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イニシエからの絆  作者: 炎の剣製
11/71

011話 『刀の呼び声』

今回秦の話で刀が出てきます。



そして場所はまた変わり、ちょうど真紅達が教会にいた頃の時間帯に、秦は家へと帰ってきた。


「ただいま」

「あ、秦兄さんお帰り!」


そこには静とは違いまだ幼さが残る顔立ちの少女が出迎えてくれていた。


「あぁ、“衛巳”。ただいま」



彼女は、『雲隠(くもがくれ)衛巳(えいみ)』。

生まれた月は6/30の牡牛座である。

髪は黒のストレートで前髪の両側をヘアピンで分けている。

雲隠家の静・秦・翔に続く一番下の次女で『聖梁学園』と共通校の『聖梁中学』に通う15歳の中学三年生の女の子だ。

性格はとても優しいが怒ると怖い。しかしどこか抜けているところがある…。

そしてかなりのお料理上手。他の兄弟三人はまったくのお料理ベタなので衛巳の存在は他界した母さんみたいに思われているらしい。



「ところで衛巳。翔の奴は…今どうしてるんだ?」

「…え? 翔兄さん?…う~ん…わからないよ」

「そうか…」

「あ、秦。帰ってたんだ。お帰り~」


秦が残念そうな顔をしているとそこに静がお風呂上がりでバスローブ姿でビールを飲みながら歩いてきた。


「ただいま…。ところで静姉さん、あんまりみだらな格好はしないほうがいいと思うぞ? それにまだ夜でもないのにビールなどを飲んで…」

「かたい事は言いっこなしよ! それより翔の奴なら昼頃に帰ってきた早々に裏山にいっちゃったよ~?」

「やっぱりか…」

「翔兄さん…また学校でなにかやったの?」

「いや、いつものとおり真紅に勝負をしかけていたんだが…」

「またぁ~? あいつも懲りないわねぇ…」

「それが真紅の奴にきつい平手打ちをもらってしまってな」

「うそっ!なにがあっても話でいつも解決しちゃうあの真面目な真紅ちゃんが翔にビンタを!?」

「翔兄さんは真紅先輩になにかひどいことを言ったんですか!?」


静と衛巳は普段の真紅を知っているだけに平手打ちをした事に大層驚いている。


「いや、真紅にはなにもいってないんだが…一緒にいた海斗くんという転校生にちょっと、な」

「どんな事を…?」

「“なんでてめえはそんな女の集団の中にいるんだ?”…“女々しいぜ!”…“それとも他にダチができなかったのか?”…などをな」

「そりゃ真紅ちゃんも怒るわ。あの子、自分の事ならいくらいわれても動じないけど、友達の事を悪くいわれるとすぐに怒っちゃうからね。

小さい頃も鈴架ちゃんの“あの話”の事で喧嘩になっちゃったんだものね…」


静は昔にあったある事を思い出していた。

あれはなかなかにひどかった、と…。


「あぁ…それで俺なりにいけない事とは思ったのだが少し調べてみたら彼はご家族がもう誰もいないらしい…」

「そ、そうなんですか!?」

「だから尚更真紅は翔の言葉が許せなかったのだろうな…」

「真紅ちゃんは本当に優しいものね…」

「まぁそういう訳で帰ってきたら反省させねばな!」

「そうね!」

「うん。お父さんに知られちゃったらまた喧嘩しちゃうかもしれないからね…」


二人の姉妹に納得してもらい秦は履いていた靴を脱ぐと、


「それでは俺は部屋に戻っている」


自室へと歩いて行った。


「ふぅ…」


秦は自室に入り腰を落ち着けて休んでいる時だった。


『(…さま…)』

「!?」


その時、どこからか小さい女の子のような声が聞こえて秦は驚いていた。


「またか…最近空耳にしてはよく聞こえてくるこの声…やはり“あれ”を手に入れてからだろうか?」


そして秦は部屋に飾ってある刀に目を向けた。

刀を見ながらしばらく秦は見つめる。


「………、やはり疲れているんだな…。しかし、あの刀はどうにも俺と無関係とは思えないな…そう、あれは一年前だったな」


秦はそれで一年と少し前の大掃除の事を思いだし回想する。



◆◇―――――――――◇◆



「蔵の掃除か…よしやるか!」


秦は大晦日の大掃除で色々な骨董品が収められている蔵を掃除していた。

はたきでホコリを何度も払い、だがそれでも起きてしまうホコリに咳き込みをしている時だった。


「げほっ! げほっ!…さすがにホコリがすごいな…ん? あれは…?」


秦が目にした先には一本の刀が置かれていた。それをつい気になって見てしまう秦。

そこに静と翔と衛巳、そして秦の四人の父親であり13代目雲隠流継承者の『雲隠(くもがくれ)宗治(そうじ)』が他の兄弟三人を連れてやってきた。


「秦…掃除は終わったのか…?」

「こっちはもう終わったぜ!」

「順調ですか? 秦兄さん?」

「あ…あぁ。後少しで終わると思うが…ついあそこに飾られている刀が気になってな…」


秦の指差した方向を見て飾ってある刀を見るや静は、


「あの刀か、あれって名前もわからないしなんなんだろうね? 父さん…?」

「うむ、実は俺もよくしらないんだ。ただ父上の話によればあの刀は代々この家の家宝の一つとして祭られていたのだが…。

持つのに力持ちが5、6人でやっとだったというので気味が悪いという理由で蔵にいってしまったらしい…」


宗治の言葉に翔はすぐに興味を持ち、


「まっさかぁ! どうせ嘘に決まっているぜ! よし、俺が試してきてやるよ!」

「せいぜい肩を壊さない程度にがんばれよ?」


そんな翔に宗治はそう声をかけた。


「そんな事ないって! んじゃいくぜ!……ん?」

「…どうしたの、翔?」

「い、いやそれが…本当に重すぎてびくともしねぇんだよ…!」

「翔、演技うまいわね~?」

「嘘はいけませんよ? 翔兄さん!」

「嘘だと思うんなら…二人とも一緒に手伝えよ!」


どうやらかなり本気らしく静はやれやれとため息をつき、


「もう…しょうがないなぁ。いくよ、衛巳」

「はい!」


それで三人で刀を持とうとする。


「そんじゃいくぞ? せーのっ!」

「ん~~~…なにこれ!? 本当にびくともしない…!」

「は、はい!」

「父さん、あの刀は一体…?」


三人がかりでも持てなかった刀に奇妙さを感じて秦が宗治に尋ねる。


「実は俺も若い頃に試してみた事があるんだが持つ事すらままならなかった…」

「そうだったのですか…」

「試しに秦も持ってみなさい! どのくらいの重さなのか実感できるぞ?」

「俺がですか?」


宗治にそう言われて秦は少し迷った後、


「わかりました…ではいきます」

「さすがの秦兄でも無理だろ? 親父でも持てなかったって言ってるしよ…」

「まぁ、持つくらいならなんとかできるだろう…?」


そして秦が刀を握ったその時だった。


『(…あっ…)』

「む? 今誰か喋ったか…?」

「誰も喋ってませんよ、秦兄さん?」

「そうか? 刀を握った瞬間に一瞬だが声がしたのだがな…?」

「!?」


それに宗治は驚きの表情をして、


「…秦、早くその刀を持ってみろ!」

「どうしたんですか、父さん?」

「いいから持ってみるんだ!」

「わかりました…」


宗治の珍しく鬼気迫る表情に秦は何かを思いながらも持ってみた。

すると「カシャッ!」と秦は音をさせてなんと三人がかりでも持てなかった刀を軽々と持ち上げてしまった。


「ん? なんだ、全然軽いじゃないか…?」

『!!』


持ってみせた秦に全員は驚愕する。

しかしその時また頭に響いてくるような声で、


『(私は……衝…覇…武神…刀……早…く真の、名を…)』


すると刀から謎の少女の声が秦にだけ響くように聞こえてきた。


「衝覇…武神刀?…真の名?」

「やはり…! 秦、お前はその刀に選ばれたんだな!」

「この“衝覇武神刀(しょうはぶしんとう)”にですか?」

「名前までわかるのか!? 秦兄!」

「いや、この刀が語り掛けてきてくれたんだがな…」

「すごいよ、秦!」

「秦兄さん、すごいです!」

「しかし鞘から刀が抜けない…」


秦は鞘から刀を引き抜こうとするがビクともしない。

そしてまた声が聞こえてきて、


『(早く…真の名を…)』

「真の…名?」

「…もしかしたらその刀の名前は衝覇武神刀だけではないのかもしれない…。真の名がわかればもしかしたらなにかが起こるかもしれんな…?」


宗治がまるでなにかを予見しているような事を言う始末だった。



◆◇―――――――――◇◆



そして刀はそれからは秦の部屋で預かる事になったのだが、秦は衝覇武神刀を持ってまた見つめて、


「お前は、俺に一体なにを伝えたいんだ…?」


秦がそう問いかける。すると、


『(早くここから離れてくださいです!)』

「!!」


その時、刀からまたしても少女の声が響いてきた。


「衝覇武神刀! お前なのか!?」

『(……)』


しかし、もう刀の声は聞こえてこなかった…。


「とりあえずこの場にいてはいけないんだな?」


そして秦は刀を持って家を飛び出していった。


「あ、秦兄さん! こんな時間に刀なんか持ってどうしたの!?」

「話は後でする! 夕飯までには帰るから後は頼むぞ!」

「後は頼むって…ちょっと秦兄さん!」


衛巳の声が後ろから聞こえてくるものの秦はなにかに駆られて家を飛び出していった。




――to be continued.


最初の方の転生前を読んでいれば刀の正体はわかると思います。

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