002話 『別れの言葉』
プロローグ2話みたいなもの。
そして赤竜達は里に戻り、起こったことを先代十二支のリーダーで現在里の長を勤めている“白竜”に報告した。
「そうか…轟殿は次元の彼方に、そして舞架は未来へと連れてかれてしまったのじゃな…」
「はい…」
白竜はそのことに非常に残念がった。
そこに舞虎と舞架のおじいちゃんであり先代寅の十二支で現在は十二支の上の階級の四神の一角を勤めている“白虎”が声を荒げる。
「くそっ! 奴らめ、舞架をこれ以上苦しめてどうしようっていうんだ!!」
「お爺さま…」
「それで夜絵達はこの事態をどうにかするために師匠に聞きにきたんです!」
「…そう。それじゃ聞くわね、皆さんにはもうそれだけの覚悟はおありなんですね?」
『………!』
みんなはガリウスの言葉に何かを覚悟したような顔立ちで頷いた。
「本気なのね…それじゃ今から闇の王が消えた次元の穴が開いたところに案内してください。それとこれからすることはとても大事な事ですから肉親や大事に思っている方はついてきてください…!」
ガリウスは悲しい面立ちでそれを告げた。
…そして闇の王達が消えた場所にガリウスを始め十二支達。
そして先代の四人である白竜、白虎、光真の母である“劉輝”、巌時の師匠であり里一番の鍛冶師である“無心”。
鳥翔の嫁である“可憐”、赤竜の妹である“辰雛”、氷牙の相棒である氷狼の“輝羽”が集合していた。
「それではこの場所に閉ざされた空間を開きます!」
ガリウスが難しい呪文を唱えていく。すると見る見るうちに閉じていたはずの次元空間が姿を現した。
「おぉ! さすがガリウスさん!…ん? でもよぉ、なんかさっきと違って不安定な感じだな…?」
鳥翔がそう褒め称えるが次元空間が闇の王が開いたものより不安定だということを瞬時に見抜く。
「はい…たしかにこのゲートは闇の王が通った事に間違いありません。ですが闇の王と違い私の魔力では開くのが精一杯…だから入った途端に確実に轟君と同じ末路を辿ってしまうと思うわ…」
『!!』
轟と同じ末路。それは次元空間を永遠に彷徨うということ。
「じゃ、じゃ! どうすれば通ることができるの!?」
「それは…」
するとガリウスはそれきり黙り込んでしまった。
「?…ガリウス殿、どうしたのじゃ? 早く教えてくだされ」
巌時が代表してガリウスに聞く。
ガリウスはその重い口を開いて、
「…その前にもう一回だけ聞くわね。あなた達は例えどんな事が起こっても舞架ちゃんの事を救いたいのね?」
ガリウスはもう一度一同に聞いた。しかしやはりみんなはそれにも動じず頷いた。
「………そう、それじゃ言うわね。その方法は一つだけ…それは魂だけの存在となって通る以外に手はないわ。
もちろん生まれ変わって記憶も失い二度とこちらの世界にも元の姿では帰ってこれないわ…」
それを聞いた瞬間、一同に衝撃が走った。そしてガリウス自身も涙を流し泣いていた…。
そして終止無言だったが赤竜は口を開いた…。
「だが、それ以外方法はないんですよね? なら俺はいきます!」
「赤竜兄様!?」
「轟君ができた事なんだ! それなら俺たちにもできるはずだ!」
「で、でもそれじゃ二度と兄様と会えなくなってしまいます!」
「辰雛…しかし俺は次元の彼方に消えてしまった轟君の意志を継ぎたいんだ! だから俺はいく!! こんなわがままな兄を許してくれ…!」
「兄様…うん、わかった。でもちゃんと舞架ちゃんを救ってやらなきゃ許さないんだからね!」
「あぁ!わかっているさ!」
赤竜は必ず救うと誓う。
それに呼応して水滸が声を出す。
「赤竜…わたくしもいきます! みんな離れ離れになってしまうのは悲しいですけど…きっといつか再会することができます! だからわたくしは赤竜を信じます!」
「水滸…ありがとな。また未来のどこかで会おう!」
「はい!」
「それならわたくしもいきます!」
「舞虎…おまえ!」
「お爺さま、かならずお姉ちゃんを救ってみます! だから、だから…うぅっ…最後だけ甘えていいかな?」
「お、おう! どんとこい!」
そして舞虎は白虎の胸に飛び込んだ!
「うっ…ウワァーーーンッ!! お爺さま! 舞虎、頑張るから…頑張ってくるから…!」
「おまえは俺の自慢の孫娘だ! 死んだとうさん、かあさんもきっと喜んでいるだろうよ! だ…から頑張っていってこいよ!」
「うん…!」
そして次々にみんなが声をあげていった。
「じゃボクらも!」
「うん…!」
「子乙ちゃん、嵐くん…」
「辰雛ちゃん…ごめんね。でもいつかまたかならず出会えるよ! 記憶を失ったとしても僕らの絆は絶対…だから僕がいなくなっても幸せにね…! そしていってきます!」
「うん、うん…頑張ってね…」
そして恋人である嵐と辰雛の二人はお互いに抱きつき泣いていた…。
「………」
その光景を笑いながら無言で見守っていた子乙に白虎が話し掛けた。
「おぅ、子乙…俺はおまえの親父さんやおふくろさんの代わりになれねぇかもしれねぇが…胸はかしてやっていいぜ…?」
「大丈夫です。だってどんな時でも別れは泣かないって…きめて…いるから…だから…」
「無理すんな…こんな時だからこそ泣いとくもんだぜ!」
そして白虎は子乙の頭を撫でてやった。そして子乙は耐えきれずにそのまま白虎の胸に顔を埋めていた。
「うっ…うぅっ…」
「よしよし…」
そして光真が劉輝と会話していた。
「お母さま、いってまいります…持病があるのですから体はくれぐれも気をつけてくださいね?」
「もう…こんな時まで私の心配をしてこの子は…でもあなたらしいわね。頑張っていってくるのよ! 光真!!」
「はい、お母さま!」
そして巌時は無心と、
「師匠…こんな時、ワシはなにを言えばいいかわからんが…師匠に今まで教わったことは決して忘れません!」
「記憶を失ってしまうというのになにいっとるんじゃ! おまえらしくないのぅ…じゃがその気持ちだけでもうワシは十分じゃ! 気張っていってくるんじゃぞ!」
「はい、師匠!」
そして氷牙。
「輝羽さん…今まで私のことをずっと守ってくれてありがとう。そしていってくるわね!」
「はい! 氷牙さんも生まれ変わっても嵐さんと仲良くしてくださいね!」
「…えぇ、任せて!」
そして三羽鴉である無幻慈、岩蛇、鳥翔が声を出す。
「ならば我ら三人も共にいきます!」
「はい、生まれ変わったとしても我らの絆は決して壊れたりしませんから!」
「そうだぜ!」
そんな三人を見て無心は、
「まぁ、ぬしら三人は生まれ変わっても性格変わりそうになさそうじゃけどなぁ…」
「ひっどいっすね! ま、大方そうでしょうけどね!」
「無心殿…影紫、いや瑪瑙をあなたに預けます!生まれ変わってもかならず再会できるだろう予感がします! なぁ、相棒!」
『そうですね…ちょっと淋しいですけどいつかまた会いましょうです、ご主人さま! では…おやすみなさいです…』
無幻慈の愛刀であり剣の精霊の意志が宿っている瑪瑙…『衝覇武神刀・影紫』は無心にお札を貼られて長い眠りについた。
「…瑪瑙。きっとまた、な…」
無幻慈は瑪瑙に当分の別れを言う。
「鳥翔…」
「可憐…」
「「………」」
鳥翔と可憐の二人は見つめあい言葉を交わさずにいたが、
「可憐…」
「はい!」
「俺はいなくなっちまうけど、お腹の俺たちの子のこと…頼んだぜ!」
「はい…! 任せてください!」
『えぇーーー!?』
鳥翔のとんでも発言で全員は大声を上げる。
「あー、うるせぇ! まだみんなには話してなかっただけだ!」
「もう少ししたら話そうと思っていたんだけど…もうこんな時ですから」
『………』
それでみんなはぶつぶつ話し込んでいた…。主にこんな時まで隠していたことに対して。
「…ったく、あいつらは…。ま、仕切り直しだが…行ってくるぜ! 可憐!」
「はい…頑張っていってきてください。そ、その…あ、あなた…」
「可憐…今なん………ん…」
可憐は最初にして最後の「あなた」という言葉を言い返事の代わりにキスを泣きながら交わしていた。
それを見ていた慧星と夜絵というと、
「まったく…鳥翔と可憐はこんな時までねぇ~。ま、あの二人らしいけどね」
「確かにな…」
「うわっ! 夜絵が初めてあたしの言ったことを真面目に同意してくれた!」
「本当のことだから同意しただけよ。たくっ、いちいち恥ずかしい奴だな…」
「う、うるさいわねぇ!」
犬猿の仲である二人は最後まで喧嘩腰であった。
そこにガリウスが話しかけてきた。
「最後の最後まであなた達はその調子なのね。私も最後の別れくらいみんなと同じふうにしたかったわよ…なんてね!」
「師匠、“最後”は余計ですよ?」
「そうそう! だってガリウスさんは不死だからいつかまたどこかで会えるかもしれないし…」
「確かに………そうね。それじゃお別れはしないわよ? 代わりにまた会いましょう、ね!」
「はい!」
「でも私以外のみんなとはちゃんとお別れしてくるのよ?」
「わかってますって! いくよ、夜絵!」
「あ、こら! 腕を引っ張るんじゃない!」
そしてみんなとの別れをあらかたして、本当の意味での別れが近づいてきた。
――to be continued.
まだ続きます。




