耶を解放しようとしたが、
「あ~ぁ…速攻で裏切りやがったか…! なぁエファ? てめぇの今のご主人様は誰だったかなぁ?」
『!!』
「その声は、来豪か…!」
「そうだぜ…!」
すると来豪はヌルッと暗闇から姿を現した。
「それよりよぉ~? おいエファ、俺様は今てめぇのご主人様は誰かって聞いてるんだよ…さぁ答えてみな?」
「…私のご主人さまは海耶ちゃんよ! あなたなんかじゃないわ!」
「そうかいそうかい…ははははっ!」
「………」
来豪はそこで一笑すると、
「分かったよ…おまえみてぇな悪いガキには調教が必要らしいな! 暗黒球、リミッター解除だ!」
するとエファの胸元の暗黒球が突然光りだした。
「あああああああーーーっ!!?」
そしてエファは悲鳴をあげて苦しみだした。
「エファさん!!」
瑪瑙が叫ぶがエファの体から発する光は次第に収まっていき、
「……」
「さぁ、生まれ変われ! エファ!」
そして来豪の言葉で再起動したエファは…、
「全ターゲット…殲滅!!」
エファは突如暴走しだしてゆるみかけていた触手がまた力を戻し海耶を再び縛り上げて、
「あああああっ!!」
触手を四方八方へと放ち攻撃を再開した。
「ははははっ!! いい光景だぜ! やっぱりてめぇには心なんてものは不要だったのさ! この…糸くずの塊が!!」
(ブチッ!)
その時、一同は来豪のあまりの暴言に対してキレた。
「…よくも、エファさんを…! せっかく優しい心を取り戻してくれたのに…!」
「『ただの糸くずの塊』ですって…? ふざけないでよ!」
「そうよ! なんにだって大事にしてもらえば心が宿るものよ! それを…あなたは台無しにしたわ!」
「そう! それは決して許されざる行為だ! いくぞ瑪瑙! 我らの手でエファくんを魔の呪縛から解放してやるんだ!!」
「はいです、秦様!!」
瑪瑙は刀化すると直ぐ様光りだして、
「それは一瞬の閃光…」
『善の魂を正しき道へと誘い…』
「そして天のご加護をもって悪しき魂を打ち払う必殺の刄! その名も…!」
『天浄真光閃!!』
そして刀はすさまじい浄化の光を放った。
「今度は翔のときのような失敗はしない! 今こそこの技を成功させるぞ、瑪瑙!」
『はいです!そしてエファさんを…!』
「はあぁぁぁ…せいっ!!」
秦は思い切り刀を振り下ろし天浄真光閃の輝きは三日月状の刄となって一気にエファを貫通した。
「ギッ!? ギャアアアアアッ!!」
そして暗黒球は真っ二つに割れてエファはもとのお人形の姿に戻り海耶はその場に倒れていた…。
「やったぁ!」
「やりましたね! 秦さん、瑪瑙ちゃん!」
「あぁ…だがまだ終わってはいない…!」
『はいです…!』
一同は来豪へと目を向ける。
それに対して来豪は無言。
「今日の俺たちは少々いつもより苛立っているようだ…相手になるというのならば全身全霊の覚悟でやってやろう…来豪!」
チャキッ…!
秦は来豪に向かって構えをした。
だが来豪は気だるげな顔をしながら、
「けっ…俺様とて己の力量は弁えているつもりだ…いいだろう。
作戦は失敗したことだ、もう用はねぇから撤退してやるよ! だがな、次は今日以上にてめぇらを精神的に苦しめてやらぁ! 首を洗って待っていやがれ!」
そして来豪は姿を消した。
「くっ…負け惜しみを! だが天見くんとエファくんを救えてよかったな」
『はいです!』
そんな時だった。時空閉鎖広域結界が来豪がいなくなったために元の時間へと戻ろうとしていた。
「!…鈴架、秦さん、瑪瑙ちゃん! 時空閉鎖広域結界が崩れはじめました! 大事になる前に早く天見部長とエファちゃんを違う場所に運びだしましょう!」
「そうだね、お姉ちゃん!」
「うむ、そうしよう」
「はいです」
そして海耶を体育館裏まで運んで、
「…う、ん…あら? 私どうしてこんなところに…あ、真紅に鈴架ちゃん。それに秦くんに瑪瑙さん。私…どうしてこんなところにいるの?」
「それより天見さん…これを」
瑪瑙は海耶にエファを手渡した…。
「もう天見さんならきっと思い出せると思うです。その子の名前を…」
「…この子の名前…」
海耶は少し考え込んだ。すると突然涙を零しはじめて、
「…そうだわ! この子の名前はエファ…もう死んじゃったおばあちゃんから最後に買ってもらった私の一番大切なお人形…。ごめんね、エファ…今までずっと忘れちゃってて……もう絶対忘れたりしないからね…」
海耶は涙を流しながらエファを大事に抱き締めた…。
「それじゃ天見部長…私たちは先に戻っています…」
「天見部長が泣き顔じゃ他の部の子達に示しがつきませんからね…」
「うん…気を遣ってくれてありがと二人とも…すぐに戻るわ」
「では俺たちも…天見くん、その人形をこれからも大事にしてやってくれ」
「私からもお願いするです!」
「はい…きっと、大事にするわ」
そうして四人は海耶を残して先に戻っていった…そして戻る途中で瑪瑙がある事を秦に尋ねた。
「ねぇ、秦様…?」
「ん…? なんだ瑪瑙?」
「秦様、私のことを忘れたりしないでください…! 忘れられたら…私もエファさんみたいになってしまうかもしれないです…」
「そんなことか…大丈夫だ、瑪瑙。おまえは生涯ずっと俺の相棒だ! 決して忘れたり見捨てたりはしない! だからもうそんな自らが悲しくなるような話はしないでくれ…」
「はい…。うぅ~…秦様ー!」
瑪瑙は感極まったのか秦に抱きついていた。
「おっと…よしよし。」
「ありがとうございますですぅ! その言葉だけで瑪瑙はうれしいですぅ!」
瑪瑙は泣いているのか笑っているのか分からない顔で、でもいい笑顔を浮かべていた。
「よかったね、瑪瑙ちゃん!」
「はいです!」
「秦さんも瑪瑙ちゃんを大事にしてあげてくださいね?」
「わかっているさ」
…そして海耶に今も尚優しく抱き締められているエファは心の中で、
「(…海耶ちゃん…これからもずっと一緒…)」
――to be continued.
少しモノの想いを描いてみました。




