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イニシエからの絆  作者: 炎の剣製
17/71

017話 『美薙家の真実』

海斗のお家事情を語ります。



闇の王は配下である来豪、仮面の女、滅を集めていた。


「さて、みなさん…彼らへの挨拶はどうでしたか?」

「それですが…ただの影達に奴らの相手はもう無理だと思いますぜ?」

「だが我らと戦うとなるとすればまだまだ役不足だな…つまらん…」


来豪が影では無理だと報告し、だが滅はまだ我らの力には及ばないと下す。


「…一つ報告します。一人だけ苦戦というほどではありませんが後々厄介になると思われましたので仕留めました…」

「とどめはさしておいたのか…?」


仮面の女の報告に闇の王はトドメを刺したかと聞く。


「…いえ、援軍が来てしまいましたのでそこまでは…申し訳ありません、闇の王。ですがしばらくは再起は望めないでしょう…?」

「まぁ、いい…すぐに楽しみを消してしまってはいささかつまらんだろうからな…彼らにはこれから存分にあがいてもらおうではないか」

「では我らはまた任務に戻る…」

「頼むぞ…」

「はっ!」


そして仮面の女と滅は姿を消した。


「来豪は引き続きこの町での任務を続けてくれ」

「わかりましたぜ!」


来豪も姿を消す。



◆◇―――――――――◇◆



4/24(土)



『…かあさん…かあさん…どこ?』


海斗は夢の中で昔のことを思い出していた…そこはまるで火の海のように辺り一面が炎につつまれていた…。


『…海斗…きちゃいけないわ…』

『どうして…?』

『…ここは私たちがなんとかするから…海斗だけでも逃げなさい!』


そして母の姿が炎の中へと遠ざかっていった…。


『かあさーーーんっ!!』


海斗の夢は炎に包まれていく。


「(うっ…うぅ…か…あさん…)…かあさん!」


海斗は悪夢を見たように目を見開き目を覚ました。


「…はぁ…はぁ…はぁ…ゆ、夢…?」

「海斗くん…!」

「…真紅、さん?」


海斗のそばには真紅は立っていて海斗に思いっきり抱きついた。


「っ! いた、痛いですよ真紅さん!」

「うえぇ~ん…よかった…よかったよぉ…海斗くんが起きてくれて…」

「真紅さん…」

「うっ…うっ…えぐっ…」


真紅は海斗が目を覚ましてくれたことに泣きながらも喜んでいた。


「…すみません。僕は真紅さんのことを悲しませてしまいましたね…」

「そんなことはいいの…いいのよ。海斗くんさえ無事でいてくれれば…」

「ありがとうございます…ところで僕は一体? それにここは…?」

「グスッ…ここは――…」

「ここは俺達の家だぜ!」


そこに翔が部屋に入ってきた。


「…しかし真紅も大胆になったもんだよな!」

「え…?」

「………!」


すると海斗は言っている意味に気づいたのか何も言わず顔を赤くして照れていた。


「…あっ!」


すると真紅も目を拭きながらそそくさと海斗から離れた。

それで二人共顔を赤くしているのだった。

そして翔以外のメンバーも部屋に入ってきた。


「起きたか…安心したぞ海斗くん」

「翔ぅ~! ノックくらいしてから入りなさいよ!?」

「鈴架ちゃんの言うとおりですわよ? せっかくいい雰囲気でしたのに…」

「俺はしたぞ! あっちが気がつかなかっただけだろう!?」

「でも…勝手に入るのは駄目だと思いますですよ? 瑪瑙もそう思いますです」

「っ…」

「お前の負けだな、翔」


それで翔は落ち込む。

そこにガリウスが話しかけてきて、


「それより本当によかったわ…話を聞いて来てみたら海斗くん傷だらけだったじゃない?」

「すみません…不覚をとってしまいました」

「いいのよ! それより海斗くん……今…体は動く?」

「……」


海斗は無言で首を横に振った。


『えっ!?』


それでガリウスを除く全員は声を上げる。


「やはりね…海斗くんに刺さっていた針の場所はどこもかしこも人体の急所だったから…」

「そ、それじゃ海斗くんはもう動けないんですか!?」


真紅はまた泣きそうな顔になってしまった。


「いえ…大丈夫ですよ。ガリウスさん今から僕が水の針を手からだしますから受け取ってくれませんか?」

「いいわよ。でも力は入るの…?」

「はい。体は動かせませんが神経は生きていますから」


そして海斗は腕から水の針を出し、それをガリウスが受け取った。


「いいわよ? それでこの後はなにをすればいいの?」

「…まさか針治療とかじゃないよな?」

「はい、その通りです」

「え…? 確かに私は医者の資格は持っていますけど針治療ばかりは専門外よ?」

「僕の言った通りの場所に刺してください。右腕だけでいいですから」

「…わかったわ。」


そしてガリウスは少し躊躇しながらも海斗に指示された場所に何本か刺した。


「っ!」

「い、痛そう…」

「…どう? 海斗くん…?」

「…よし! 右腕だけなら動きます!」

「ふぅ…成功してよかったわ」

「よし!」

「海斗くん!」

「よかったな!」

「はいです!」

「はい!後は僕だけで平気ですからちょっと待っててください。まずは左腕から…」


すると海斗は右腕だけで体中のありとあらゆる急所に針を刺していった…。

…そして、


「よし…これでもとに戻ったはずですよ。当分はおとなしくしてなきゃですけど…」

「それはよかったですわね! でも…海斗さんはどうしてそんな事ができるのですか?」


海斗は少しためらったが、


「…やはり話さなくてはいけませんね。実は僕の家系は昔から針に関しての高度な医療の技術を受け継いできたんです。それにこの体術は昔から狙われる事が多かったらしいのでつくられたそうです…」

「なぜ初めて会った時に話してくれなかったの…?」

「話すに値する事ではなかったからですよ…。」

「…なんでですか?」


鈴架がそう聞く。


「…それは、美薙流はこの力が原因で過去に対立して西の本家の流派と東の分家の流派の二つに分かれてしまったからです…」

「…対立?」

「なにで対立をしてしまったんだ?」

「…人助けと…殺しで、です」

『!?』


海斗がいった言葉に一同は驚いていた。


「そういう事だったんですね…話したくなかったのは」

「…はい。西が守りと人助けを目的とした流派、東が殺しと利益を目的とした流派でした」

「でも…それなら海斗くんはこんな医療技術をもっているんだから…西の流派なのよね…?」


真紅がそう聞くが海斗は首を振り、


「…いえ、違います。僕は東の分家の人間でした」

「そんな!」

「僕は小さい頃からなにも教えてもらえずただひたすらに分家の技を研いて全てを覚えました…ですが僕の親は分家の考えに不満を持っていたために僕と二つ上の姉を連れて本家に逃げたのです」

「それじゃつまり海斗さんはまだ人を殺さずに本家に逃げてきたということですか…?」

「はい。姉はもう何回か実戦に投入されたと聞きますが…ですがそれで逃げてきたはいいのですが少しの間は僕ら家族は非難の目で見られてきました。

しかし時が経つにつれてやっと受け入れられまして本家の技も全て教わりました」


それに全員はホッと息をつき、


「よかった…。それじゃ海斗くんは人殺しはしていないんだね!」

「はい。でももし僕が人を殺したことがあるといったら真紅さんは僕を嫌いになりましたか?」

「いえ…それでも私は海斗くんの事を決して嫌ったりはしないわ! だってもう友達だから!」

「ありがとう。真紅さんならそういってくれると思ってました…」

「うん! お姉ちゃんは誰も差別をしたりしないもん!」

「そこが真紅のいいところだな」


鈴架と秦がそう真紅を褒める。


「…でもよ? それじゃ昨日海斗を襲った奴は東の分家の奴じゃないのか? 奴らとつるんでよぉ…?」

「彼女は“仮面の女”と名乗っていました。ですがおそらくは分家の御方ではないと思います」

「それじゃまさか本家の御方が!?」

「いえ、違います。僕が思うに本家と分家のどちらでもないでしょう」

「どうしてですか…?」

「…それは、もうどちらの流派もこの世には存在していませんから」

『!!』


海斗の思わぬ発言に驚愕する一同。


「何が、あったんだ…?」

「真紅さんには前に親は事故でなくなったといいましたよね?」

「う…うん…」

「あれは…実は嘘なんです。本当は僕だけを残して何者かによって一夜にして壊滅させられてしまったんです…」


海斗はそれで悔しそうに顔を歪める。


「たぶんやったのは昨日のやつでしょう。そしてよりにもよって奴は…奴は!」


すると海斗の表情が険しくなった。


「その“仮面の女”と名乗る女性がなにかしたのですか…?」

「はい! よりにもよって僕の目の前で『遥海(はるみ)』姉さんの愛用していた“針水晶(しんすいしょう)”を出したんです!」

「針、水晶…?」

「針水晶とは自分の力次第でいくらでも針を作り出せる魔石です。僕も“翠星石(すいせいせき)”というのを持っていますがそれとは比べものにならないほど強力なんです」

「その姉もそいつにやられたのか!?」


翔が声を荒げる。


「…わかりません。なんせ戦える人は全て出向いていってしまいましたから。そして姉さんも…」

「そう…」

「…ですが消息はわからない以上姉さんも…。“仮面の女”が姉さんのを持っていたのがいい証拠ですよ!」


海斗は涙を流しながらその事をみんなに教えてくれた…。


「許せんな!」

「はい! きっと神もその行為にお怒りでしょう…!」

「うん! 許せないです!」

「でも…」


そこで海斗は口を開き話しだした。


「海斗くん…?」

「でも僕は決して憎しみや怒り…そして復讐心からくる力だけでは戦いません。それでは余計悲しみが増してしまいますから…それに昨日は突然のことでつい我を忘れて戦って負けてしまいましたし…」

「重いもん背負ってるってのに偉いな、海斗は…。俺だったら秦兄や親父が殺されちまったらとか考えたらどうにかなっちまいそうだぜ」

「俺だってそうだ。だから俺達が守るのだろう? なぁみんな」

「はい! もう誰も悲しい思いをしないためにも僕は戦います!」

「うん!…でも海斗くんは今はまず体を治さなくちゃね?」

「はい、そうですね…」


そして真紅は海斗を横にしてやった…。


「それじゃ秦さん、お台所を借りて使ってもいいですか?」

「あぁ、構わないぞ。今は衛巳がいるはずだから言えば使わせてくれるはずだ」

「わかりました! それでは今から海斗くんがすぐに元気になるようにお粥を作ってきますね!」


そういうと真紅は台所にむかった。


「…元気ですね、真紅さん?」

「それがそうでもないんですよ!」


海斗が真紅は元気だと言うが鈴架がそれをすぐに声を出して否定した。


「えっ…?」

「はい、わたくし達は一旦帰ってから来たんですけど…真紅さんは一人だけ残ってずっと海斗さんの看病をしていたんですよ」

「えぇ…私が後はやるっていったんだけれど聞いてくれなくて…あれはもうかなり無理しているわね?」

「あれはもしかするとなぁ…さっきの行動にしても怪しいしな。本人はまだ自覚はないようだがな?」

「なんの話ですか…?」

「こっちもか…」


それで翔は呆れの表情をする。

鈴架も続いて、


「海斗さん! 私の大好きなお姉ちゃんを裏切るような事をしたら許しませんよ!?」

「裏切るって…一体…?」

「ですから――…むぐっ?」


なにかを言おうとした鈴架だったがクリスに口を塞がれてしまった。


「まぁまぁ鈴架ちゃん…海斗さん、ちょっと待っててくださいね?」

「?…わかりました」


するとクリス達は鈴架をつれて部屋の外に出ていった。

二人は廊下で、


「…なんですか?」

「まだお二人はご自分の気持ちにお気づきになっていませんから…気づくまで見守っていきましょうね?」

「そうです! きっといつか、ですね!」

「そうだな…」

「思いはいつか報われるといいますしね!」


そして一同は海斗のいる部屋に戻り色々話をしていた。すると、


「みなさん! 昼食のご用意ができましたから広間に来てください!」

「海斗くんは私が運ぶわ!」

「あ、ありがとうございます。真紅さん…」


それを見て翔と鈴架は揃ってヒソヒソと話をしだし、


「(やっぱりな!)」

「(うんうん! やっぱり脈ありよね!)」

「? どうしたの、二人とも…?」

「いやなんでも!」

「うん! 気にしないでお姉ちゃん!」

「そう…?」




――to be continued.


真紅が海斗に対して積極的になってきています。

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