014話 『重力の酉』
翔の目覚めです。
だが消えたと思われていた闇のもやがまた翔の体にまとわりついた。
「なっ!?」
『!?』
「ま…まだあきらめんぞ!」
「闇は完全に切り払ったはずなのになぜ!?」
「まさか…これ、か!」
翔は半分支配されている体に無理矢理力を入れて服を引きちぎった。
すると翔の胸には暗黒球がはまっていた。
「あれは、暗黒球!?」
「闇のもとはあれか! だからすぐに戻ったんだな!」
「そういう事だ…! 今度こそこいつを乗っ取ってやるぞ!」
「……、うるせぇよ!」
「ぬっ!?」
「もう二度と貴様なんかに俺の体を支配させてやるものか!」
すると翔は胸についている暗黒球を無理矢理剥がしだした。
「うおぉーーーっ!!」
「やめなさい! そんな事をしたら暗黒球を取り出す前に翔くんが死んでしまうわ!」
「そうだ! そいつは今度こそ俺達が祓い落とす! だからやめるんだ!」
「翔くん、やめてぇ!」
ガリウス、秦、真紅が叫ぶ。
「いややめねぇぜ! 俺はこんなところで死ぬわけにはいかねぇんだ! それにこれは今日カッとなって柄にもねぇ事をいって海斗って奴と真紅を傷つけちまった俺の罪滅ぼしだ!」
「翔くん…」
『(その心意気、気に入ったぜ!!)』
そんな時だった。翔の頭の中に直接勝気そうな声が響いてくる。
「なっ! 今度は誰だ!?」
突然頭の中に聞こえてきた男の声に翔は驚いた。
一同は何が起きているのか分からず、鈴架も「翔!?」と声を出す。
そんな時にいつも大事に懐の袋に入れている十二支の玉の一つ、紫の玉が光りだした。
「!? 紫の玉が!」
そして玉はまたもや自分の意志で翔の手にわたった。
「まさか翔も私達と同じ十二支の生まれ変わり!?」
「そうみたいね!」
そして翔の意思は精神世界へと誘い込まれる。
『今度は誰だ!? もう誰も俺を縛らせはしねぇぜ!』
『おー! 初対面でその威勢とはさすが俺の生まれ変わりだぜ! 安心しな! 俺はお前を束縛したりはしねぇよ! 俺の名は『鳥翔』だ!』
長身で翔と同じように髪をツンツンに逆立たせている男…鳥翔が現れた。
『生まれ変わり…? そうか、なら俺も名を名乗っとくぜ!』
『いや平気だ。翔だろ? 俺はお前の中にずっといたからなんでも知っている! いまお前がなにで苦労しているのか…とかもな…』
『力をかしてくれるか!?』
『任せろ! だが俺が授けるのは戦闘知識だけだ。後はお前の努力次第だ! 頼んだぜ!』
『上等! いつかあんたを凌駕してやるぜ!』
『いうねぇ~! お、そうだ。それと俺から一言忠告しとく事がある』
鳥翔は真剣な顔になった。
『…なんだ?』
『友情は大切にしろよ…。一度完全にくずれたら一生かけても治らないからな…』
『…あぁ…わかったぜ!』
そして翔は意識が戻ると、
「よしいくぜ! 重力の力よ…!」
そして翔は胸についている暗黒球を重力で包み込み、軽くした。
「これなら負担は軽いぜ! オラァッ!」
そして暗黒球は翔の胸からとれた。
「やったわ!」
「やりましたね!」
だがみんなが喜んでいる中、まだ翔は無言だった。
「…翔? どうしたの?」
鈴架が無言で黙っている翔に話しかける。
「…いや、こいつが俺を操り真紅にあんな事をしちまったじゃねぇか。でもよ、結局は俺の心の迷いからこんなものを埋め込まれちまった…許してくれ、みんな!」
「いいわよ。翔くんが無事なら…それで! それに私も翔くんの事を叩いちゃって謝るつもりだったからこれでおあいこよ!」
真紅はちょっと涙を浮かべながら笑顔でいいきった。
「…本当にすまねぇな! それともう一ついわなきゃいけねぇ事があるんだ!」
「ん…? なに?」
「それは…」
翔がなにかを言おうとしていたその時だった。
「ん? なんだてめぇ! なんで俺様の命令を無視して仲良く話をしてるんだ!?」
『!?』
「てめぇは、影使いの大影来豪!!」
「あいつが翔くんに暗黒球を埋め込んだのね!」
「あぁ! おい、来豪! もうてめぇのいいなりにはなんねぇぜ! こんなもの…!」
すると翔は空高く暗黒球を投げ、
「でろ! 双極幻滅星!」
翔が呼ぶと玉から両先端に刄がある槍をだし、
「帝釈斬!!」
暗黒球を真っ二つに切り裂いた。
「あー! 俺様の大事な暗黒球を! てめぇ…!」
「あぁ!? 文句があるならかかってこいよ! 自信があるなら…だけどな?」
そして翔の言葉に続いてみんなは身構えた。
「ちっ…! 覚えてやがれ!」
そして来豪は姿を消した。
「消えたみたいね…。“影使い”って事はきっと彼が影を操っている張本人だわ」
「それはそうと…もう疲れたぜ…」
「翔くん…疲れているところ悪いんだけどさっき私に何を言おうとしていたの…?」
「そ、それは今まで俺…真紅に何度も勝手な勝負を挑んでたろ? あれは別に昔の恨みとかそんなのは関係なくて…ただ、真紅に認めてほしかっただけなんだ…」
「認めてほしかった…?」
「あぁ…。正直にいうけどよ。小さい頃、俺は生意気でよく喧嘩になって負けてた事があったろ?
それでその時いつも真紅が俺の事助けにきてくれた…だから真紅よりも強くなってもう守ってもらわなくても大丈夫って事を伝えたかったんだ。
だから今まで変に突っ掛かって悪かった…」
「そのことはもういいわよ。でもね、翔くんはもう十分強いわよ」
「そうだぞ! 自分の力を信じろ」
「そうですよ」
「真紅…秦兄…それに海斗…あぁ! ありがとな!」
「でも正直に言うとかいって翔ってやっぱり素直じゃないよね!」
「…なにがいいたいんだ、鈴架?」
「だからぁ! 本当に正直にいうんなら『お前より強くなって、そして守ってやる!』くらい普通にいいなさいよ? 私はわかってるんだよ?」
「なっ…! なんでそのことをお前が…!?」
翔は言い当てられて狼狽えだした。
鈴架も鈴架で、
「…え?あたってたの…?」
「な! で…でまかせでいったのか!?」
「本当なの? 翔くん…?」
「…あ…う……てめぇ、鈴架!!」
「きゃあっ! 許して!」
「ゆるさねぇぞ!」
翔は鈴架を必死になって追いかけているのだった。
「くすくすっ…」
「ははは! お前がそんな事を考えていたなんてな! 見直したぞ、翔!」
「ガリウスさんに秦兄まで…」
ガリウスはクスクスと笑みを浮かべて秦も翔の想いに見直していた。
そこに瑪瑙が、
『…あの…ところでご主人様? 私もそろそろ話に加わりたいのです!』
「あ…あぁ、すまなかったな」
「…あの、秦先輩? さっきは急で聞けなかったんですがその刀は…?」
鈴架と翔も実は聞きたがっていたらしく無言で頷いている。
「この子の名は“衝覇武神刀・影紫”だ。またの名を…」
ポンッ!という音とともに瑪瑙は刀から人型の姿になった。
「影紫瑪瑙です! よろしくお願いしますです! みなさん!」
「か…」
「か…?」
「かわいい!」
そして鈴架も瑪瑙を抱き締めていた。
「わぁっ!? またですか!」
「さすが姉妹ね…」
「私も!」
「わぁぅ……ご…ご主人様~…」
「あきらめてくれ…」
「そんなぁ~…」
「ところでよぉ~、秦兄?」
「なんだ?」
「これから瑪瑙の奴をどうするよ? いつまでも隠しきれるもんでもねぇだろ…?」
「そうだな…」
それで秦は考え込む。
そこに瑪瑙が気にしないでいいですよ?と言う。
「しかしなぁ…」
「この際、ばらしちまえばいいじゃん? きっと親父達の事だから普通に歓迎してくれるだろ?」
「そうだな。それでいいか? 瑪瑙?」
「はい、ご主人様がそれでいいなら私もいいです!」
瑪瑙が元気に答える。
「本当に瑪瑙ちゃんはいい子よね!」
「うん! 賢いしかわいいし~!」
「もう慣れるしかないですね…瑪瑙さん?」
「はいなのです…」
「あ…それと翔くん。さっき暗黒球をはぎ取った時にできた傷を治すわね…ヒール!」
ガリウスは呪文を唱えて翔の胸の傷を治した。
「おー! 助かるぜ! すごいな、ガリウスさんは!」
「いえ、それと…」
ガリウスは真紅達にも渡した何枚もの呪符とお守りを二人に渡し、効果を説明した。
「ありがたくもらっておきます」
「色々とありがとな、ガリウスさん」
そして皆はそろぞれ帰っていった。
「さて、帰るとするか。衛巳達も心配しているだろうからな」
「あぁ!」
「はいです!」
二人は家に帰ってさっそく瑪瑙の事と二人の力の事を説明した。
「はぁ~…瑪瑙ちゃんにも驚いたけどまさか秦と翔の二人がそのすごい人たちの生まれ変わりだなんてねー…」
「こっちだって今だに驚いてるんだぜ?」
「あぁ。それに真紅に鈴架。それに海斗くん…そして話によるとクリスさんもそうらしい」
「でも…だから瑪瑙ちゃんは秦兄さんにしか持てなかったんですね?」
「ふむ…瑪瑙殿、話は納得した。歓迎しますぞ!」
「ありがとうございますです!」
宗治の歓迎の言葉で瑪瑙も感謝の言葉を述べるのだった。
「いやいや…それよりこれから秦の事を頼みましたよ」
「はいです! 任せてくださいです!」
「…しかしなんでこんな時に限って父さんはこの場にいないのですかね?」
「まぁまたその内ひょいっと帰ってくるだろう…?」
「それでこれから瑪瑙ちゃんはどこで寝るんですか?」
「衛巳か静姉さんの部屋でいいのではないか…?」
「私はご主人様とは離れたくないです…」
秦が衛巳か静の部屋を紹介したが瑪瑙は駄々をこねてしまった。
「そうだな。話によれば変な奴らに狙われているというではないか! いつも一緒にいた方がいいぞ、秦?」
「それってつまり同じ部屋で寝るって事!?…あ、でも秦なら安心だね」
「秦兄さんはそんな事はしないですもんね!」
「おいおい…」
「そんな事…とはなんだ、一体…?」
翔はさすがに同情したが秦は秦でなんのことかわからず首をかしげていた。
「ね…?」
「秦兄~…」
「?」
「そ、それよりご主人様! これからは私がご主人様が寝ている時でも守りますから安心してくださいです!」
「あぁ。しかし瑪瑙? ご主人様はいささかくすぐったい…他に呼び方はないか?」
「そうですか…ではマスター? 主人? とかですか…?」
「でも瑪瑙ちゃんの性格だとどっちもあわない気がするのよね…」
「では名前で呼んでみたらどうかね?」
「そ…そうですか? ではし、秦様…」
「うっ…!」
秦はその瑪瑙の仕草にはさすがに照れてしまった。
「…どうしたのかな~? 秦~?」
「そうだせ、秦兄~!」
静と翔は面白いものを見つけたかのように笑みを浮かべる。
「な、なんでもない!…それでもいいぞ、瑪瑙…」
「はい、秦様!」
「…あぁ。(しかし普通のままの方がよかったのかもな…これでは衛巳はともかく父さん、静姉さん、翔にはからかわれてしまうな…)」
その夜、秦は自室で瑪瑙が眠っている隣で一人自分がいった事を後悔していたという…。
――to be continued.
鳥翔は熱血漢という設定です。




